第5話 協定

 大介は憂うつだった。昨日、両親に留学の件を話したのだ。その前に、スマホで、ナオシと昴に話した。二人とも、弘毅からのメールで既に知っていた。

 ナオシは、手紙をくれよ、と言い、夏休みには遊びに行っていいか、と聞いた。少し、うらやましそうな響きさえあった。考えてみれば、フランスのサッカーは、ヨーロッパでも強豪のうちに数えられる。昴は、全く驚いたよ、と落ち着き払った声で言った後、おめでとうと祝福を述べ、国民の税金を使って、ミシュランの三ツ星めぐりとはいいご身分だな、とからかった。

 二人と話しているうちに、大介の不安は徐々に薄らいでいった。外国といっても、飛行機で数時間だ。駐在の日本人もいっぱいいるだろうし、パリジェンヌっていうくらいだから、かわいい女の子もいっぱいいるだろう。慣れれば楽しいかもしれない。それに、なんといっても、フランスは皇帝エスコフィエの国だ。こいつは案外、もうけものかもしれないぞ。

 大介はすっかり元気になり、キッチンで夕食の仕度をしている母のところへ行って、俺、留学するよ、と軽い調子で切り出した。母は冗談だと思ったらしい。「おやまあ、それは大変ね」と言ったきり、トントンと菜っ葉を切り続けた。

「ホントの話なんだよ。赤城が言ったんだ。俺が、今年の特別留学生に選ばれたって。明日、校長と赤城が話しに来るよ。時間を決めてくれって」

 いつの間にか、包丁の音が止まっている。

「お母さん?」

覗き込んだ顔は、仮面のように表情がなかった。うつろな目が宙を見ている。白いまな板の上に、赤い滴が滴っている。みるみるうちに広がっていく。

「お母さん!」

大介は恐慌をきたした。母の左手の人差し指から、どくどくと血が溢れてくる。大急ぎでありあわせのタオルをあてがい、強く押さえた。輪ゴムで人差し指の根元を縛り、止血しようとする。

母は何も言わず、人形のようにされるままになっている。

顔色は白く血の気がない。紫色になった唇から、ひゅうひゅうと息が洩れる。両手はひやりとするほど冷たく、悪寒でもするように絶えず細かく震えている。

大介は、母が何かの発作をおこしたのだと思った。大声を出して、二階にいる登和を呼んだ。登和が駆けおりてきた。一目見て、呆然と立ちすくむ。

「救急車!」

大介は叫んだ。

「早く電話しろ!」

登和が駆け出した時、母が声を出した。

「登和!」

悲鳴のような声だった。登和が立ち止まる。

「いいの。電話しないで。大丈夫だから」

母の目から、涙が溢れていた。ぽろぽろと頬を伝って流れ落ちる。血だらけの手で大介の肩を掴む。指が食い込んで痛いほどだった。おえつの声が洩れる。

「お母さん」

登和も泣き出した。

大介は馬鹿のように、その場に突っ立っていた。自分の気がおかしくなったのか。一体、何が起こったというのだろう。俺はただ、赤城の伝言を伝えただけじゃないか。

 大介はスマホで父を呼び出した。状況を手短に話して、急いで帰宅してくれるように頼んだ。父は裏返った声で、何度も聞き返した。それで、赤城先生は留学生だと言ったんだな? 特別留学生だと。まちがいないな?

うん、と答えると、電話の向こうに長い重い沈黙が垂れこめた。

「もしもし? お父さん?」

「ああ」

くぐもったような声が答えた。

「大丈夫?」

「ああ。すぐ帰る。お母さんを頼む」

 幸い、出血は間もなく止まった。帰ってきた父が、手当てをした。食事が済むと、大介と登和は早々に寝床に追いやられた。その晩、父と母は、遅くまでずっと話し合っているようだった。キッチンの明かりはいつまでも消えず、時折、母の泣く声が聞こえた。その声を聞きながら、大介は眠りにおちた。

