第30話
女子たちは約束どおりちゃんと来てくれた。
許可証の審査はそれほど厳しいものではないらしい。
慎一の顔色も戻っていたので大学からみんなで店へと移動する。
夏至も近づいているためか、雨は降っているものの午後七時前でも明るい。
女子たちは初めて来る場所なのか、物珍しそうに街を見回していた。
昨日電話に出たと思われる男性店員に個室を案内され、男六人、女六人が向かい合う形で座る。
店内の内装に、女子たちはきゃあきゃあとはしゃいでいる。春子だけがなんとなく落ち着かない様子だ。飲み物のメニューを貰い、高史は言った。
「ドリンクは飲み放題だよ。みんな、飲み物はなにがい……」
黙った。真紀の時と同じ轍を踏むのか。どうも、彼女たちが飲食できないことを忘れそうになる。
梢が「メニューを見せて」と言うので逆さにして差し出すと、メニューには触れない形で眺めだす。興味を持ったのか両隣にいた美野里と春子も覗き込んでいた。
「メロンソーダがある。超ウケる」
梢が笑った。
「子供の頃よく飲んだ。あ、じゃあ私、メロンソーダがいいかな」
春子が懐かしんでいるような、どこか遠くを見るような瞳で言う。
「私も」
梢と美野里も手をあげる。柚はオレンジジュースがいいと言った。綾乃と里美はウーロン茶だ。
「あの、みんな飲食は平気なの」
高史は恐る恐る訊ねる。
「雰囲気を楽しみたいだけ。私たちのぶんも頼んで。お願い」
梢は手をあわせる。メンバーはお酒を避けることにして全員アイスティーを頼む。酔った勢いでなにを口走りどんな態度をとってしまうかわからないためだ。
飲み物はすぐに運ばれてきた。しかし、店員は女子たちの頼んだ飲み物をどこに置いていいのか迷っている様子が見て取れる。
「あ、すみません。僕たちがやるので適当に置いて下さい」
店員は言われたとおり、空いているテーブルに飲み物を置いた。店員が去ってから、女子たちの前に置く。
「では、みんなとの出会いを祝して。乾杯!」
慎一がグラスを持ち上げ言った。女子たちも「乾杯」と言う。
高史の前にはいつの間にか柚がいた。女子たちはなにを思ったのか勝手に席替えをしていたのだ。
慎一が女子にその場から動かないようにと言った。誰とでも均等に話せるように、三十分単位で男子が席替えをするルールを設ける。
さて。柚を見つめる。男勝りなタイプと言うだけで気が引けてしまう。
しかしこれは模擬演習でもあるのだ。こういう子が案外、気の利くいい子だったりする。誠実に、誠実に。姿勢を正して、高史は訊ねる。
「柚ちゃんはスポーツでもやっているの」
「高校ではテニス部だったんだけど、他にも女子サッカーに、水泳、バトミントンっていくつも習い事をしていたよ。部活以外は、軽く空いている日にやっていたんだ」
「体を動かすことが好きなんだ」
「そうそう。なんだかとにかく体を動かしていないと気が済まない感じ」
「動作もきびきびしているよね」
「うん。体を動かし過ぎて、真夏に熱中症で死んだんだ」
「そ、そうなんだ」
どう返せばいいのだ。一気に会話が進まなくなる。
「黒沢さんやここにいる女性たちとはどんな知り合いなの」
「天国でバトミントン大会を主催したら、そこで友達に。梢と美野里は生前からの知り合いだったみたいだけど、深いところまではわからない」
二人をちらりと見て、柚は言った。二人一緒に亡くなったということだろうか。深く立ち入るのは禁物だ。
中年の男性店員と若い女性店員の二名が、入れ替わりで料理を運んでくる。大皿に盛られた、みんなで小分けして食べる料理が次々にテーブルの上に置かれる。
十二名分だから量もかなりのものだ。
柚とは大していい話ができず三十分が経ってしまい、内心で反省をする。これでは先輩達の二の舞になってしまうではないか。
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