第1話 アリサとルーシー
「ねえアリサ、今日も講義終わったらダンジョン行こうよ」
講義の合間の休憩時間、銀髪ショートヘアの美女が私を突き刺すような眼差しで見つめながら言った。
ルーシーにその気があるかは分からないけど、彼女の眼差しには相手に「ノー」と言わせないような不思議な魅力がある。
「今日も? 最近頻度高いよね。いいけど」
「配信の視聴者も増えてきたしさ、もうちょっと積極的に活動してもいいかなって……」
ルーシーがスマホに目を移して言った。
スマホの画面には、私とルーシーが運営する配信チャンネルのアナリティクス画面が表示されている。
チャンネル名は『アリサとルーシーのダンジョン配信チャンネル』だ。
私、
ルーシーとは高校時代からの友人だ。
ダンジョンとは、数十年前に世界各地に突然現れた地下迷宮のこと。
その内部には、異世界から現れた魔物が多く生息している。
魔物から取れる素材は、詳しくは分からないけど、とても有用らしくて、多くの「探索者」と呼ばれる人々が、魔物を倒したことで得られる素材を換金することで、一攫千金を狙っていたりする。
私たち二人は、そんな探索者であり、特に探索の様子をネットで配信することから、「ダンジョン配信者」と呼ばれている。
「この前の配信アーカイブさ、けっこう評判良かったみたいだね」
私がルーシーに言うと、意外にもルーシーは少し不機嫌そうにこう言った。
「そうだね……でも、もっと同接数多くても良かったと思う」
「そうかな? 私たちまだ始めて一年も経ってないし、十分じゃない?」
「私は、もっと高みを目指したい。せっかくの自由なダンジョンなんだもん、もっと取れ高がほしい……」
「自由なダンジョンって、ずいぶんファンシーな言い方だね……」
私は苦笑いした。
ルーシーの言う「自由」とは、かなりオブラートに包んだ表現だ。
実のところ、ダンジョンの内部はあらゆる法律が適用されない無法地帯だ。
昔はそうじゃなかったらしいけど、ダンジョンの出現が原因でいくつも戦争や紛争が起こった結果、色々管理ができなくなって、そうなったらしい。
自由というのは、いわば自己責任の裏返しだ。
生きるも死ぬも、殺すも殺されるも、全部自分の責任。
そんな危険な場所だからこそ、人々はダンジョンに魅了されるのかもしれない。
「じゃあ、今日は取れ高を意識しよっか。17時から空いてるけど、ルーシーは?」
「私も大丈夫」
そうして、私は退屈な講義が終わった後、家に戻り動きやすい服装に着替え、大学の校門前でルーシーと待ち合わせた。
「アリサ、準備できてる……?」
「もちろん、機材もバッチリ」
「うん、行こうか」
こうして私たちは電車に乗って、ダンジョンを目指した。
目的地は、新宿ダンジョンだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます