札幌市エリアD異常活動事件
壊れたガラスペン
第1話 StCST:寿主任研究員の記録
雪が舞うここは北海道札幌市。北海道庁近くに設置された時空間因果律研究開発機構北海道札幌支局内の主任室内にて、私はコーヒーカップを片手にゆったりとしていた。そうゆったりとしていたのだ。
「
部下の一人がそう入ってくるまでは。
時空間因果律研究開発機構、通称
そして、日本空間維持総合保安機構、通称
「資料を持ってきてくれ」
部下にそう命じる。
同じ超事調整委員会に所管される特殊法人であり、仲も悪くない。はずだ、一応。連絡をよこしたのもそういうことだろう。
あーあ、仕事がくる。
別に仕事をしていなかったわけではない。まあ、北海道札幌支局の仕事が少ないのは事実なのだが。
「寿主任、こちらです」
コーヒーを一口分、口に含む。コーヒーの香りが口腔内から鼻腔を通る。ああ、いい香りだ。
部下の持ってきた資料に目を落とす。
*****
——日本空間維持総合保安機構——
理事長 ██ ██ 印
〜記〜
本特殊法人は北海道札幌市内において、空間維持総合保安法違反が確認されたため調査または執行を行うことを通告します。
〜詳細〜
本特殊法人が観測した情報によると北海道札幌市エリアDにて空間維持総合保安法違反に該当する事案が発生したと思われます。
そのため、該当地域にて日本空間維持総合保安機構と該当地区を保有する異研グループの異研警備保障が現場にて展開する予定です。
該当地区を管理する日本超常組織問題対策組織にはすでにこの文書が届いている時点で通告済みの予定です。
この文書の意味は時空間因果律研究開発機構にも該当地区調査の支援を要請するためでもあります。至急準備をお願いいたします。
*****
「エリアDか、
思わずそう呟く。エリアD。異常法学研究所と日本が行っていた空間開発事業。その第4の地として選ばれたのが北海道だった。札幌市にはその出入り口の一つを設けられたのだ。
異常法学研究所は北海道に拠点を持つ超常研究所。その実験成果は異研グループとして企業化され、現在も機能している。
とりあえず、
先程まで静かだった支局内が慌ただしくなってきた。このまま雪が溶けてしまえばいいのに、そう窓から外を眺めた。
しかし、異研警備保障を最初から利用するとは、いったいどういう意味があるのか。
コーヒーを飲みながらゆっくりと準備が整うのを待っていた。
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