第12話 アイヴィー・モンス
ギギギッ。
アイヴィー・モンスの首がぐるりと辺りを見回して、我々の様子を探る。特に、自分の腕(腕か?蔦だろうか)を焼き切った原因について発見しようとしているようだ。当の原因であるプールは、姿勢を低くすると後ろに跳躍し、アイヴィー・モンスと間合いを取った。
ギシギシと腕が震えて、次の瞬間にプールがいた場所を蔦が叩いていた。この数瞬、目まぐるしい攻防が繰り広げられている。
しかし、アイヴィー・モンスの意識がショートを離れ、プールへ殺意を向けたことで、パッと魔剣士の呪いが発動し、銀環が輝いてアイヴィー・モンスを焼く。ダメージを受けたらしいアイヴィー・モンスが身悶えるように震えた。
「植物だから炎が苦手とかないのか」
「うーん、さっきから見てるけど、特に効くというかんじじゃなさそー」
「仕方ないか」
ショートは走ってアイヴィー・モンスに接触し、長剣を振る。モンスターの胴体を大きく切り裂いた刀傷は、怪しく輝き、秘術の光がほとばしると、モンスターの傷からほとばしった光が地面に突き刺さった。
アイヴィー・モンスは身じろぎするも、光がギシギシと身体を押さえつけ、その場から動くことができなくなった。
ショートは油断なく剣を下段に構え、アイヴィー・モンスを睨みつけ、その場から動かさない。
「そのまま!繋ぎ止めてください」
「当たり前だ!」
「大いなる妖精境の領主、冬の領域、荒ぶる冬の王、その息吹をもって、敵を討ち滅ぼしたまえ!」
プールは右に飛び、アイヴィー・モンスを視認できる位置へ移動すると、素早く呪文を詠唱した。プールの持つ杖の周りでパチパチと音がしたかと思うと、周囲の空気をすべて凍らせ、強大な冷気が噴出した。
アイヴィー・モンスに冷気は殺到し、命中したかと思うとバキバキと音を立ててアイヴィー・モンスが凍っていく。水分を含んでいるらしい蔦と葉とが、極低温下にさらされ、急激に膨張し、植物細胞を破壊している。そして空中に出た水分はすぐさま凍り、アイヴィー・モンスを氷の塊へと変えていく。
これで勝利したかと思われたが、ショートは油断せず、長剣を構えている。グラスは、更に後ろに走って逃げた。
次の瞬間、自身の凍結した水分を切り裂いて、腕が大きく振り回されショートを打ち倒そうとした。ショートは剣でいなそうと構えたが、多数の蔦が絡まって形成された腕には相性が悪い。バシバシと分かれた蔦がショートを打った。
「これは、相性が悪いな」
「捕まっちゃうねー」
蔦がショートを掴み取ってしまおうとうねって動き、絡まり始めた。ショートも逃れようとするが、蔦の量が多く難しい。
「相手も動けないが、俺も捕まってしまったな」
「余裕だねー」
「そんなに余裕ではないが……ブランチ、なにかないのか」
「あんまり使いたくないんだけどー」
ぶらんとぶら下がった鉄兜の中から、瞳が輝いてアイヴィー・モンスを見る。
「これでも抜けられそーか。炎の柱よ!<バースト>」
ブランチとショートを中心に炎の柱が燃え上がり、掴んでいたアイヴィー・モンスを焼いた。すっかり凍りつかせていた氷を溶かしきり、もうもうと蒸気があがっている。炎は腕を焼き切ると、ショートを掴んでいた腕は燃え落ちた。
秘術の炎が燃え盛るのが終わると、ピシピシと音がして再びアイヴィー・モンスが凍り始める。プールの強大な魔法が凍らせ続けているらしい。
「冷気が攻撃を続けている……」
ショートがその様子をみてつぶやく、次の瞬間、剣を構え、鋭く突き出した。
「<元素の脆弱化>よ!かの者を取り巻く冷気に苛まれ続けよ!」
アイヴィー・モンスは剣から逃れようと身体を動かそうとした、しかし、光の鎖はしっかりと地面とモンスターとを繋ぎ止めている。ショートの長剣が胴体に触れ、銀の光がほとばしると、アイヴィー・モンスの身体には、銀の輪とは別に、文様が浮き出ていた。
「ギッ」
アイヴィー・モンスが身じろぎし、腕を振ろうとすると空間が凍りつき、アイヴィー・モンスを凍結させる。すると、文様は輝き始め、空間の冷気はさらにその勢いを増すのだ。
「ガ、ガガガアアアアア」
凍りついたアイヴィー・モンスは、悲鳴にも似た轟音を上げたかと思うと、全身が凍りつき、そして砕けてしまった。
赤い目も、抜け落ちて、地面に転がったかと思うと割れて消えた。
「……大丈夫か」
ショートは長剣を鞘に収めると、グラスとプールの状況を見た。グラスはすっかり腰を抜かして転んでいたが、まだ生きており、プールは涼しい顔で立っている。
「ええ、大魔法を使ったので……精神的には消耗が激しいのですが……」
「そうか、グラスも大丈夫そうだな」
「え、ええ、旦那。ありがとうございます!また助けられちゃったな」
ショートは少し困ったような顔をしたが、グラスを見ると
「仲間が危なかったら当然助けるさ」
と言った。(グラスはそれに感動しているようだった)
プールはショートをあらためてじっと見ると、口を開いた。
「あの怪物と戦っているとき、あなたからあなた以外の声がしましたね」
と疑問を口にする。
そうだ。面倒ごとは避けたいとプールには隠していたが、思ったよりも厄介な敵と出会ったことでブランチに頼らざるを得なかった。それはもう、隠しようがない事実である。
グラスは既に立ち上がり、プールの後ろから心配そうな顔でショートのことを見ている。
こうなっては仕方ない、と観念したショートも口を開いた。
「これから、合わせてやるが……誰にも言わないでくれよ」
ショートの言い方に疑問を持ったプールは、首をひねった。
鉄兜が目の前に出される。
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