CIAの動きを封じた日
「同志昭夫、チリが危ないらしい!」
「え、もう!? アジェンデ政権、まだ崩壊してないよね!?」
1960年代末。
新聞の片隅に、小さな記事が載っていた。
《チリ、社会主義政権誕生。アメリカは警戒姿勢》
――そう、ここから始まる。CIAによる干渉、クーデター、そしてアジェンデの死。
「……このままじゃ、また歴史が繰り返される」
俺は未来知識を持つ転生者。
Wikipediaで読んだだけとはいえ、チリの悲劇は強く印象に残っていた。
「今なら、まだ間に合うかもしれない」
「同志、まさか……また世界に介入するつもりか!?」
「うん、ちょっと手紙書いてくる」
「軽っ!!」
俺が向かったのは、外務省にパイプを持つ玲子の家。
玲子の父親は高級官僚。彼女自身も、政治的な情報に強い。
「……あなた、また何か企んでるわね」
「うん、チリの未来を変えたい」
「またWikipedia?」
「うん、でも今回はちょっと深掘りした」
「それでも出典はWikipediaなのね」
玲子はため息をつきながらも、俺の話を聞いてくれた。
そして――
「この内容、父に伝えてみる。アメリカとの外交ルートを通じて、CIAの動きを牽制できるかもしれない」
「マジで!? 玲子さん、頼りになる!」
「別に……あなたのためじゃない。国際秩序のためよ」
「また“別に”!」
さらに、アナにも協力を仰いだ。
「ソ連の情報網を使えば、CIAの動きを先に掴めるかもしれない」
「え、マジで!? それ、スパイ映画みたい!」
「任務だから」
「便利すぎるな、その言い訳!」
アナは冷静に言った。
「でも……あなたの言葉には、動かされるものがある。任務を超えて」
「え、今のちょっとデレ入ってない!?」
「……任務だから」
「やっぱりか!」
そして――数週間後。
アメリカの外交ルートから、CIAのチリ介入計画がリークされた。
日本の新聞にも小さく報道され、国際世論がざわつき始める。
「同志昭夫、あなたの予言が、また当たった!」
「いや、Wikipediaで読んだだけなんだけど!?」
「それでも、未来を変えたのは事実だ!」
アジェンデ政権は、クーデターを回避。
CIAの動きは国際的に非難され、アメリカは表立った介入を控えることになった。
「……マジで、止められた」
「あなた、本当に未来から来たのかもしれないわね」
「え、玲子さん、今さら!?」
「別に……」
「また“別に”!!」
こうして俺は、未来知識を使ってCIAの動きを封じ、チリの政変を未然に防いだ。
昭和の学生が、世界の裏側を動かす――そんな時代が、今ここにある。
「……俺の昭和ライフ、もう外交官じゃん」
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