第5話 試合の朝
ブン! ブン!
朝5:00まだ少し暗い時間帯の公園に
一定のテンポで空を斬る音が聞こえる。
「おは〜...」
「おー」
まだ少し眠そうな結が公園で素振りをしている
汗だくの一輝に声をかける。
毎朝2〜3km程ランニングをするのが日課だ。
結と焦斗が来る前はいつも
バットを振ってる一輝。
「今日も焦斗は一人で走ってんの〜?」
「おん。公園の前一瞬通ったよ。」
「うちらのペースに合わせるのが
嫌なんだろーねー」
「いや、俺らっていうか
結のペースが遅いからだな」
「そもそも男子中学生と毎朝一緒に走る女子
なんて居ないから!!」
「じゃぁーなんで着いてくんだよ。あと10本くらいで終わらせるからストレッチしてて」
「あーい」
トットットッ
素振りが終わったあと2人は公園から飛び出し
走り出した。
「そういえば今日の相手ってどこなん?」
「瀬田ボーイズ!春の大会準決勝でやったとこ。
6-1とで勝ったところ」
「瀬田か〜。
準決ってことは全国は出てないんか。」
「でもすっごい強くてね。
手を抜いて勝てるチームじゃないよ!」
「俺は出れるかな〜
お試しでいいから使って欲しいわ。」
「スタメンはないと思うけど途中からとか?
準備して初試合を華々しく飾ってね!」
「あったり前だぜ!
その為にいつも振って走ってんだからよぉ〜!」
「ふふっ」
そんなたわいも無い会話をしていると
ドッドッドッっと。
後ろからものすごいスピードで人が走ってくる。
結が目を凝らし見てみると、それは焦斗だった。
それに気づいた一輝はスピードをあげる。
「え!ちょ、ちょっと置いてかないでー!」
結の言葉を無視して2人はゴマ粒のように
小さくなっていく。
ランニング(途中から2人は競走になってた)を終え
公園に戻ってきた2人は結が帰ってくるまで
座って話していた。
「焦斗は今日投げんの?」
「昨日の夜コーチから肩は初回から作っとけって言われた。わんちゃん投げるかも。」
「えーいいなぁー。」
「一輝とじゃないとバッテリー組みたくないって
言おうかな。」
「せっかくのチャンスだろ!
馬鹿なこと言ってんなよ」
「冗談に決まってんだろ。
誰が壁でも全力投球に決まってんだろ」
「壁...ってお前...」
そんな冗談を言ってるうちにぜぇぜぇと息を切らした結が公園に戻ってきた。
何か文句を言っていたが
息遣いでよく聞こえなかった。
6:30。朝練を終えた一輝が家に帰って来た。
「ただいま〜」
「おかえりー。
朝ごはんと弁当できてるからー。」
「サンキュー。ねーちゃん今日どっか行くん?」
「行かないー。家で勉強するー。」
ねーちゃんが家事をやるようになったのは
親父が居なくなってからだ。
いつも朝、弁当、夕ご飯を作ってくれる。
「俺今日試合だからよー。
暇だったら息抜きに来ればー?」
「行けたら行くー」
(これは来ないな。)
そう思い朝ごはんを食べる。
8:30
グラウンドに集合した。
「おはよう。」
「「「おはようございます!!」」」
監督が挨拶すると地鳴りのような声で全員が返事をする。
「今日は瀬田ボーイズと練習試合だ。
試せる事を試しながらしっかり勝ちに行く。
夏の予選も近い。全員気を引き締めていけ。
んじゃ真司。メンバー」
「はい。名前呼ばれた者は第2グラウンドで
アップ。呼ばれなかった者はここで試合準備だ。」
1.遊 御手洗(2年)
2.左 山下(3年)
3.二 武田(3年)
4.一 鎌田(3年)
5.三 柴田(3年)
6.捕 多田(3年)
7.右 島崎(2年)
8.投 日野(3年)
9.中 香山(3年)
当然だが、俺はスタメンじゃなかった。
まぁそうか。声出ししよ。
「それから増田(3年)が5回から。天野が6回から投げる。坂本(3)神崎(2)、そして星は途中代打だ。
白田(2)と山田(2)は2試合目投げるからな。
5回からキャッチボールをしておけ。」
代打!!それでもチャンスがあるのは嬉しい。
第2グラウンド
アップが終わりキャッチボールが始まる。
「いっき。この防具つけていいぞ。
いつでも行けるように準備はしておいて。」
多田さんが声をかけてきた。全然喋んないと思ったが結構コミニュケーションをとってくれる。
後ろで日野さんがじーっと見てた。
その時主将の鎌田が話しかけてきた。
「いっき。昨日入ったばかりの新人が
いきなり一軍。更にいきなり試合に出るチャンス
をもらった。このことに不満を持つやつはいると思うが野球人ならば結果で黙らせろ。
それがこのチームのルールだ。」
「は、はい!」
ニコッと笑い。鎌田が走っていく。
キャッチボールとノックが終わり
焦斗とトイレに行っていた。
「鎌田さん図体によらず優しいよな。」
「あの人勘違いされがちなんだよな。
でもいざ野球をやるってなったらすごい。」
「ベンチで勉強させてもらうわ〜。」
そんな会話をしていると後ろから声をかけられた。
「おい、お前星一輝だろ?」
「ん?」
振り向くとそこに瀬田ボーイズと書かれた
ユニフォームを着た背の大きい男がいた。
(??誰だこいつ)
「誰だこいつって顔してるな。
おい天野、教えてやれ。」
「え?どちら様?」
「元大沢オーシャンズの喜多だよ!
前回もその反応だったなてめー!」
大沢オーシャンズ...確か小学生の時やったな...
喜田?喜田っていえば下位打線でちょろちょろしてたチビだった気がするけど...
「お前チビだった喜田か?」
「そうだ。そのチビの喜田だ。て誰がチビだ!」
「お、お前大きくなったな〜。
しかも瀬田ボーイズかよ」
「まぁな。背番号もほら。5番だぜ。」
「なんで練習試合なのに背番号つけてんだ?
見せたがりかよ。」
焦斗が冷静にツッコむ。
「ふん。お前らがここに入ってくの見えたからなわざわざ着替えてやったんだよ。」
「馬鹿だろこいつ」
「んなことどーでもいいんだよ!
星、おめぇーなんで今まで出てこなかったんだよ。怪我かぁ?」
「まぁ、そんなとこだよ。」
「今日は出んのかよ?」
「代打でな。」
「差がついちまったなぁ〜。天野も前回出てなかったし。そんな天野抑えてエースから俺はヒット打ってる。お前らの栄光は小学生で終わってんのかもなぁ〜。」
なんだこいつ面倒くさ。
わかったわかったといい
トイレを後にしようとするが喜田がいい止める。
「今日俺とお前らの力の差を見せてやる。
ベンチで指くわえて見てやがれ。がはははは」
用も足さずにトイレを出ていく喜田。
焦斗に向かい俺は言う。
「あいつのことは置いておいて、俺らの力
あいつ含めて全員に見せてやろうぜ!」
「おう。」
トイレの中で俺らの闘志は燃える。
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