僕が彼女を好きになるたび、世界が破滅に近づいてるかも!
桃田ほがらか
第1話 世界の敵になってるかも
小さいころは、ヒーローに憧れていた気がする。
宇宙人の侵略に気づいて人知れず世界を守る、そんなヒーローに。
しかし、どういうことだろうか。
気づけば僕は、世界の裏切り者になっていた。
「ねぇ、有本。スマホの暗証番号教えて」
澱みもない、波もない、奇跡みたいに透き通った水のような声で、僕の大大大好きな激マブ少女、
家族でも恋人でもそんな個人情報を明け渡すわけにはいかない。
「1222です!」
しかし、僕はそんな危惧などすぐに捨て去って、家族でも恋人でもなんでもないこの少女に二つ返事で承諾した。
「ふふ、私の誕生日なんだ。ウケる」
口では「ふふ」と笑い声のような反応を見せているし、口元は笑っているが、なぜかそれが嘘くさく、目なんてまっすぐ僕を観察していて、笑っているようにはとても見えない。
何を考えているんだろう?本当にウケてくれたのかな?なんで僕の暗証番号聞いたの?そんなミステリアスな彼女のことで頭がいっぱいになってしまう
悠里ちゃんとは付き合っていない。一世一代の告白の末、見事に僕は玉砕したから。
しかし、そんな世界で一番暗い闇の中に落ちた僕に、闇につき落とした張本人から蜘蛛の糸が垂らされた。
「週一で会ってあげても良いよ。その代わり、私の質問に何でも答えること」
よくわからない条件付きで、なんと、週に一回二人きりで会う許可をいただいたのだ!!
悠里ちゃんに隠すことなんて何一つない! 過去のバカな失敗でも、なんでも答えるぞ! そんな風に気合をいれて挑んだ第一回目。
「身長は何cm?体重は?握力は?風邪を引いたことある?病歴を教えて?」
急にカルテでも作られたのかと思った。一応言っておくと、僕らの学部は一切医療とは関係ない学部だ。
一体何の目的で?と聞いたら「貴方からの質問に答える義務はないよ」と切り捨てられてしまった。
冷たいけど、そんな我儘も言うんだな。かわいい。もっと知りたいな。仲良くなったらもっと自分のことを教えてくれるのかな。当時はそんなことを考えていた。
今思えば、僕はこの時、既に、間違いの第一歩を力強く踏み出していた。
その後も、彼女は逢瀬のたびに淡々と僕に問う
「私のどこに魅力を感じたの?」「人から騙されたことはある?」「赤ん坊の頃のエピソードを教えて」「母親の年齢は?」「父親の体重は?」「兄弟はいる?」「目、よくみせて」「血、流してみて」
僕は「そんなに僕のことが気になるのかな~興味持ってもらえてるってことだよな~」と浮かれ気分で彼女の質問にホイホイと答えていた。
まさか、僕の答える言葉、一つ一つが、世界を滅亡に近づけているとも知らず。
だって彼女は
――地球を侵略しに来た宇宙人なのかもしれないから。
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