冷血な辺境伯爵と偽装婚約しました。転生薬師スキルで魔物を仲間にすると、伯爵から溺愛される

おーちゃん

第1話

『001』


 王都から離れたヘムステルダム町にクローゼはいた。



 クローゼは辺境伯として町の領主もしていて、町の治安を守っている。



 地域には魔物が多くクローゼは魔物の討伐で忙しい。



 そこへ胃痛の手紙が来ていたのを開封する。



「王都のヘデラー国王からか?」



 送り主は国の国王であるヘデラー国王であった。



 伯爵なので王族と交流関係はあったから、手紙が来ること自体はあった。



 国王からの手紙となると無視はできないので、内容に目を通す。



 書いてある内容は、クローゼ辺境伯に命令的な内容だった。



 その命令はというと、王都にいる侯爵令嬢でエマ令嬢と婚約をするという内容。



「俺が令嬢と婚約だと? エマ令嬢か。なぜ俺なんだよ」



 クローゼ辺境伯は手紙の内容に不審に思う。



 いきなり会ったこともないし、知らない令嬢と勝手に婚約しろと書いてある。



 いくら国王の命令だとしても無茶な話だったが、相手は国王であるので、クローゼとしては断れないのあった。



 辺境伯と国王の立場の差がある。



 辺境伯とは伯爵の爵位である貴族なので、それなりに地位はあるものの、国王に逆らえる立場ではないのはわかっている。



 ヘデラー国王とは王都で会ったことはあり、かなり強引な正確な点は知っていたが、これは強引すぎる話。



 クローゼは手紙を見てエマ令嬢との婚約をしますと返事を書いて返信した。



 侯爵令嬢ということだが、顔も知らない令嬢との婚約には困った。



 断ることはできない以上は、嫌でも婚約するしかなかった。






 侯爵令嬢のエマは王都で国王から呼び出される。



 王都にある、国王のいる城に来ていた。



(なぜ私が国王に呼ばれたのかしら?)



 侯爵家の令嬢なので、王族の城に来るのは初めてではなかったけども、今日は空気がおかしい。



 まるでエマを断罪するかのような冷たい空気だった。



(私を見る目が冷たいわね)



 突然に城に呼ばれたからで、国王の周囲には第1王子ユリウス、第2王子リーデル、騎士団長もいて、エマを見ている。



 国王から何かしら処分を受ける雰囲気であった。



(いったい何を言われるのかしら?)



 不安な気分で部屋に到着したエマに、ヘデラー国王が、



「侯爵令嬢エマに命令する。今日から王都から辺境のヘムステルダム町に行き、辺境伯の伯爵と婚約することを命令する」



「えええええ? 私が婚約ですか?」



(なぜいきなり婚約話が?)



 エマは混乱する。



 なぜなら第1王子のユリウスと婚約していたから。



 王子と婚約中なのに、なぜか別の辺境伯と婚約しという意味がわからない。



「辺境伯はクローゼだ。クローゼと婚約する話は決まった。ヘムステルダム町に行くように」



「ちょっと待ってください国王。私は第1王子ユリウスと婚約していましたが?」



「ユリウス第1王子との婚約はたった今破棄した。今日からはクローゼ辺境伯と婚約だ」



「いきなり破棄して、新しい婚約と言われても」



 エマはユリウス第1王子と婚約していた。



 それなのに急に婚約解消されて、聞いたこともない町の辺境伯の男と婚約しろと。



(話が急すぎます。会ったこともない伯爵と婚約しろと言うのは)



 そんなことを言われて、はい、わかりましたとなるか。



 いくら国王の命令でも無理がある。



 それに婚約者のユリウスだって反対するはず。



 エマの婚約者だったのだから。



(ユリウスは私の婚約者です。きっと国王に反論してくれるよね)



 ユリウスの方を見る。



 必ずユリウスは父親であるヘデラー国王の無茶苦茶な命令を断るはず。



 エマの婚約者だから。



(私を守ってくれるよねユリウス王子)



 そのユリウスが前に出てきて、



「エマよ、聞いた通りだよ。お前は王都から出ていけ。俺の婚約者は破棄だ。そして田舎の町に行け。2度と王都の城には来るな、わかったか!」



「えええっと、どうしてユリウス! 私は婚約者よね!」



(まさかだった)



 婚約者のユリウスが賛成していて、エマを追放するかのように言いつけたのだった。



 これでは多くの人が見ている前でエマは笑いものであった。



 王子と婚約者だったエマをみんなの前で破棄されて大恥を受けている状態になった。



 こんな状況は全く予想していなかったから、エマはとても受け入れられない。



(婚約破棄なんてひどいわ!)



