第5話 (性癖塗れの)男子高校生たちの日常
「隆司。俺には今年中に叶えたい目標がある」
「ほう全国出場か。エースの自覚があって殊勝なことだ」
「違う!! 妹に弁当を作ってもらう事だ! 作ってもらえるなら俺はテニスを捨てる!!」
「はいはい生成AIにお願いしましょうねー」
「人の心とかないんか!? 0と1の塊に『お兄ちゃん……ピーマン残したのね、バカ』とか言われて嬉しいか!?」
知るか。
弁当箱を凝視されながら夢を熱弁された昼休み。俺は部長職や
辟易(定期)していると俺達の机に男子高校生たちが集まる。
「兄川よぉ。その宣言は『姉推し』の俺に対する宣戦布告か?」
「姉妹の二次元で語るのがナンセンスよテニス部共。脚だ。太腿だ!」
「あぁ!? 二次元が一番だろうがぁ!! リアルなんてクソだ!!」
他の
大昔の公会議よろしく喧々諤々と性癖をぶつけ合う戦場の狭間で、ノーマルな俺に出来るのは溜息くらいだ。
「なあ誉。何故俺の周りには変態しか集まらないんだ?」
「類友という奴じゃないのか? 隆司も本能を呼び覚ませ。お前の癖はなんだ」
「生憎とクラスで一番ノーマルなのは俺だ」
ふっ、自らの性癖も抑えられない変態共め。
癖を公然と曝け出し、リアルな女子クラスメイトから生暖かい目を向けられるような
『はい、ママですよー』
……なんでエプロン姿の真理が浮かび上がる。
……なんで膝枕や後頭部をヨシヨシする姿を連想しちまう。
ママに甘えたい気持ちが湧きあがる。真理の抱擁に埋まりたい。
欲求が抑えきれない。
やっ、待て!! 違う!! これは別に性癖じゃない!
一緒に住んでるからって、一歳年下の幼馴染を母になってくれるかもしれなかった女性だなんて……!
「――隆司きゅんは分かりやすいなぁ。今良からぬことを考えてるだろ?」
「いぐっ!?」
ゾクっと寒気がした。誉が福笑いのような下種い笑顔で見つめてきやがる。他の性癖軍団もハイエナになって俺に群がり始めた。
「やめろ! こっちくんな!」
「さあ吐け! 楽になっちまえ!」
「くっ、証拠はあるのかっ!? 俺が
「さもなきゃ練習メニューを二倍にするぞ」
「まさかの力技解決」
まずい! 年下をママにしているなんてバレたら高校生活が終わる!!
だが変態共の隙間に希望の逃げ道が見えた。昨年度ミスコン優勝者の福路さんがいた。悪いが俺がノーマルであるという証明のため勝手に名前を借りるとしよう。
「ふ、
なにせ肩のあたりでさらりと揺れる漆黒に囲われ、芸術レベルにまで引き上げられた美貌。おまけに男子高校生には刺激が過ぎる膨らみ。昨年度、当時一年生にして百合籠高校のミスコン頂点に君臨した実績に似つかわしい『美』がそこにはあった。
「……」
誉も他男子も白けた顔で押し黙った。
「つまんねー……ミスコンで優勝するような奴を癖だって言ってもねぇ……」
「はい解散」
ムカつく!! なんかイラっとする!!
「分かるよ? けど福路さんと付き合えたら最高ってのは分かる。でも俺らはそういう次元の話してんじゃないんだよ。甘えてんじゃねえよっ!!」
えっ、学年一番の美少女が好みという宣言は甘えなのか。拗らせた性癖集団の思考は理解できない。
「でもこの前さぁ。俺、福路ちゃんのパンツ見えたんだけど」
「でかした。褒めて遣わす」
「言い値で情報を買おう。kwsk」
待て待て待て待て。このクラスメイト共、三次元はカスとか福路さん狙いはつまんないとか言ってなかったか? 掌還すの早すぎだろ。
だが俺も意図せずして秘密の会合に巻き込まれてしまった為、思いっきり共犯者である。
意外だな。
あの芸術作品みたいな艶やかに白い太股の果てには水色。くそ、妄想しちまう。
「パンツか……待てよ。羽原ちゃん妹パターンでパンツを覗いてしまったとして、兄としてどう切腹するか……」
誉はブレない。
「……ん?」
多分一生彼女が出来ないであろう性癖拗らせ軍団(俺除く)の他にも、純粋な悪い目線を福路さんに向けている一団がいる事に気付いた。一軍女子と呼ばれるようなクラスの中心人物たちだ。
女子の人間関係ってネチネチしてるからヤダな。福路さんも苦労しているんだなぁ。とはいえ俺は変態共やテニス部の相手で精一杯なので、精々ミスコン優勝美少女を助ける主人公が現れるようご多幸をお祈りするだけに留めた。
……まさか福路千穂がもう一人のママになるなんて、この時俺は知る由なんて無かった。
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