第48話 皇都の闇
はぁ……実に楽しかった。
推しの着せ替えを楽しめるとか、どんだけ課金してもいい。
そんな中、何とか支払いを我慢出来たのは我ながら偉い。
「御主人様、改めてありがとうございました」
「なに、ほんの暇潰しだ(いくらでも暇潰しにできます!)」
「ふふ、それなら良かったです。この後はどうしますか?」
「うむ、そろそろ1時間経つか……」
1時間くらいと言われたが、まだ明るいし買い物でも行くか?
折角のデートだというのに、これで帰るのは勿体ない気がする。
「御主人様ばかりに付き合わせるのは悪い気がしますね……」
「なに、気にするな(推し活楽しい!)」
「ですが、してもらってばかりな気がします……」
そう言い、少し沈んでしまう。
やはり、気にするよなぁ……ならば、本人の気が紛れるようにするのが推し道というものだ。
「ふむ……では、次は俺の買い物に付き合ってもらおうか」
「はいっ、喜んで」
「ならば良い店に案内せよ」
「畏まりました。えっと、そうなると……御主人様に似合いそうなのは……」
沈んでいた顔が一転して嬉しそうに呟く。
やはり、喜ぶ顔が一番だな。
そのまま商店街を歩くと、段々と人通りが多くなってくる。
「おおっ、賑わってきたな」
「もうすぐ夕方になりますからね」
「……ふむ」
先程も悪くなかったが、人が多い中歩くのも悪くない。
この中で学校帰りに女の子と歩くと、なんだか高揚感を覚える。
これが制服デートという効果か……素晴らしい。
「ふふ、なんだか楽しいです」
「ふん……(やだ! 同じ気持ち!?)」
「こうして買い物をせずに、のんびり眺めるのも楽しいと知りました」
「そうか……」
くぅぅぅ! いくらでも連れて行きたい!
何回も言うが、この子は縛られて生きてきた。
その辛さを、俺はどうにか和らげてあげたい。
その後、更に人が増えてくる。
「くっ、流石に混む時間帯か」
「そうですね……きゃっ」
「むっ……」
ユリアが人に当たられ、よろけるのを受け止めた。
当たった奴を許さんという気持ちと、密着したのでグッジョブという複雑な感情が入り混じる。
「も、申し訳ありません」
「構わん(ラッキーです!)」
「あの……服の端を掴んでも良いでしょうか?」
「はぐれたら迷惑だから構わん(ナニー!?)」
「ありがとうございます……失礼しますね」
こ、これは……全男子が憧れる服の端ちょこんではないか!(合ってるかはわからない)
手を繋ぐわけでもなく、何か接触してるわけでもない。
だというのに、この幸せ感はなんだ? 俺、ここで死ぬの?
そんな幸せを噛み締めていると、こちらに迫る気配に気づく。
一瞬刺客かと思い捕まえると……それは小さな男の子だった。
しかも、頭のてっぺんには耳があるので獣人だろう。
「あっ!?」
「御主人! 平気ですか!?」
「ああ、無論だ。それにしても……貴様、ユリアにぶつかろうとしたな?」
そう、こいつは俺ではなくユリアを狙った。
もしかしたら、教会からの刺客かもしれない。
ならば……消す。
「ひぃ!? お、お金を持ってるかと思って……」
「金目的か……」
確かに刺客にしては弱すぎる。
ただ、物盗りは物盗りで困ったぞ。
何故なら、ユリアが悲しそうな表情をしているから。
直接ではないとはいえ皇族に物盗りなど極刑モノだ。
「あの、御主人様……」
「みなまで言うな。小僧、人が多くてかなわん。何処か、静かな場所に案内せよ」
「へっ?」
「聞こえなかったか?」
「こ、こっち!」
俺が圧をかけると、慌てて路地裏を指差す。
そのままついていくと人はいなく、一気に寂れた空気になっていく。
壁は汚れ、あちこちにダンボールに身を包んだ者達がいた。
「御主人様、これは……」
「皇都の闇だな」
「私がどうにかしたかったもの……そして獣人が多いですね」
「仕方あるまい」
本来の獣人の住処はここより遥か遠い地。
ここにいるのは奴隷として連れてこられたり、その奴隷から生まれた者達であろう。
そして教会は魔法が使えない出来損ないとして獣人を弾圧している。
「ここなら静かだよ!」
「うむ、案内ご苦労。さて、何故盗みをしようとした?」
「そ、それは……妹や弟達がお腹を空かせてて……」
後ろを見れば、こちらをチラチラ見てくる更に小さな子供達の姿が。
なるほど、自分ではなく奴らのためにか。
「なるほどな。それで、盗みは初めてか?」
「う、うん! お兄ちゃんがいるんだけど、それだけはやめなさいって!」
「うむ、中々に良い兄だな。しかし……どうして、その兄は放っておく?」
「それが、冒険者やってるけど、何か大きな稼ぎがあるとかで何処か行っちゃって……帰ってこないんだ」
「そうか……とりあえず、身綺麗にするか——
水の浄化によって、子供達の汚れが落ちていく。
同時に壁なども、まるで新品のように綺麗になる。
淀んだ空気が一転して、明るい空気になった。
最後に……夕方の空に虹がかかる。
「わぁ……綺麗」
「……(綺麗なのは貴女ですけどね!)」
って言えたら良いのに!
虹を見上げる横顔は神々しい。
聖女がいるならば、彼女のような存在だろう。
「凄い凄い! お兄さんなにしたの!?」
「ふん、汚い空気に耐えられなかったから浄化したまでだ。それで、兄とやらはどこに行ったかわかるか? 何か、気になる単語はなかったか? それと兄の名前は何だ?」
「えっと、確か闘技場がどうたら言ってたような。お兄ちゃんはカイトっていうよ!」
「わかった。とりあえず、次は転ばないように気をつけろ」
「えっ? えっ?」
「早く行け……ただ、次はないから覚悟しろ」
「は、はいっ!」
小さい男の子は逃げるように立ち去る。
とりあえず買い物の気分ではない。
「さて、行くか」
「……助けに行くのですか?」
「元を辿れば我々皇族の責任だ。あんな小僧がやせ細って、盗みをしなくてはいけない現状がな。全く、地位があるものには責任が伴うというのに」
「……私と同じ考え……まだ何もかも諦める前の……」
「ん? 何か言ったか? ……やはり甘いと思うか?」
「い、いえ! その……私は好きです」
……ァァァァァ!?
脳内で、最後の言葉だけが反芻するのだった。
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