宝華島史Ⅰ ― 一般的宝華島史 ― 授業記録

ネコ屋ネコ太郎

シラバス

国立宝華島特別高等専門学校

前期授業シラバス


科目名:宝華島史Ⅰ ― 一般的宝華島史 ―


1.授業名

宝華島史Ⅰ ― 一般的宝華島史 ―


2.担当教員


「宝華島史Ⅰ」は、宝華島史・社会科・関連分野を専門とする複数名の教諭による共同担当科目とする。


授業ごとの担当教諭は、当該時限の開始前に教員間で行われる抽選により決定される。


なお、中間考査および期末考査についても、担当教諭は実施当日に抽選により決定し、抽選後に試験問題を作成する。これにより、特定教諭の傾向に依存しない評価と、複数の視点からの出題を目的とする。


3.開講対象・区分


・学年 :本科1年

・開講期:前期

・区分 :必修(共通基礎科目)

・単位 :2単位


・継続科目:後期開講「宝華島史Ⅱ ― 特殊理解における宝華島史 ―」必修


※本授業「宝華島史Ⅰ」は、後期科目「宝華島史Ⅱ ― 特殊理解における宝華島史 ―」の前提科目です。未修得の場合、「宝華島史Ⅱ」の履修登録はできません。


4.授業概要


本授業は、学生が生活する「宝華島」の成り立ちと、本校(国立宝華島特別高等専門学校、以下「特高」)が成立するまでの歴史的過程を、古代の伝承から現代まで通史として概観するものである。


東京都南端の外れに位置し、一年中ほぼ常夏の気候と、ほぼ毎年「常駐」する台風、そして島全体を覆う強い磁場異常により外界との通信が不安定なこの島は、自然の結界として機能する特殊環境である。


古代・中世においては、蓬莱信仰・徐福伝説・浄土思想・陰陽道などの中で、宝華島は「彼岸」「仙島」「術者の場」として語られてきた。平安期には陰陽師の修行地、江戸期には密貿易の要所として発展し、近代には軍事研究所「宝華島科学研究所」が設立され、科学とオカルトを統合した“宝華体系”の研究拠点となる。


第二次世界大戦終結後、宝華島は連合国の統治を拒否して独立抗戦を行い、唯一「連合国に勝利した日本領」として位置づけられた。その後、形式上は日本国に編入されつつも、実質は独立自治国家として存続し、旧研究所を改組した「宝華島未来科学研究所」を母体として、教育実験施設である特高が設立された。


本授業「宝華島史Ⅰ」では、


・第1回〜第7回で、神話・伝承から中世・近世初期までの宝華島像

・第9回〜第15回で、江戸期から近現代、戦後・特高設立までの歴史


を扱う。中間考査および期末考査を通じて、宝華島史を一本の時間軸として整理し、「自分たちが立っている島」と「その上に築かれた特高」という現在を、歴史の文脈から理解することを目指す。


後期科目「宝華島史Ⅱ ― 特殊理解における宝華島史 ―」では、本授業で学んだ通史を前提として、異端文化史・異世界文化史・異星文化史と宝華島文化史との関係性を中心に扱う。


5.到達目標


本授業を履修し、単位認定を受けるための到達目標を、以下の通り定める。


(1)通史の把握

古代の伝承・宗教思想から近世・近代・現代に至るまでの宝華島の歴史的変遷を、時代順に自分の言葉で説明できる。

(蓬莱・徐福伝説、浄土思想・陰陽道、幕府支配、異国・異世界からの視点、明治維新、軍事研究所、第二次世界大戦、戦後独立抗戦、特高設立まで)


(2)多層的な宝華島像の理解

宝華島が「神話上の仙島」「宗教的彼岸」「軍事研究拠点」「独立自治国家」「教育実験施設の島」といった複数の顔を同時に持つことを理解し、それぞれの時代でどの顔が強調されていたかを説明できる。


(3)特高成立の歴史的位置づけ

宝華島未来科学研究所から特高設立に至る経緯を理解し、特高が「名目上は国立校でありながら、実質的には独立国家であり、人間・社会を対象とした実験施設でもある」という二重性を説明できる。


(4)批判的視点の萌芽

自分自身が、宝華島という特殊環境と特高という教育・社会実験の文脈の中で生きていることを認識し、短いレポートの中で「歴史の中にいる当事者」としての視点を言語化できる。


(5)後期科目への接続準備

後期開講「宝華島史Ⅱ ― 特殊理解における宝華島史 ―」において扱われる、異端文化史・異世界文化史・異星文化史と宝華島文化史との関係性を理解するための前提知識と基礎概念を身につけている。


6.キーワード


宝華島/蓬莱/徐福伝説/浄土思想/陰陽道/安倍晴明伝説/幕府支配/異国から見た宝華島/異世界接触の記録/宝華島科学研究所/宝華体系/オーバーテクノロジー/第二次世界大戦/独立抗戦/独立自治国家/宝華島未来科学研究所/特高設立/教育実験施設/特高法域


7.授業形態


・講義(板書・スライド)および質疑応答

・史料(伝承・文献・記録)の読解演習

・時代ごとの宝華島像を整理するワークシート記入

・中間考査・期末考査

・必要に応じて、担当教諭の判断により、教材・副教材を用いた演示・簡易実験を行う場合がある(安全面については担当教諭の指示に従うこと)。


8.評価方法


・平常点(出席・小テスト・ワークシート) :30%

・中間考査(第8回)            :30%

・その他(担当教諭による評価)       :50%

・レポート(任意提出・加点)        :最大+10%


※「その他(担当教諭による評価)」には、期末考査、授業内実験への参加状況、発言、態度、担当教諭が必要と認めた独自の観点による評価を含む。

※担当教諭の構成により、中間考査・期末考査においても、筆記に加え簡易実験や演示を含む形式で実施される場合がある。その際は、当日示される指示に従って受験すること。


9.授業教材


【授業教材】

・教科書:『初めての宝華島史』

 (宝華島史教育研究会 編/宝華島未来教育出版)


【副教材】

・各担当教諭によるオリジナル資料

 ※資料にはプリントのほか、造形物・模型・複製史料・映像資料等を含む場合がある。


担当教諭によっては、授業当日に副教材を用いた演示・簡易実験を実施する場合がある。授業担当は毎回抽選により決定されるため、年度によっては実験中心の授業構成となる場合や、ほとんど実験を行わない年度もある。

実験を行う際は、必ず担当教諭の指示および配布資料の記載に従って行うこと。


10.履修上の注意


1.授業で扱う一部の内容は、島外では未公開・秘匿扱いとなっている。授業資料の島外への持ち出し、およびSNS等による無断転載は、情報管理規定に抵触する可能性があるため禁止とする。


2.本授業の内容は、後期科目「宝華島史Ⅱ ― 特殊理解における宝華島史 ―」の前提知識として扱われる。欠席が続いた場合、Ⅱの履修および理解に支障をきたすおそれがある。


3.歴史的事実の一部は研究途上であり、今後の調査により解釈が更新される場合がある。その際は最新の講義内容および配布資料を正とする。


4.授業内容を題材にした創作活動(小説・漫画・映像作品など)は歓迎するが、発表の際は史実とフィクションの境界について十分配慮すること。


5.実験・演示を伴う授業回では、安全確保のため、担当教諭の指示および配布資料の注意書きに必ず従うこと。指示に従わない場合、当該回の出席および成績評価に影響する場合がある。


11.授業計画(予定・全16回)


第1回 オリエンテーション:宝華島とは何か

授業の目的・評価方法・今後の流れを説明する。宝華島の地理的位置、一年中ほぼ常夏の気候と台風の「常駐」、周囲を取り巻く磁場異常による外界通信の不安定さを概観し、「日本史の枠からはみ出した島」という前提を共有する。


第2回 古代史:伝承に登場する宝華島 ― 蓬莱・徐福伝説

中国・日本の古代伝承における蓬莱信仰と「東の海の仙島」のイメージを取り上げ、宝華島との関連を検討する。徐福伝説や不老長寿のモチーフから、「物語の中で先に存在していた宝華島像」を整理する。


第3回 中世史1:文献に初登場する宝華島 ― 奈良時代・浄土思想と宝華島

奈良時代の文献資料に見られる宝華島の記述を確認し、浄土思想・彼岸観との関係を考察する。現世と彼岸、海の向こうの島というイメージが、後世の宝華島の宗教的意味づけにどのようにつながるかを学ぶ。


