第5話 ヒロくん

"ヨッシー"と初めて寝た日のことは今でも鮮明に覚えている。

2LDKで最上階の5階。

寝室は大きなダブルベットで、ゴルフクラブやソファが置いてあった。

目を覚まして、カーテンを少し開けるとやけに空が澄んでたのを今でも覚えてる。

12月だったから、窓から伝わる外気の冷たさも。


二人で会話してる中で、あたしは"ヒロくん"と呼ぶことにした。

好きに呼んでいいよって言ってくれたから。


背は165cmくらいでいわゆる中肉中背的な体型。

でも、温厚で優しい。


話を聞くと、ヒロくんは元々大手のIT会社役員で、最近やめて独立したと。


(あ〜だからこんな立派なとこ住んでんだな、、、)なんて思ってた。


あたしは、東京に来て物知りなヒロくんに、会うたび会うたび惹かれて行った。


初めて行った渋谷のバーにも通い詰めた。そうすればヒロくんのこともっと知れるかと思ったから。


気づいたら、二人で旅行に行く仲になっていた。


-----でも、そんなのは束の間。ヒロくんからLINEのレスが遅くなったり、会えないことが増えていった。


出会って3ヶ月目の頃。

週末、渋谷のバーに行ったけど、やっぱりヒロくんには会えなかった。


俗にいう"都合のいい女"という類に入ってたかもしれない。


それか渋谷のバーを通して共通の知り合いができたから、あたしがどんどん渋谷に染まっていったから、何がきっかけかはわからない。


今思えば、ヒロくんが求めていたのは"上京して何も分からない20才"という女性像が好きだっただけかもしれない。


それが、あまりにもあたしが一目惚れなのか、追いかけすぎたから、二人の関係値が

よくわからないものになったのかもしれない

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