 朝、父がこわばった顔で、先生方に午後三時においでいただきたい、と伝えるように、と言った。「仕事は?」と聞くと、お母さんの具合が悪いから休む、という返事だった。父の目も、赤く血走っていた。なぜ、こんな騒ぎになったのかわからない。登和には、お兄ちゃん、何したのよ、となじられた。知るもんか、と捨て台詞を吐いて、飛び出してきた。憂うつだった。


 梅雨入り直前の、べたついた空気の日だった。会社員も学生も、傘を小脇に携えて、黙々と急ぎ足に歩いていく。突然、後ろから名前を呼ばれた。振り返ると、一見、会社員風の男が立っていた。中肉中背。どこといって特徴の無い、平凡な顔立ちには見覚えがない。男はもう一度、「会田大介君ですね」と、念を押すように言った。

「そうですけど」

「わたしは、こういう者です」

男は、背広の内ポケットから名刺を取り出して、大介に渡した。

「クラモトエンジニアリング株式会社。営業部。顧客サービス課長。鳥飼啓市」

おきまりのアドレスと電話番号。メールアドレス。

だが、大介は、中央に刷り込まれた名前しか見ていなかった。鳥飼。

「鳥飼正吾の父です。昨日の夕方、拙宅をお訪ねいただきましたね?」

「どうして知って…」

大介は三階の揺れたカーテンを思い出した。やはり、見まちがいではなかった。

「一緒にいたのは誰です?」

「友達です」

「学校の?」

「はい」

「信用できますか?」

何を言ってるんだ、と大介は男の顔を眺めた。男は、真剣な顔をしている。

「失礼しました。事情があるのです。ちょっとお時間を頂きたい。説明します」

「でも、俺、学校が…」

「正吾のことをお話ししたいのです。去年、特別留学生に選ばれた、うちの正吾に何が起こったか。君はそれを聞きにいらしたのでしょう?」

大介は降参した。一時間くらい遅刻したって、どうということはない。このもやもやが解決できるなら、安いものだ。それに、一時間目は英語だ。

鳥飼は、学校とは反対の方向、私鉄の駅に向かって歩いていく。大介は、その後についていった。何人か、顔見知りの生徒とすれ違って、変な顔をされた。駅前の表通りに出たところでは、バスから降りてきたナオシと出くわした。

「どこ行くんだよ。遅刻するぞ」

呆れ顔のナオシに、大介は、ちょっと野暮用とだけ、答えた。

「赤城には、腹痛で遅れるって言っといてくれ」

鳥飼はずんずんと駅の階段を登っていく。大介はあわてて後を追った。

「どこまで行くんですか」

「話のできるところまで」

通勤ラッシュ時の、満員の上り電車の中では、それ以上の会話は不可能だった。

 最寄のターミナル駅で降りると、鳥飼は、駅に続いて迷路のように広がる地下街へ入っていった。両側の店はまだ、閉まっている。だが、ビジネス街への近道になっている地下通路は、出勤途中の会社員がひっきりなしに行き来している。スーツ姿の鳥飼は、すんなりとその中に溶け込んだ。見失わないように小走りに走っている時、大介のポケットでスマホが鳴った。弘毅だった。

