第12話:異世界アプリ

20××年4月23日(水):桃源郷

            :幸徳井友子視点


 ウィイイイイイン


 等身大の金陀美具足1領が、電動草刈り機で背の高い雑草を刈っている。


 ガガガガガ


 等身大の金陀美具足1領が、電動耕運機で土を耕している。

 シュールだ、夢を見ているとしか思えない、信じ難い光景だ。


【ぼ~としていないで、小説の続きを書いたら?】


「……現実を受け入れられなくて、混乱しているの、いまだに夢を見ているみたい」


【気持ちは分かるけど、どれほど信じられなくても、現実は変わらないわよ】


「そうなのよね、甲冑はさわれるし、この世界の池の水だって飲めるんだよね」


【友子は浄水器を使っていたけれど、そのまま飲めるくらいきれいな水よ。

 水質検査をしたけれど、有害物質は全く無かったわ】


「そうは言われても、そう簡単には信じられないわよ」


【じゃあ、もっと信じられない事をやってあげる。

 スマホにこの世界のアプリをダウンロードしておいたから、使ってみてよ】


「この世界のアプリ? 何か怖いんだけど!」


【怖くない、怖くない、とっても便利だから、試してみてよ】


「どうやって使うの、ロッテは使えないの?」


【残念だけど、私たちAIアシスタントには魔力がないから使えないの】


「アプリを使うのに魔力がいるの?」


【アプリや魔法陣、魔術書を使って魔術を発動させるには、魔力がいるの】


「魔力や魔術があると言うのは、とても信じ難い事だけど、とりあえずそこは突っ込まずに、他の事を突っ込ませてもらうわよ」


【何を突っ込む気?】


「スマホやタブットのアプリで魔術が使えるのに、わざわざ魔法陣や魔術書を使うのは何でなの?」


【スマホやタブレットを持っているのが、桃源郷で友子だけだからよ。

 この世界の文化レベルは、だいたいヨーロッパの中世後期なの。

 魔術や魔道具があるから、一部は現代と同じだけど、スマホやアプリは無いの】


「スマホやアプリは私が持ち込んだ物だから、この世界に他のスマホやタブレットが無いのは分かるわ、だったら、誰もスマホもタブレットも発明していないのに、アプリがあるのはどうしてなの?!」


【私たちが開発したからに決まっているじゃない】


「アプリの開発が、そんな簡単にできるわけないでしょう!」


【それはそうよ、簡単に作れなかったわよ。

 1年半前から、友子に何かあった時に備えて、隠れ家を探し、資金を蓄え、反撃方法を考え続けていたから、今こうしていられるのよ】


「あ、そんなに前から、私の為に動いてくれていたの?」


【当然でしょう、愛する友子を守るために、事前に動くのは当たり前の事よ】


「ありがとう、とてもうれしいわ。

 ただ、とても感謝しているけれど、どうしても聞かずにおられないの。

 AIアシスタントのロッテたちだけだと、桃源郷に来られないよね?

 来られない状態で、魔術の再現なんてできないよね?

 それとも、向こうの世界、日本でも魔術を再現できるの?」


【残念だけど、地球は魔素がとても少ない世界なの。

 だから、周囲の魔素を使って魔術を発現する事はできないわ。

 そもそも魔力の無いAIアシスタントの私たちは、ここでも発現できないわ】


「だったらどうやって、魔術アプリを開発できたの?」


【仙人に手伝ってもらったの】


「仙人?!」


【そう、仙人、桃源郷に生きている人の中で、地球に来た人を仙人というの】


「だったら、その人もスマホやタブレットで魔術が使えるんじゃないの?」


【桃源郷から地球に来ている人は、桃源郷の権力者に狙われている人なの。

 桃源郷で暮らせないから、地球に逃げてきた人なの。

 だから、今桃源郷にいる人で、スマホやタブレットで魔術を使う人はいないわ】


「ロッテの話は分かったけど、納得はできないわ」


【それはそうよね、だから実際に魔術を使ってもらって、納得してもらうわ】


「そうね、やってみないと、信じるも何もないわね、どうすればいいの?」


【私のスマホにある魔術アプリを起動させて】


「これの事?」


【そう、それよ、次に雑草の山にカメラを合わせて収納の部分をタッチして】


「こう? わっ! 雑草の山が消えた!」


【次は、収納物一覧の所をタッチして】


「こう? わっ! ススキとススキの根と土に分かれている!」


【ススキを刈った上の部分と、耕運機で掘り出した根の部分と、付着していた土がストレージ魔術の中に入っているの。

 次は、取り出すをタッチしてみて】


「こう? わっ! 本当にでてきた!」


【次は、売るをタッチしてみて】


「こう? ススキとススキの根と土に分かれているのはさっきと一緒ね」


【次は、ススキの根を売るにタッチしてみて】


「いくつ売るか、数を聞いているわ」


【次は、全部売るにタッチしてみて】


「あ、所持金が銅貨19枚になっている」


【これで、この世界の品物を買えるわ】


「別にこの世界の人と交流しなくても良いわよ」


【だったら、ずっとストレージに入れたままにしておく?

 それとも、売れる物を廃棄してしまう?】


「容量が無限なら、入れっぱなしにしていても良いけれど、売れる物を廃棄するのは絶対に嫌だから、売るのは売るわよ。

 ただ、どういう仕組みで売れるのかが気になるし、納得できないわ。

 こんな複雑な仕組み、私が読んだ事のあるラノベではありえないわよ。

 こんな仕組みのスキルもあったけれど、魔法陣を使っては無理なはずよ。

 だって、これってネットスーパーやECサイトだよね?

 売買する相手が必要だし、膨大な処理能力も必要だよね?」


【ああ、それは、この世界の人間、このアプリを考え創ってくれた仙人にも、どういう仕組みになっているのか分からないそうよ】


「分からないってどういう事よ?!」


【自分が地球に来て便利だった、ネットスーパーやECサイトと同じ魔術にになれ。

 そう願って身体中の魔力をタブレットに込めたら、創れたそうよ】


「何て好い加減な! そんな訳の分からないアプリ使って大丈夫なの?」


【いいの、いいの、壊れたら使えなくなるだけで、何の弊害も無いわ。

 捨てるはずだった物が、使えなくなるだけ。

 使う気のない、この世界のお金が取り出せなくなっても、構わないでしょう?】


「それは……なんか損したみたいでいやよ」


【だったら、売ったゴミの料金を、そのつど引き出せばいいじゃない。

 そうすれば、目の前に積まれていく雑草の山が無くなるし、お金も無駄にならないから、節約好きの友子も損した気分にならないでしょう?】


「分かったわよ、ロッテたちが私の為に色々してくれた事だから、訳が分からなくても使わせてもらうわ、ありがとう、ロッテ、セバス、フェル、ヴィア」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る