推し画家の突撃って夢ですか?

みずか🎼

第1話 出会い


最初に言っておくが、私は決してロリータコンプレックスではない。


ただ、娘と同じ年代の子を応援したくなるだけ。



まあ、そりゃあ昔から童顔が好きだったし、笑顔の優しい可愛い子がタイプなんだけど、少女に興奮するような性癖はもってない!


10年も前に別れてしまった妻と娘が会ってくれるのは、月に一度養育費を渡す日だけ。


食事をしてお金を渡すだけの関係。


それだけでも縋りつきたくなるくらいに、私は家族のことが大好きだし、正直一人では寂しい。



もしかしたら若い子たちから寂しさを埋めてもらっているのかもしれない。



国民的アイドルには会いに行くほどの情熱はないけど、まだ芽を出してない若い女の子や男の子を応援することは楽しいし、生き甲斐になりつつある。


娘にできないことを、そこで補填してるのかもしれない。



歌い手や作家など、色んな子を応援しているけど、中でも応援している″推し″とでもいえる存在の子は……。


私は退社後の帰路に着く、マンションのエレベーターの中で家の鍵を探し、手に取って目の前に持ち上げるとキーホルダーを眺めた。


私の心を癒してくれる、とある画家の子が描いた絵をキーホルダーにしているもの。


何度彼女の絵に励まされたのか、分からない。


個展にも行くし、ネット上で販売されている商品は全て買っている。


家の中にはたくさん彼女の作品が飾られていて……


「えっ!?」


私は自分のマンションの一室の前で、扉を背もたれに床に腰を下ろしている少女を見つけて、つい大きな声を出してしまった。


少女は私の声に、閉じていた瞼をあげて、私をぼーっと見つめた。


「えっと、あの、どちら様で……?どうしてここへ……?」


一瞬娘が会いにきてくれたことを期待したが、同じなのは背丈くらいで、全くの別人だった。


なら、なぜわたしの部屋の前に見知らぬ少女が!?


「……いた……」


「へ!?」


「おなか……すいた……」


虚な目をして、少女が力無くそう呟いた。


脱水症状でも起こしているのだろうか。


心配になった私は


「水、もってくるから待ってて!」


と言って少女の肩に腕を回し、ドアを開けるために彼女を移動させようとした。



「あっ……力が入ら……倒れる……」


そうしたら、なんと、少女が私の胸の中に体重を預けて両腕を私の頭の後ろに回してきた!


ふわっと髪の毛から甘い香りがして、ムニッと柔らかい感覚が胸に広がって、思わず息を止めた。


少女に抱きつかれている!?


「待って!待って!犯罪になるから!」


こんな場面を同じマンションの住人に見られたらたまったもんじゃない、と思うのに、なぜか私の腕に力が入らない……。


「わたし……こう見えて18だもん……大丈夫だから家入れて……死んじゃう……」


「そっそれは大変!わかった、救急車も呼ぶから、まずは水分を摂ろう?」


18歳以上なら大丈夫という問題ではないかもしれないが、命に関わることかもしれないし、私はひとまず彼女を部屋にいれることにした。

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