第6話「五十名の遠征部隊、スーパーを侵略。」

「総勢五十名の遠征部隊が来る」


 その言葉がツトムの頭に残ったままの十分後。


 ついに、その“軍勢”が到着した。


 店の自動ドアが開き、そこから現れたのは巨大な盾を背負った戦士たち、魔力の渦を纏った魔術師団、弓を構えたレンジャー隊、神官、ドワーフの料理長まで。


 ツトムは思わず言葉を失った。


「……え?なんでスーパーの入り口が軍隊の入城みたいになってんの?」


 先頭の隊長が大声で命じる。


「これより補給に入る!全隊、購入品の確保を急げ!」


 ツトムは叫んだ。


「いや買い物は“確保”じゃなくて!

 普通に選んで買うだけだから!」


 店内に入った瞬間。


ピンポン♪

《大量来客を感知。混雑対策モードへ移行します》


 ツトムは頭を抱える。


「お願いだから余計なことするな……!」


 店内が勝手に変形し始める。

 棚の間隔は広がり、カートは高速化し、

レジの表示は真っ赤な警告ランプに。


 遠征部隊の冒険者たちは感嘆の声をあげていた。


「通路が広がったぞ!」 「カートが速く動く! 魔法か!?」 「すごい……これが魔導商店!」


「違う!! 混雑対策だって言ってるだろ!!」


 肉コーナーでは、すでに陣形を組んだ戦士団が動いていた。


「隊長! この“和牛すき焼き用”……強そうです!」 「魔力を感じる……高級品だな」


「すき焼きの肉に魔力はない!! 高いだけ!!」


 前衛は肉を守り、後衛は値札を読み、神官は割引シールを探して祈っていた。


「割引シールに祈るな!」


 調味料コーナーでは魔術師団が暴走していた。


「この“しょうゆ”……魔力触媒では?」 「“みりん”は甘い魔素を帯びているぞ」 「あっ、“ごま油”を嗅いだら……神気を感じる……!」


「感じなくていい! ごま油はただ香りが強いだけ!!」


 レジ前の列は今までで一番長かった。

 ツトムの腕は勝手に高速でレジを打ち続けている。


ピッ、ピッ、ピッ、ピッ!


 後ろから大量の食材を積んだドワーフ料理長が声をかけた。


「店主どの! この“オージービーフ”は本当に牛か?魔獣の肉ではあるまいな?」


「普通の牛です!!」


「よし、二十パック買う!」


「遠征何日!? そんな食べるの!?」


 その後ろの兵士のカゴにはカップ麺が山盛りだった。


「この“しょうゆらーめん”、士気が五倍上がる!」


「どこの軍事評価!? 効果おかしいだろ!」


 一時間後。


 遠征部隊は大量の食材と日用品を抱え、大満足で店を出ていった。


「店主殿! 我らは救われた! 次の補給も頼む!」


「頼むから来る時は分割で来てくれ……!」


 すると、天井から無慈悲な案内が降ってきた。


ピンポン♪

《補給拠点としての評価が上昇しました。

 明日より“冒険者割引デー”を自動実施します》


「だから客を増やすな!!!」


 地獄のピークタイムは、まだ終わらない。

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