第35話 ヒロイン視点
……やはり御主人様は凄い。
私達は足が震えて動けないのに、堂々としている。
どうして、そんなに強くいられるのだろう。
いや、違う……きっと、強くあろうとしているのだ。
だったら、今の私にできることは……邪魔をしないこと!
私は自分の頬を叩き、どうにか動けるように。
「アーノルドさん! アニエスさん! しっかりしてください!」
「だ、だめだ、足が動かない……!」
「も、もうダメですぅうぅ! 私達、ここで死んじゃうんだ!」
これでは御主人様が思い切り戦えない。
きっと、私達を守るために前に出たというのに。
「失礼します——せぃ!」
「「イタっ!?」」
「情けないことを言わないでください! こうしてる間にも、御主人様は我々のために立ちはだかってるんですよ!」
私が頬を引っ叩いて叫ぶと、二人の顔がハッとする。
視線を向ければ、御主人様はゴブリンジェネラルの正面に立ち逃げる素振りもない。
むしろ、後ろにいる騎士達に下がるように命じてるくらいだ。
「そ、そうだった……」
「で、でも、どうしたら……」
「せめて足手纏いにならないようにしましょう。騎士の方! 申し訳ありませんが私達の護衛を!」
騎士達が一瞬こちらを見て躊躇するが、御主人様が頷くとこちらにやってくる。
これで二人は安全だし、足手纏いになることはない。
本当は私もお手伝いしたいが、まだまだ実力不足なのが悔しい。
「御主人様! こちらは平気ですので遠慮なく!」
「ユリアよ、良くやった。後は俺に任せるがいい」
「……はいっ! 私は後ろで見ております!」
例え後ろの皆が逃げても、私だけは逃げない。
死ぬ時は、御主人様と一緒だ。
やはり私達を待っていたのか、御主人様が動き出す。
「待たせたな、ゴブリンジェネラルよ——アイスアロー」
「ガァァ! ウァァァァ!」
ゴブリンジェネラルは御主人様の氷の矢を手で打ち払い、そのまま攻撃を仕掛けます。
御主人様は一歩後ろに下がり、それを華麗に躱しました。
「ちっ、牽制にもならんか」
「ウガァァ!」
「うるさい奴め。氷の蛇よ——アイススネーク」
「グガッ……!?」
今度は氷の蛇が腕に巻きつき、ジェネラルの身体を凍らせていきますが……途中で止まり、腕を振ると氷が消滅した。
「くそっ、これでも無理か……ならば物量でアイスショット!」
「ガァ!?」
「……かすり傷か、これは手持ちの氷魔法では厳しいかもしれん」
大量の氷の礫がジェネラルを襲うが、少しの傷がつく程度みたいです。
それでも御主人様は一歩も下がることなく、果敢に攻め立てる。
「ガァァ……!」
「だが、俺は退くわけにはいかん」
それを見て騎士達が前に出ようとする。
流石に皇子を見捨てることは出来ないのでしょう。
「や、やはり無茶だ! そもそもゴブリンジェネラルは正騎士数名で当たる魔物!」
「何故、アルヴィス殿下は退かないのだ? 何故、我々を盾にして逃げない?」
「簡単な話です。騎士とはいえ、貴方方も御主人様にとっては守るべき存在。そして、あの魔物をここで見逃せばどうなりますか?」
「それは……人が多いキャンプ地に向かうのでは……そうか」
「間違い無く、他の生徒達を襲いに……」
「そうです。御主人様はそうさせないために、ああして戦っているに違いありません」
御主人様はいつだってそうだ。
口では悪態をついても、人のことを見捨てられない。
皇族としての義務と、己の矜持のために。
「……我々は勘違いをしていたな」
「ああ、あの方こそ真にお守りに値するお方だ」
「私もそう思います。御主人様こそが、皇帝の器なのだと」
私は彼の不器用な優しさに救われた。
でも、まだ大部分の人は誤解している。
だから、皆に教えてあげたい。
御主人様は、口下手で不器用だけど素晴らしい人なんだって。
……ただ、そんな彼女も一つだけ誤解している。
アルヴィスはただ、推しにかっこいところを見せたいだけなのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます