【超短編】付喪神も行きて倒れる
師走も半ばになったというのに、その日はコートが不要なぐらい暖かかった。
「昨日の天気予報で言ってたわ……10年に一回、あるかないかの暖かさなんだってさ」
俺の彼女は暑がりだ……つまり冬に強いし好きってこと。それにしても半袖のポロシャツの上にスタジャン着るっていうセンスは如何なものかと。
「なんか言った?」
「いや、なんにも」
俺は目を背けた。まぁ今年の冬は急に寒くなったかと思ったら暖かい日が続いたりで、気温がやたらと不安定なのだ。
「全く、暖かくなるならもう少し手心ってもんが……んん?」
彼女の足が止まった。
「どうした?」
「……あれ見て」
彼女の指差した先を追う。
「子供が倒れてる」
俺がぼそりと呟くより早く、彼女は駆け出していた。慌てて俺も追いかける。
「君、大丈夫!?」
彼女が子供の肩をそっと持ち上げ、頬を撫でた。
「こいつ……」
いくら暖かい日とはいえ、半袖半パン。正直冬を舐めているとしか思えない。
「ひ、ひとまず暖かくしてやらないと」
「待って!!」
俺が着ていたコートを子供の身体にかけようとした手を掴んだ。
「この子、そうじゃない……違う」
「何が違うんだよ」
「……そこのコンビニでアイスクリームでもなんでもいいから、冷たいもの買ってきて!」
「はぁ!?」
正気か? そう聞こうとして彼女の顔を見た瞬間、俺は言葉を失った。
──真顔だ、それも一番ヤバい目をしている
俺は黙ったまま立ち上がり、コンビニへ向かった
────────────────
「……」
俺の目の前には今、さっきまで青い顔で倒れていたとは思えない、艶のある顔色で元気に立っている子供がいる。
「あんだけ冷たいものを食ったのに、ピンピンしてやがる……どうなってんだ」
「いいのよ、この子はそういう子だから」
彼女は近くの薬局で買ってきた、額に貼る冷却シートを子供に手渡した。
「なんで倒れてたかは聞かないけど、危ないと思ったらこれで凌いでね」
子供がこくりと頷き、笑った。
「おいおい、そんなので耐えれるのかよ」
「大丈夫、だってこの子は……」
彼女と一瞬目を合わせ、子供に戻した──と思ったら、子供の姿は消えていた。
「えっ!? ど、何処にいったんだ!?」
俺は周囲を見渡したが、子供は何処にも見当たらない──まるで、最初からそこにはいなかったかのように。
「さっきもいったじゃない。そういう子だから、大丈夫」
「大丈夫って……お前、あいつが誰か知ってるのかよ」
俺の疑問を聞いて、数秒押し黙った彼女の口が開いた。
「……冬小僧」
「は?」
「冬小僧、そういうことよ」
──冬小僧
彼女がそう口にした次の瞬間、冷たい北風がびゅーっと吹き荒れた。
〜 了 〜
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