第4回 中世史2:平安時代 ― 陰陽道と宝華島・安倍晴明伝説

平安期の陰陽道と宝華島の関係を扱う。結界・方位・星祭りなどの観点から、宝華島が陰陽師たちの修行・実験の場とされてきた背景を検討し、安倍晴明およびその系譜に関連する宝華島伝承を紹介する。


第5回 中世史3:鎌倉・室町時代初期 ― 幕府と宝華島・日本による支配

武家政権の成立後、宝華島が中央権力の支配下にどのように組み込まれていったかを学ぶ。年貢・軍事拠点・海上交通の要地としての役割など、実務的な観点から「島を管理する」歴史の始まりを整理する。


第6回 近世史1:異国から見た宝華島 ― 異端文化接触(室町時代後期)

室町時代後期から近世初期にかけての海外文献や航海記録における宝華島の言及を取り上げる。「地図の端に描かれた謎の島」「異端的風習の島」など、異国の視点から見た宝華島像を検討し、内側からのイメージとのギャップを考える。また、海外からもたらされた異端文化と宝華島文化の融合についても考察する。


第7回 近世史2:異文化から見た宝華島 ― 異世界接触の記録(室町時代後期)

史料の中に残された、現実の歴史だけでは説明できない宝華島の記録を扱う。異界の来訪譚・失踪譚・時間感覚のずれなど、「異世界接触」と解釈されうる記述を読み解き、史料批判の観点も含めてその扱い方を学ぶ。また、こうした接触によりもたらされた文化についての考察も行う。


第8回 中間考査(第1回〜第7回)

第1回〜第7回を対象に試験等を実施する。用語・人物・出来事・時代区分に加え、「宝華島像が時代ごとにどのように変化したか」を短くまとめる設問を予定している。


第9回 近世史3:江戸時代 ― 文化の交差点としての宝華島

江戸時代における宝華島を、文化・経済・信仰が交差する場として捉える。密貿易や異国文化の流入、在地信仰との混淆などを通して、「閉じた島でありながら外からの影響が濃く堆積した場」としての性格を整理する。


第10回 近代史1:明治維新と宝華島 ― オーバーテクノロジーと近代国家

明治維新以降、近代国家の枠組みの中で宝華島がどのように扱われたかを学ぶ。島に眠る「時代にそぐわない技術」や知識(オーバーテクノロジー)が、政治的・軍事的にどのような意味を持ったのか、宝華島科学研究所の設立とも関連づけて考察する。


第11回 近代史2:軍事施設としての宝華島 ― 明治・大正期

明治・大正期における軍事研究施設としての宝華島を扱う。国家研究機関としての宝華島科学研究所の役割、島民の生活への影響、「島全体が実験場である」という発想の萌芽などを、後の宝華体系・未来科学研究所へのつながりとして整理する。


第12回 近代史3:第二次世界大戦と宝華島

第二次世界大戦期の宝華島の位置づけを学ぶ。公式記録に残る軍事的役割と、残されなかった研究・作戦にまつわる噂や断片的史料の両面から、「戦争が終わっても終わらなかった島」としての側面を検討する。


第13回 現代史1:戦後宝華島 ― 独立抗戦と実質独立自治国家

終戦後、宝華島が連合国の統治を拒否して行った独立抗戦と、その結果「唯一連合国に勝利した日本領」として位置づけられた経緯を学ぶ。形式的な日本編入と、実質的な独立自治国家としての存続、二重法体系の始まりについて整理する。


第14回 現代史2:特高設立 ― 教育実験としての宝華島

宝華島未来科学研究所への改組を経て、教育実験施設としての特高が設立される過程を扱う。政治的取引として自治権と特別高等専門学校設立が認められた経緯、教育理念としての「人間の再設計」「新教育実験施設」といったキーワードを確認する。


第15回 現代史3:特高設立後の歴史

特高設立後の主な出来事(制度改変・生徒会長戦の変遷・外界との関係変化など)を概観し、現在の宝華島の歴史的意味合いを考察する。あわせて、学生一人ひとりがこの通史のどこに立っているのか、問いを投げかける。


第16回 期末考査およびまとめ

通期を対象とした期末考査を実施する。あわせて、「あなたにとっての宝華島史」というテーマで簡単な振り返りシートを記入し、後期科目「宝華島史Ⅱ ― 特殊理解における宝華島史 ―」で扱う内容(異端文化史・異世界文化史・異星文化史と宝華島文化史との関係など)の予告を行う。

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