花になる日まで
湯沢綾汰
第1話 カモミール1
花言葉。
それは花や植物の特徴、形、色などにちなんで作られたメッセージ。
人々は花言葉を使って間接的に相手と会話をしてきた。
薔薇は愛情。カーネーションは感謝。向日葵は憧れ。
一つ一つの花には様々な想いが込められている。明るいことも時には暗いことも。
それは表裏を持つ人間と似ているのかもしれない。
キーンコーン。
学校のチャイムが鳴り、昼休みの時間がやってきた。
クラスメイト達は一斉に教室を抜け出した。今日は水曜日。日替わりの体育館開放の日だ。
皆、バスケやバレーをしに行くのだろう。
_もう百合には手も足もないのに…
静かになった教室で突っ立ったていたのは、私一人だけだった。
その教室に自分の思いが過ぎる。
今日も私は百合の机に向かう。そして、その上に置かれた花瓶の水を入れ替えた。
そうすると残っていた男子生徒達が嘲笑しだすのだ。
「またやってるぞ。あの女」
「表面だけイイ子振りやがって…いい迷惑だぜ」
それを黙って聞いている。と、いつものように担任の教諭が教室に駆け込んでくる。
「あなた!!またそんなことやって!放課後職員室に来なさい!」
職員室
いかにも職員室という場所。想像できても言葉にはできない。
教師が慌ただしく作業をしている中、変わった植物が置いてあるデスクの持ち
「…。」
「
ため息混じりなのに、なぜかはっきりしている。
それに対して反論をした。
「けれど、百合がいたことを証明するにはこれしかないんです。そうじゃないと皆忘れてしまうでしょ?」
「…庭白さんの親御さんがあなたに失望しているわ。いい加減にしろって何度も電話がくるのよ。
あなたは自分の行動について、深く追求したことはないの?」
純白の肌。彫刻のような容姿。白百合のような佇まい。
そんな彼女は半年前、不良の事故で亡くなった。
一瞬だった。命というものは儚いと思い知らされた。その前までは何事もなく共に笑い合っていたというのに。
いつの間にか私との距離は遠くなってしまった。
彼女は物語のヒロインのように出来上がった人間。
生きていれば人は集まってくる。けれど死んだ人間に周りの人々は見向きもしない。
当たり前なのだろうか。悲劇のヒロインは腫れ物扱いにされるのが王道なのか。
それが私は気に食わなかった。
(いい香り…)
花の香りが近くに舞い降りてきた。
香りの方向を見てみるとそこには小さな花屋があった。
花屋は小さくも花は溢れるほどたくさん。
それは今の感情を表現しているように溢れている。
「こんにちは」
横を見ると若い男性が立っていた。彼はスイートピーを入れたバケツを抱えていた。
しかもイケメンなのでそれが様になっているかのようだ。
「今日は心地よい春の陽気ですね。雲ひとつないです」
「つい、香りに誘われて…こんな所に花屋ができたんですか?」
「はい。最近移転しまして、ここで店を開かせていただいてます」
「なるほど。せっかくなので、花束をひとつお願いしてもいいですか?」
「喜んで」
男性は店の奥に進み作業を始める。それは見ていると単純なのにどこか引き込まれる魅力があった。彼は、様々な花を重ね、瞬時に完璧な花束をつくった。
「その白い花は何ですか?」
「これはカモミールです。りんごみたいな甘い香りがするんです。可愛いでしょ?」
彼の見せた、その笑顔自体がもう既に可愛いのであった。
「カモミールとユーカリとガーベラ。一つ一つの花には花言葉というメッセージがあるんです」
「どんなのですか?」
「カモミールは可憐。ユーカリは思い出。オレンジのガーベラは忍耐強さ。この花束は見た目は控えめだけど中身は一つ芯のあるものなんです。どうです?お気に召したでしょうか?」
「最高です!!早速友人の元に届けます!」
「お気をつけて」
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