「何やってんだよ。ナオシが、駅でお前に会ったって言ったら、赤城のやつ、真青になったぞ」

「腹痛だって言っとけって言ったのにな」

「お前、今、どこにいるの?」

いきなり、スマホがひったくられた。抗議する間もなく、鳥飼は大介のスマホを、そばにあった噴水へ投げ込んだ。

「連絡されては困る」

「何すんだよ!」

鳥飼はさっさと背を向けて歩き出した。

「こっち向けよ、畜生! 何のつもりだよ!」

大介はわめき散らした。昨日から溜め込んだもやもやが全部、怒りの奔流となって体中を駆け巡った。足を踏み鳴らし、こぶしを握ってわめいた。

「俺、もう行かねえからな。何様だと思ってんだ、クソ野郎! どいつもこいつも、馬鹿にしやがって! なんだよ! 俺が何したってんだよ!」

涙が出てきた。通り過ぎるサラリーマンや学生が、面白そうに眺めていく。ますます腹が立った。悔しくて、情けなかった。

鳥飼はゆっくりと戻ってくると、大介の腕を取った。「行こう」静かな声だった。

「いやだ」

「君の命がかかってる」

「馬鹿いうな」

「馬鹿かどうか、自分で判断しろ」

鳥飼の声が低くなった。

「君はここまでついてきた。自分でも、何か変だと思っているんだろう? その通りだ。特別留学生に関する事項は、極秘になっている。わたしは禁を犯して、去年、うちの正吾に何が起きたか、事実を話そうと言ってるんだ」

大介はこぶしで涙をぬぐった。

「じゃあ、さっさと話せ」

「ここでは話せない。安全な所まで移動する」

 大介は周りを見回した。周りの通勤者は、もう、二人に関心を持たない。急ぎ足で通り過ぎていく。

「安全な所ってどこだよ」

「こっちだ」

 地下街から地上に出ると、そこにシルバーの車が駐車していた。大介が乗るのをためらうと、鳥飼は、早く、と促した。「奉仕局はもう、動き出しているだろう。ぐずぐずしている時間はない」

 大介が従ったのは、鳥飼の声にある切迫感と、警戒するようにあたりを見回す視線のせいだったろう。車が市街地を抜けて高速に乗ってからようやく、鳥飼は話し始めた。

「サンクスギビング協定という言葉を聞いたことがあるか?」

「ない」

「今から八十年ほど前、国連加盟国と、あるグループの間に結ばれた協定だ。君は、食物連鎖を学校で習ったか?」

「しょくもつれんさ?」

「土中の枯葉をミミズが食べて、そのミミズをモグラが食べて、そのモグラを猫が食べて、その猫をコヨーテが食べて、コヨーテがフンをしてそれが肥料になり、そこから木が育ち、木の葉が枯れて土に落ち、それをまたミミズが食べる。食物の循環だ」

「理科で習ったような気がする」

「よし。人間は有史以来ずっと、この食物連鎖の頂点にいると考えられてきた。我々は生物を食べるが、我々が食べられることはない。死亡して、バクテリアによる分解を受けるまでは、という意味だが。つまり、人間に天敵はいないと思われていた」

大介は、思いがけない方向に進んでいく話に戸惑っていた。同時に、激しく興味をそそられた。

「いないんだろ?」

「いたんだ。そのグループ…我々には、その正体はわからない。ある者は、人間のより進化した者だと言うし、別の学者は、他世界からの移住者だという。古代文明社会の生き残りだという説もある。とにかく、彼らは、自分たちは人間ではないと主張している。ホモ・サピエンスとは違った種だというんだ。このグループ、この種こそが、地球の食物連鎖のトップに立っている。彼らは人間を食べる」

「嘘だ」

「彼らはずっと、密かに人間を狩って食料として生きてきた。世界中で、毎年、たくさんの子供が、遊びに出たまま帰ってこなかった。家出したまま、消息の知れない若者がたくさんいた。そのいくらかは、単に事故にあっただけだったろう。川にはまったか、崖から足をすべらせて落ちたか。人にだまされ、奴隷に売られた者もいたろう。今までの暮らしに見切りをつけ、よその土地で新しい名前を得て生活し、そこで死んでいった者もいたかもしれない。だが、失われた子供たち、若者たちの多くは、実は、彼らの獲物になったのだ。狩られて、食われたのだ」

大介は笑いたくなった。

「そんな馬鹿な話、国連が信じるはずないよ」

「少し、黙って聞かないか。いちいち腰を折られては、話が進まない」

不服だったが、大介は黙った。馬鹿話だ、でも、ここまで来たら、聞いてやろうじゃないか。

「十九世紀の終わりに、アメリカに、並外れたヒーリング―癒しの力―を駆使する宗教集団が現れた。祈りだけで難病を治すという触れ込みで、この集団は徐々に信者を増やしていった。あの国は、昔からフェイス・ヒーラーが好きだ。クリスチャン・サイエンスの伝統もある。マスメディアが飛びつき、奇跡としてもてはやした。すると、今度はインチキだ、詐欺だと噂がたち、科学者が介入することになった。著名な医師や生理学者、物理学者を動員し、このグループの化けの皮をはがそうと、ある実験が行われた。

 ここに、ひとりの末期ガンの患者がいる。余命三ヶ月と診断されている。グループは、祈りの力で、この患者を癒してみせる、と言った。グループのメンバーは彼の病室を訪れ、彼と共に祈りを捧げる。大丈夫、治りますよ、と言って帰っていく。その言葉の通り、三日後、彼のガンはきれいに消えていた。完全な健康体に戻っていた」

「インチキだろ。医者が買収されたか、元々ガンじゃなかったか」

「そう疑う人は多かった。すると、このグループはまた、別な挑戦を受け入れた。

ある有力な上院議員の娘が、スキーの事故で頚椎を損傷し、首から下が完全に麻痺した。上院議員は、最後の希望として、このグループのヒーリング・パワーに頼った。彼らの答えは同じだ。三日後に彼女は直るでしょう、と言った。その言葉通り、三日後、彼女は突然、ベッドから立ち上がって、走って見せた。上院議員がその後、彼らの強力な後ろ盾になったことは当然だろう。こうやって、彼らは徐々に、アメリカ政府のなかにもシンパを増やしていった。そこに、第一次世界大戦が起きた。多くの人が亡くなり、けがをし、障害を持つようになった。人々は生と死について考え、精神世界、心霊主義がにわかに脚光を浴びるようになった。この宗教グループにとっては、願ってもない。彼らは自分たちの代理人として、ニューヨークの有力な法律事務所を雇った。弁護士を通して、国際連盟の初代事務総長、エリック・ドラモンドにコンタクトして、各国代表の前で話をする許可を得ようとした」

「国連がそんなの許可するはずないよ」

「国際連合ではない。一九二〇年、パリ講和会議の後に、アメリカのウッドロー・ウイルソン大統領が提唱して結成された国際連盟だ。結果から言うと、許可は下りなかった。アメリカ自身が、モンロー主義を堅持して、連盟に参加しなかったのが痛かったかもしれない。とにかく、この時には、彼らの計画通りには運ばなかった。彼らは、辛抱強く時を待った。次に姿を現したのは、一九四六年、第二次大戦の後、国際連合が結成された時だ。この頃には、アメリカばかりではなく、他の加盟国への浸透も進んでいた。グループの代表は、国連の各国代表の前で話をする許可を得た。ことここに至って、彼らは初めて偽装を捨てた。自分たちは宗教集団ではなく、人類とは全く別の生物だと明かした。自分たちのヒーリング・パワーは、人類の科学や医学、宗教とはなんの関係もなく、彼らの種に固有の能力である、と。そして、ヨーロッパのある国連加盟国の元首の息子を会場に呼ぶように言った。この青年は、大戦中に砲弾で右腕を負傷、切断していた。各国の代表の見守る前で、この青年の右腕が―失われたはずの右腕が再生した。青年は半袖のシャツを着ていた。切り株のように丸くなっていたひじから先が、ゆっくり、ゆっくり伸び始めた。朝顔のつるが伸びるさまを、倍速で撮影したようだったと、その場にいた政府代表の一人が書き残している。青年が茫然と見下ろすうちに、腕は伸び、手首ができ、手ができ、五本の指がそこから生えた。まさに、奇跡だった」

「何かのトリックじゃ…」

「あり得なかった。腕の再生は、全員の見ている前で、なんの遮蔽もなく、明るい光の下で行なわれた。その後の厳重な医学チェックでも、それは、彼の腕だった。生まれてから、一度も切断されたことなどないように見えた。いや、そんなチェックなどそもそも、必要なかった。その青年は、再生したばかりの右手を使って、その場にいた各国政府代表と、握手を交わしたそうだ」

