第1章:アイエエエ!? 魔法少女!? 魔法少女ナンデ!?……って、お前、絶対に違うだろッ!?

悪夢!! 熊の被害悪化、ここに極まれり!! 女性3名の惨殺死体発見!!

『あ……あ……あ……あ……あの、く……く……く……』

「おい、どうした? 何が起きてる? まずは、お前と山口に差し迫った危険は有るのか?」

 熊退治の為にB県に派遣された自衛隊のレンジャー部隊の現場指揮官である古川リョウは、偵察中の部下の島田からの要領を得ない無線通話に対して、そう答えた。

『あ……大丈夫です……その……』

「熊と遭遇したのか?」

『遭遇と言いますか、その……』

 この集落の近辺では、ほんの数日前、30分ほどの間に、計10頭以上の熊が目撃されるという「ツキノワグマは通常は単独行動。母子連れでも4頭以上は、ほぼ無い」という今までの常識では考えられない事態が起きていた。

 とは言え、このB県では「2〜3年前から、その『今までの常識では考えられない事態』が、たまにでは有るが起きている」という無茶苦茶な状態だったのだが……「人里に下りてくる熊の頭数が増えてるせいで、偶然、2〜3組の母子連れが同時に出没した」という解釈が一般的だった。と言うか、それ以外の解釈は有り得なかった。

 それに加えて、「10頭以上の熊が30分ほどの間に目撃される」という、これまでの類似ケースの記録をわずかながら更新した、この集落の近くでは、よりにもよって「あんな可愛い熊を殺すなんて‼」系の団体のものと見られる不審な県外ナンバーのトラックも目撃されている。

 その不審者の情報を聞いた時の古川の感想は「同じ本州でも、ほぼ南の端から、わざわざ東北までやって来るとは、ご苦労な事だ」だったが……。

「状況を正確に報告しろ‼ 判ってるのか? 相手は熊だぞ。ちょっとした情報の誤伝達が死につながりかねな……」

『殺されてます……。惨殺です。惨殺としか言いようが……はわわわ……』

「え? 地元住民が熊に殺されてたのか?」

『違います。

「はあ? だから、何を言ってる?」

『ああああ……す……すいません、取り乱してて……重要な情報を……』

「だから、これ以上、どんなタワ言を言うつもりだ?」

『あ……えっと……

「はっ?」

『ちょっと待って下さい……深呼吸の時間を……はあはあはあ……

「おい、まさか、お前、マズいクスリでもキメてるのか⁉」

『あ……あと……重要な事をもう1つ』

「だから、次は何だ?」

。殺されたのは、ついさっきです』

「わかった、わかった、一旦、俺達と合流しろ」

「何なんですかね、一体?」

 副官の福島も「意味が判らん」と言った感じの表情で、そう訊いてきた。

「まぁ、みんな疲れてる上に、ストレスも溜ってるからな……。とは言え、あの馬鹿には、すぐに休暇を取らせないと、このままじゃ俺達の身まで危なくなりそうだな」

「あ……あの……あの馬鹿のバディの山口は……その……ぶ……無事……えっと……何て言いますか?」

「ああ、確かに一番心配すべきは、それだな。ちょっと待て……山口、聞こえてるなら、すぐに応答しろ」

 古川が、そう言った次の瞬間……どう考えても悲鳴にしか聞こえない動物の鳴声が響き渡った。

 そして……明かに怯えた様子の子熊が10頭近く……古川達の居る里山と人里の境界付近目掛けて、とんでもない勢いで走ってきた。

 その子熊達は……ある余りに異常な代物に追われていた。

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