第3話 配信開始
<コメント>
・お、始まった!!
・きたーー!
・今日も新宿?
・ルーシーかわいい
・待ってました〜
・ルーシーすこ
・またスライム映すだけ?笑
配信を開始して、すぐにコメントが流れてきた。いい感じだ。
「今日も新宿ダンジョンです!」
私はテンションを上げて言う。
「えー、今回の配信テーマは『初心者でもできる第3層攻略』です!」
「……みんなもダンジョン攻略しよう」
ルーシーはいつも通りのテンションだ。
そんな感じで、いつも通り配信が始まった。
私たちはまず、第3層の特徴や出現する魔物について、カメラに映しながら説明した。
途中、スライムやダンジョンラットといった雑魚モンスターが現れたので、難なく討伐した。
……うーん、正直、あんまり撮れ高があるとは言えない。ルーシーも同じことを思っているみたいで、少し退屈そうな顔をしていた。
そこで私たちは、3層の奥の方まで進んでみることにした。
奥の方では、コボルトの群れと戦った。
スライムなんかと比べたら難敵ではあったけど、あんまり良い画が取れない……。
<コメント>
・初心者攻略って需要ある?
・雑魚敵ばっかやな
・ルーシーかわいい
・今なんか扉なかった?
・意外と平和やな
コメントの流れも悪くなってきている。やっぱり、撮れ高を意識するならもっと深層に行くべきなのかな?
でも、深い層ほど危険が増す。今の私たちの実力じゃまだ早いかもしれないし……
「アリサ、今のコメント」
「え、なに?」
ルーシーが急に、配信チェック用のスマホを見ながら言った。
「『扉』がどうとかって」
「見逃してたかも……」
確認すると、確かに「今なんか扉なかった?」というコメントがあった。
そこで私たちは、録画を確認してみた。
すると、先ほどの戦闘シーンの途中で、崖のようになっているダンジョンの壁面に、黒い扉のようなものがあるのが映っていた。
この辺りは何度か来たことがあるけど、こんな扉があるなんて情報は聞いたことがない。
「何これ……」
私は本能的にゾクッとした。
「これ、レア部屋じゃない?」
ルーシーは無邪気に笑っている。
私たちは顔を見合わせた。
「行ってみる……?」
私がルーシーに聞くと、彼女は「うん」と子供のように返事をした。
<コメント>
・確かになんか映ってる
・なになに?
・ちょっとこわい
・罠部屋だろどうせ
・行け!
・これは一体…?
・お宝部屋の可能性も
コメントが少し盛り上がりはじめた。
撮れ高が欲しい私たちは、録画に映っていた場所へ向かった。
そこは、さっきコボルトたちと戦った場所だった。
戦闘時は気づかなかったけど、確かに、黒い扉が壁面にあった。実物は異様な存在感がある……。
「なんでこんなところに扉があるんだろう? 3層の情報には無いよね……」
「アリサ、『転移』って知ってる?」
「転移?」
「深層の魔物とかオブジェクトが、浅い層に突然出現する現象だよ」
「そういえば聞いたことあるような……これもそうってことかな」
「そうかも。ダンジョンって自由だよね」
ルーシーは笑って言った。
「ルーシーどうしよう、入るべきかな」
「せっかくだし、入ろうよ。お宝とかあるかもしれないよ」
<コメント>
・入れ
・ヤバくない??
・気になる
・ルーシーかわいい
・やめた方が……
・撮れ高欲しいなら入るべきでしょ
・ごーごー
コメントにも促され、私たちは扉を開けて中に入った。
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