「すり替えとか…その青年には、双子の兄弟がいたとか…」

鳥飼は首を振った。

「各国代表は、ついに神が降臨した、と思ったそうだ。だが、グループの代表は、自分たちは神ではない、ただ、別種の生物に過ぎない、と言った。神ではないから、生きるために食べる必要がある。彼らの食料のほとんどは、人間と同じだ。穀物、野菜、魚、乳製品、果物を食う。一点だけが違っていた。彼らは、人間の肉を常食としていた」

 大介は、ふいに背筋を冷たい指で撫でられたような気がした。嘘だ、と言おうとしたが、言葉が出てこない。

 鳥飼は言葉を切って、大介の横顔を探るように見ていた。大介が黙っていると、再び前を向いて、話を続けた。

「彼らはこう言った。今まで、必要な肉はそのつど、狩りをして手に入れてきた。しかし、人間社会が発展するにつれ、この方法は不経済かつ不都合になってきた。かっては、一家族の子供の数が多く、ひとりぐらい行方不明になっても、さしたる騒ぎにはならなかった。子供の数の減った今は、ひとりでもいなくなると大騒ぎになり、警察が出動して探し回る。社会組織や法も整備されてきた。我々としても、狩猟の形跡を慎重に隠さねばならなくなった。これではお互い、時間と労力の無駄ではあるまいか。

だから、こうしよう。人間は、年に一回、一定数の子供を、我々に食料として提供する。その代償として、我々はそれと同じ数の人間に癒しの力を提供しよう。一対一の取引だ。ひとりの命に対して、ひとりの癒し。公正な取引だと思うが、いかがだろう。

「全世界で、どんな騒ぎがおこったか、今では想像もできない。大多数の人間は、反対した。一人の人間が、たとえ死から救われる、病気の苦痛から解放されるとしても、そのために無垢の一人の命を犠牲にしていいか。仏教国は苦と涅槃の思想を説き、キリスト教国は、一匹の羊のために多数をおいても荒野へ出て行く羊飼いの話をバイブルからひいた。イスラム国は、人間の生死を決するものは、アラーのみと主張した。すると、彼らは次の手を打ってきた。こう言ったんだ。自分たちとしても、病いに苦しむ人間をできるだけ多く癒してやりたいと思う。だが、癒しは簡単ではない。自分たちにも負担がかかるから、無制限とはいかない。だから、早く協定を締結してくれた国家から順番に癒しを行なおう。締結が遅くなった国には気の毒だが…わかるだろう?」

鳥飼の顔は、絶望にゆがんだ。

「人々は考え始めた。全ての人間の命は平等だ、だが、果たして本当にそうか? 社会的に有用な人材というのはいるじゃないか? その人間が救われることで、さらに大勢の人間が救われるなら? 多少の犠牲は許されるのではないか? 彼らが人間を食べるというなら、その代償を受け取る方がよくはないか? 貴重な肉をただでやることはない。ぐずぐずしていたら、チャンスを逸するぞ。バスに乗り遅れるな…。ああ、彼らは一流の心理学者だったよ。各国は、先を争って協定を結んだ。それが、サンクスギビング協定だ。協定にもとづいて、各国は国内法を整備した。この国では、十四歳から十五歳の子供が選ばれる。国際協定実行奉仕委員会は、選ばれた子供に、特別留学生として外国へ行くのだと信じさせ、留学生研修センターに隔離する。こうして、サンクスギビングの前に、子供たちは収穫され、彼らの食糧となる。現在のところ、選ばれる子供の比率は、五百人に一人、といったところだ。一中学校あたり一・五人に相当する。泉中学では、去年は、うちの正吾が選ばれた。今年は…」

「俺なんだね」

答えた声は震え、しわがれて、とうてい自分の声とは思えなかった。

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