第27話
月曜に五限を受けたあとじめじめとしている梅雨の空気の中、部室へ行く。
暑いのに体の芯が冷えているような気がする。どこか寒い。
やっぱり具合、悪いんだろうか。
扉の向こうで嬌声と騒ぎ声が聞こえる。
不思議に思って開けてみると、信じられない光景が目に入った。
女子が複数いる。しかも若い。先に来ていた慎一と康宏と倫がハーレムを作り上げている。凛子がちゃんと口添えしてくれたのだろう。
「おい、俺も混ぜろ」
「混ざれ混ざれ。みんな真紀ちゃんの天国でのお友達だって」
慎一はこの上なく機嫌がよさそうに笑顔で言った。少しして誠と翔もやって来て、高史の隣で目を輝かせている。
女子はみんな、椅子を並べて座っていた。男子は基本、立っている。女子の数は全部で六人。なんというビンゴな数だと高史は感激する。
「真紀が楽しそうで。話を聞いてみたら、この大学の人が親切に悩みを聞いて海に連れていってくれたっていうじゃない。私は梢って言います。フルネームは色々あるので省略」
黒髪を団子にしショールを肩にかけている女子が立ちあがり、お辞儀をする。事件や事故が絡んでいるのかもしれないので、突きとめられたくない場合もあるのだろう。
高史はどもりながら軽く挨拶をした。俺もと言わんばかりに誠と翔も自己紹介をする。
梢の隣に座っていた女子が手をあげ言った。
「私、綾乃です」
色気を感じる。髪は天然なのか癖がある。色白で二重瞼だ。
「はい、私は春子です」
綾乃の隣で手をあげた女子もまた、美女だ。梢や綾乃より体の線は細く、スタイルが抜群である。モデル体型というのだろうか。高史の好みだった。
「私は
春子の隣はショートカットだ。ショートはショートでなかなか魅力的だ。
「次は。あと二人いるね」
倫がまだ名前を聞いていない二人の女子に目をやる。
「里美です」
ちょっと大人しそうな子だった。
「あたしは、柚! ここにいるみんな十八、九だよ。君たちより少し下なのかな」
最後の女の子は、男勝りな印象を受ける。ベリーショートで、肌はテニスでもやっているのかと思うほど焼けている。
だんだん頭がぼうっとしてきた。みずみずしく、初々しく、触れれば柔らかい弾力が旋律となってかえってきそうな美女軍団。
触れるのは不可能だが、脳内で妄想が広がる。
「これは夢か」
誠に問いかける。
「夢じゃないな」
誠は答える。
「しかし夢にまで見たことが現実になっているぞ」
誠の顔を見て高史はぎょっとした。そうして、誠もぎょっとしたような顔をした。
「おまえ、鼻血が出ているじゃないか」
言うと、誠は高史の背中を叩く。
「おまえも出ているじゃねえか」
「マジか」
少し頭を動かすと、床に数滴、血が落ちていった。
きゃああああ、と甲高い声が聞こえる。鼻血を出している高史と誠に何人かの女子が侮蔑気味な瞳の色を浮かべている。
「血を止めてこい」
慎一が言った。
「鼻血ってどうやって止めるの」
鼻血を出したのは、高史は生まれて初めてだ。誠と二人で部室を出ようとすると、「ああ、ここで大丈夫だよ」と綾乃と美野里が立ち上がり、椅子を譲ろうとする。
だめだ。両脇には女子が座っている。女子に挟まれて余計に鼻血が止まらなくなりそうだ。
「俺たち、ちょっと隅に移動する……」
言って倫に出入り口に椅子を二脚持って来させ、止血に励んだ。綾乃が心配そうな表情で近づき、止血の仕方を懇切丁寧に教えてくれた。
俯き、鼻を強くつまむ。この体勢でしばらくすると、止まるらしい。
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