第44話
クロトは、懐から中級ポーションを取り出す。
赤い液体。
「……これを、使うのか」
ススリサーも、同じように見つめている。
「麻薬入りだ」
「ああ。中級は、濃度十五パーセント」
「初級の三倍だ」
「使えば、依存が深まる」
「分かってる」
クロトは、小瓶を握りしめる。
「でも、使わなければ?」
「死ぬ」
「オークは、初級ポーションじゃ勝てない」
「トロールは、中級でも厳しい」
「中級を使わなければ、殺される」
ススリサーが、拳を握る。
「……俺たち、嵌められてるな」
「ああ。最初から、こうなるように仕組まれてた」
クロトは、初級ポーションを使った時のことを思い出す。
身体が熱くなる感覚。
筋力が増す感覚。
そして——
「……あの時、少しだけ」
「何だ?」
「『気持ち良かった』」
ススリサーも、同じことを感じていた。
「ポーションを飲んだ瞬間、身体が軽くなって」
「痛みも、恐怖も、消えた」
「それが、麻薬の効果か」
「ああ。おそらく」
二人は、しばらく黙っていた。
「……でも、使うしかない」
クロトが、小瓶をテーブルに置く。
「明日の防衛戦、これを使う」
「そして——」
クロトの目が、冷たく光る。
「このシステムを、必ず壊す」
ススリサーは、何も言わなかった。
ただ、静かに頷いた。
「……今夜は寝よう」
「ああ。明日は、長い戦いになる」
二人は、ベッドに横になった。
窓の外。
夜のフロンティア。
そこでは、無数の開拓者たちが、同じように苦しんでいる。
そして——
森の奥では、解放されたゴブリンとオークが、繁殖を始めていた。
トロールは、獲物を探して徘徊している。
明日の防衛戦は——地獄になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます