第7話 決定打
キンッ!
「アウト!」
「あっ...」
6番に代打の一輝の打席から1番の御手洗まで
打席は回ったが、御手洗のレフトフライで
この回は終了した。
この回2点を取った桑山ボーイズは6回の表守備
に入る。
「代打の星がそのままキャッチャー、日野の代打
坂本に変わって投手天野です。」
高島コーチがメンバーチェンジを審判に告げた
「ふぅ〜。」
息を吐きながら防具をつけていると
先程俺のセーフティスクイズで生還した山下さんがこっちにズケズケ向かってくる。
「いっきぃ〜。おめぇ俺に走らせるとはいい度胸してんじゃねぇかよぉ〜。」
「え、あ、ありがとうございます?」
ファールの後、3塁の山下さんに目で合図をした時の事だろうか?
「意図を理解して走っていただいたので
やりやすかったです!」
「ふん!悪くねぇ野球IQだ。
あと2回お前ら若造バッテリーでキチッと締めろ!
レフトなら何打たしても止めてやるからよぉ〜」
「ありがとうございます!」
(山下さん、口荒くて怖ぇけどいい人だな...)
そんな風に俺が思いながら防具をパチパチとつけていると焦斗が声をかけてきた
「一輝、ナイスバッティング。」
「おぉ。さんきゅ。セーフティだけど」
「久しぶりの実戦で俺の球取れるか?」
「なめんなよ!
こっちはいつでもばっちこいなんだよ!」
焦斗はフッと少し笑い、マウンドに走っていく。
「相手は2年だ。とはいえうち相手に出てくる様ならば、今年の夏も投げる可能性は高い。
今日負けるにしても、揺さぶりをかけて
夏に繋がるダメージを与えるぞ!」
瀬田ボーイズの監督が円を作り話している。
チームは全員耳を傾け作戦を練っている。
が、一人不貞腐れた様子で話を聞く者がいた。
瀬田ボーイズ2年喜田だ。
(今日負けても夏に繋がる揺さぶり?
舐めてんのかこのおっさん。
そんなんだからこんな点差つけられてんだろ...!
星、天野には死んでも負けたくねぇ。
次の打席、俺一人でも...!!)
「ボールバック!セカンド行きます!」
一輝が声をかける。
「よし!2番の河本からだな!行ってこい!」
同時に瀬田ボーイズの監督が2番の河本の背中を押しながらそう言った。
「プレイ!」と審判が声を上げる
(2番の河本さん。今日はセーフティ失敗と
センターフライだったな。)
スゥー...ググッ!
焦斗が足を上げる
ボッ!! パァァン!
初球、インローにストレートが突き刺さる...
相手ベンチがどよめく。
「に、2年にしては速いな...」
「130中盤くらい出てるんじゃねぇか...??」
ビリビリと伝わるボールの威力、
乾いた音が出たキャッチャーミット。
そして試合の緊張感。
(懐かしい。俺は戻って来れたんだな...!)
ググッ ボッ! パァァン!
あっという間に三振に切り伏せる
続く3番の岡は今日ヒットを1本打っている。
そんなのお構い無しにと焦斗は再び三振で
抑える。
「ナイスボール!球走ってるぞー!」
そう言いボールを返すとツカツカと歩いてくる
次の打者。
「よぉ。星、お前も天野も調子良さそうだな...」
「喜田...」
「だが俺はこのままじゃ終わらねぇ!
なんでも来てみやがれ!!!」
ググッ...ボッ! キィィン!
打った球はものすごいスピードでライトフェンスに激突...だが引っ張りすぎた為ファールとなった
ボッ! カァーン!
ボッ!キィーーン!
2球ともいいボールだが喜田は狙い球を決めてるようにカットしていく。
「焦斗おっけー!焦らずこい!」
一輝はそう声をかけ腰を下ろす。
サインを出しボールが2球逸れ、カウントは2-2
(天野がここで俺をみすみす出塁させる訳がねぇ...
勝負は次の球!インハイストレート!)
ググッ ボッ!
(来た!)
喜田の読み通りインハイにボールが来る。だが
(なっ、速っ、)
ブォン!! パァァァン!!
豪快なスイングは空を切り三振に倒れる。
「ストライク!バッターアウト!チェンジ!」
審判がコールをすると焦斗は何事も無かったようにマウンドを降りていく。
(は、速ぇ!前の打者よりも全然速い。
140近く出てるんじゃねぇか?!)
バッターボックスに立ち尽くす喜田と同様に
相手チームの監督も冷や汗をかいていた。
(な、なんて事だ...春は投げていなかった2年生の
投手がこんなボールを投げるとは...
練習試合で投げるということは隠している訳でもない。怪我でもしていたのか?!)
「焦斗〜ナイッピー」
「ん。」
とんっ...とグローブを合わせる2人。
「一輝、なんで前の打者に全力で投げさせなかったんだ?喜田を警戒してたのか?」
「ん?あぁ。警戒してたよ。それよりも
あいつに最高の空振り三振をして欲しかったから。勝ち筋作って欲張らせた。
ああいうのにはこれが一番良いからな。
夏に繋がる揺さぶりってやつ??」
(けっこーえぐいことするなぁ...)
会話を聞いてたチームメイト全員がそう思った。
キンッ!キンッ!キンッ!
2.3.4の連続安打で満塁となり、続く5番柴田は
セカンドフライに倒れる。
「うし!行くか。」
ネクストで待機していた一輝に再び打席が回る。
(7回表、1アウトランナー満塁、11-0の大差...
んでピッチャーは焦斗。
ここらで打って夏に勝てないと思わせる為には...)
チラリと高島コーチの方を見る一輝。
「決めてこい。」そう首を横に傾ける高島。
ビッ! 初球インコースに真っ直ぐが来る。
カァァン!! ドムッ!!
打った打球はセンターフェンスを超え
満塁ホームランとなった。
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