3章 ライルの謎 5
暫くして、ようやく彼の治療が終わった。
因みに、マカ先生にも検査して貰った。ある程度の事情は誤魔化しながらも、事の経緯を伝えてみたが頭や身体の何処も大事には至ってないらしい。ただの掠り傷程度で収まっていたようだ。
とりあえず私は、心の中で安堵の息を吐いた。
「ねぇ、ライルちゃん。…さっきの話の続き聞いてもいいかしら?」
しかし、その後にもマカ先生は喋りだす。もう一度、ライルへの質問をし続けようとしているようだ。
「ほら、ライル。…大丈夫なら、ヴィシュー殿下が探してたでしょ。」
すぐさま私も大きな声で告げながら、再びライルの手を掴むと、さっさと扉を潜り抜けて、部屋から脱出していく。
「あぁん、もう。…カレンナってば、…仕方ないわね。…いいわん。…ライルちゃん、またいらっしゃいね。」
去り際にも、マカ先生の声が聞こえてきた。廊下を進む度に遠ざかっていく。
そのまま私達は、早足の状態で元来た道を戻る様に、廊下を進んでいくのだった。
「あ、あの。…治療していただき、…あ、ありがとうございました。」
その途中で、ライルが話しかけてきた。また躊躇いがちな態度をしており、腰の低い素振りである。
「別に良いわよ。…」
と私は言いつつ、何気なく頭に思った疑問をぶつけてみた。
「…それよりも、ライル?…さっき一瞬だけ自然な感じに喋ってなかった?…それも凄く流暢で、なんかキラキラした様な感じの立ち振舞いしてたよね。」
「あぁ。…それは、…えっと、…。」
とライルは、一瞬だけ言い淀むと、つっかえながらも答えだした。
「…ヴィシュー様から言われたんです。…私に、怪盗をするうえで、様々な技術を身につける様に言われました。…その中で、誰かに変装をする際に、…周りに正体がバレない様に、様々な人の仕草や喋り方を真似する訓練を強要されました。…先程のは、その内の一人の真似です。」
「ふ~ん、因みに誰よ?」
と、私も聞き入りながら相槌をうち、段々と話に加わっていった。
「…えっと、人前にいる時の、ヴィシュー様です。」
「あぁ、納得。…あいつ、外面だけなら爽やかな格好いい皇子だもんね。」
「は、はぁ。…そうです、かね。」
「そうでしょうよ。…ちゃんとした皇太子だと思ってたのに、あんな性格だったなんて、幻滅したわ。…」
「は、はぁ。…。」
「…人の親友の事を、なんだと思っているんだか。…あの言葉は、…許せない。…地下室での事も、思い出しただけでもイライラする。」
「それは。…」
「…おまけに人を使って、魔法(?)を盗ませているって何?…ライルは、酷い仕打ちを受けてまで、何で怪盗をしているのよ?」
「…………。」
やがて話は確信めいた部分に、踏み込んでいく。
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