ただ、それだけのこと 白雲町の秘宝
@je3m8xK1
第一話 ささやかな冒険のために
消えかかっていた雲が、再び顔を出した。窓の外を眺めるのも様になってきたように思うけれど、その実あまり上手くいかない。
「もしかして、暇だったりする?」
その瞳に浮かんでいるのは、期待と不安…ではなく、好奇だ。
「まあ…そうかも。」
「だったら、自販機で飲み物でも買って、ゆっくりティータイムってのはどう?」
目の前の姫君は、いつだって優雅な微笑みを忘れない。
「いいよ。」
「ふふっ。やったあ♪」
新雪がふんわりと溶けていくような歓声に、心が躍る。
「もうできたかな~。」
「何の話?」
意味ありげに口角を上げた彼女は、後ろ手に扉をノックした。
「耳たぶはいつだって…」
「もっちもち♪」
不思議な合言葉を交わした途端、飛び出してきたのは一人の少女。
「すみません。やっと終わりました。」
「ううん、大丈夫。」
親しげに話し込む二人を横目に、戸惑いを隠そうと必死になるのはいつものことだ。
「あっ、登先輩もお久しぶりです!」
「ああ、うん。久しぶり…」
相変わらずの茶目っ気あふれるその声音に、ペースを乱されてしまう。
「ほら、道下くん。これ。」
指し示されたのは、古びた地図だった。思わず二度見する。
「えーっと…つまり…」
顔を見合わせた姉妹(と言っても、そう見えるだけなのだけれど)の声は見事に重なり、広々とした校舎にこだまする。
「「宝探し!」」
どうやら僕たちは、これから作戦会議を開くらしい。
所変わって、ここは二階の空き教室。入り口のプレートには、『2-2』とある。今はというと、談話室、あるいは、秘密基地に様変わりしていると言っても過言ではない。
「それでね、日山さんが歩いてたら、これが風に乗って飛んできたんだって。」
「あ、そうなんだ。」
即座に、日山さんが言葉を継ぐ。
「そうなんですよ。驚きましたねー。まさかこんなものがあるなんて、思ってもみなかったですから。」
確かに、宝の地図なんてお目にかかったことがない。
「びびっと来たんです。びびっと。」
なぜか強調した日山さんは、ミルクティーのキャップを勢いよく開けた。
「なるほど…」
そう答えるほかなかった。もう少し気の利いたことが言えればよかったのだけれど。
「私も、なんだか気になってきちゃって。」
そう言いながら、風咲さんもレモンティーを手にした。
「手伝うよ。」
紙パックに付いた水滴を拭ってから、ストローを差し込む。
「裏面に、詩が書いてあるんですよ。」
不覚にも、カフェオレを吹き出しそうになった。
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