【超短編】「冬小僧の足跡」

「……あった。これはあの子のものだ」


 実家の裏にある枯れ井戸。手押しポンプを覆い隠すように生い茂った雑草の脇に、子供の足跡がついている。


 近寄ってみると、足跡の周りの土は凍て付いていて、ちょっとやそっと踏みつけたりするぐらいで足跡は消えそうにない。


──いつもより早く雪が降りそうだね


 この足跡を見つけたら、数日以内に雪が降る。母親にそう教えてもらってから、この時期に彼の足跡を探すようになったのだ。


「あの人のところにも足跡をつけていったのかな」


 随分前に別れた、私のかつての想い人。足跡の話をしても信じてもらえなかったけど、ついこの前、SNSでふと見かけた画像はまさに「あの子」の足跡だった。


 あの画像を撮った人が、かつての想い人だったのかどうかは知るべくもない。


 それでも、そのような画像を見るたびに私の胸には、甘くて切なくて、時には辛い想いが蘇ってくるのだ。


──哀しきは 夢の足跡 ちはやふる



〜了〜




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