「破棄なんだよ。お前は俺の婚約者にはふさわしくないからだよ。俺は将来は国王になる男だ。それにふさわしい女性が望ましい。しかしエマはふさわしくない女だ」



「どうして、私は王都で今まで薬師として大きな貢献をしてきましたよ。王都と国の為に仕事をしてきました」



「その仕事が問題なんだよ。エマが薬師として王都を最大の危機にさせたと聞いている。そんな女と婚約などできるかよ! 恥を知れ。王都から出ていけ」



「酷いです。私はそんな危機にさせた覚えはないのに」



 エマは信じられない光景に。



 王都のために死ぬ気で薬師を頑張ったし、貢献もした。

 


 それを王子は逆に危機にさせたというのは、納得がいかない。



 確かにエマの作った薬が問題にはなっているのは聞いていたが。



(どうしてこうなったのか?)



 理由がわからないけど、その原因がなんとなく伝わったのはユリウス王子の隣にいる女。



(横にいる女は、レイチェルだったか。なぜ横に?)



 その女性は確か伯爵令嬢のレイチェル。



 レイチェルが薄ら笑いをしている。



 エマを見下すような目で見ているのが伝わる。



 そのレイチェルが笑いながら、



「あははは、残念ですわ。エマが田舎の町に追放されるのは残念です。かわいそうにね。でも安心していいのよ、なぜなら私がエマの代わりにユリウス王子と婚約しましたから」



「なんですって! レイチェルが婚約を! 嘘ですよね?」



「嘘じゃない。俺はレイチェルと婚約した。エマよりも俺にふさわしい女だ。お前とは違う」



「レイチェルと!」



 エマが婚約破棄され、代わりにレイチェルと婚約したと告げられる。



(それで私は田舎に追放ってことですか)



 エマは悔しいが、他に反対してくれる人はいない。



 第2王子のリーデルはどうかとエマは考える。



(きっとこんなバカげた話を反対しますよね)



 ユリウスの弟リーデルが話して、



「ユリウス兄さんが言うのは意義があります」



「リーデルは反対するのか。兄の新しい婚約を?」



「婚約は反対しません。ただしエマが無能な薬師とは思いません。エマは有能な薬師だと思います」



「こいつのどこが有能な薬師なのか。ただの役立たずで有害だよ」



「有害ではないです。エマは優れています。しかし僕ほどではないですが。僕こそが国家最強の魔術師であり、賢者の適正があるのですから。つまりはエマは世界一有能な僕の奴隷として、扱いたいのです」



「奴隷とは?」



「エマを僕の魔術師のための助手にしたい。国の役に立たないとしても、僕の手伝いくらいはできるでしょうから」



「あははは、単なる手伝いか。まあ、お似合いだ」



「あはははははははは。傑作ですわ」



(手伝い? 私が?)



 エマを単なるリーデルの手伝いにするとか、完全にバカにされていた。



 ユリウスと婚約したレイチェルは大笑いしている。



(私がリーデルの手伝いをするのが、そんなに面白いのですか)



 ここまでバカにされると婚約していたエマが惨め。



 なんでこんな男と婚約していたのかと後悔する気分になった。



 第2王子リーデルの提案に国王はというと、



「リーデルの提案は一理あるものの、辺境に行かせるのは決まったことだ」



「はい、残念ですが従います」



 結果は第2王子リーデルは反対などしてくれなかった。



(期待した私がバカだったか)



 見た目は紳士的な王族の第2王子なのに、性格はとんでもなかった。



 エマを薬師として奴隷として使えると発言する性格。



 エマの期待には答えられない王子で落胆しかない。



 今度は騎士団団長のプロゲスタンが出てきて意見を言う、



 普通は王族にしか発言は許されないが、彼は王都でも最強の団長とされており、特別に発言は許可されている。



「国王、意見があります」



「意見を聞こうプロゲスタン」



「私の意見は辺境の町のことです。ヘムステルダム町の周辺には危険なAランク級の魔物が潜んでいます。侯爵家の令嬢のエマ様を婚約で送るのは危険が大きすぎると思いますが」



「危険はあるのは知っているが、婚約者のクローゼ伯爵は剣士であり、魔物との戦いもしてくれている。だから安全だろう」



「はい、わかりました」



 今の騎士団長と国王の会話は聞き逃せない。



 超危険な魔物がうじゃうじゃいる感じにエマには聞こえた。



(そこへ私を送るのは、もう追放ですよ)



 エマは聞いていて、将来が暗くなっていくし、断ることもできないから、仕方なく納得するしかなかった。

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