第3話 岩盤の壁とロマンの道

金曜スペシャル

『黄金の国、再来』第三話:


​【スタジオ解説】

​コマーシャルが明けたスタジオ。モニターには、轟音を立てて山道を登る巨大な試掘機の映像が流れている。 


​朝倉 啓(MC):

「さあ、お待たせいたしました! 前回、カナダのボーリング孔の横で奇跡の反応を示したダウジングロッド。いよいよ、あの場所を1グラム2万円の夢を懸けて、掘り始めます!」


​男性芸人:

「ついにドリルですね! ロマンもいいけど、やっぱり最後は暴力的な科学力ですよ! 掘れ、掘れー!」


​女性タレント:

「ドキドキするー! 私、絶対金が出たらアクセサリーにするんです! 私の未来がかかってる!」


​朝倉 啓(MC):

「その欲の皮が突っ張った期待、しっかり見届けてください(笑)。では、試掘開始です!」



​【ロケ VTR 開始:掘削開始と突然の停止】

​(VTRは、技術者の指示のもと、重機が試掘を開始する場面から。ドリルが地面に食い込み、砂と土を巻き上げながら掘り進む。)


​橘 あかり:

「すごい! 掘ってる! どんどん奥に進んでますよ、朝倉さん!」


​朝倉 啓:

「ああ、順調だ。カナダの調査会社が掘ったボーリング孔のデータ通りなら、数十メートル下に金脈の痕跡があるはずだ。」


​掘削は快調に進み、ドリルはあっという間に20メートル、30メートルと深部へ到達する。


しかし、45メートル地点に達した瞬間、重機の唸り声が急に高まり、凄まじい振動と共にドリルが完全に停止した。


​現場監督の顔色が一変する。


​現場監督:

「ダメだ! 完全にドリルが止まった! 鉄筋コンクリート並みの硬さだぞ!」


​朝倉 啓:

「何があったんですか?」


​現場監督:

「岩盤です。予想以上の硬さの花崗岩か、あるいは金脈形成に伴う珪化(けいか)した超硬岩だ! このドリルじゃあ、もう先に進めない!」


​あかりは青ざめた顔でドリルを見上げる。黄金への道は、思わぬ巨大な岩の壁に阻まれてしまった。



​【 ロケ:ロマンと科学の融合】

​重機が静まり返る中、朝倉とあかりは岩盤の情報を確認していた。 


​橘 あかり:

「せっかくここまで来たのに……やっぱり、ダウジングなんて、ただの偶然だったのかな……」


​あかりが落ち込む姿を見て、朝倉はゆっくり首を振った。


​朝倉 啓:

「諦めるな、あかりちゃん。岩盤にぶつかるのは、むしろ金脈が近い証拠かもしれない。金を生む熱水は、周囲の岩石をカチカチに硬くする特性があるんだ。」


​朝倉はリュックから、再びダウジングロッドを取り出した。


​朝倉 啓:

「思い出してくれ、あかりちゃん。この番組は、ロマンと科学の融合がテーマです。 科学(ドリル)が壁にぶつかった時こそ、ロマン(ダウジング)の出番だ。」


​橘 あかり:

「ロマンと科学の融合……そうか! 朝倉さん、岩盤の裏道を探すんですね! よしっ! ダウジング、やってみましょう!」


​朝倉 啓:

「ああ。科学はまっすぐ掘る道を示したが、岩盤に阻まれた。だが、このダウジングは、地下のエネルギーの『流れ』を教えてくれる。この硬い岩盤を避け、金脈へ向かう地中の割れ目(ルート)を、ロッドで探してみる価値はある!」


​朝倉はロッドを構え、ドリルが止まった穴の周囲を、慎重に、まるで目に見えない水脈を探るかのように、歩き始めた。



​【スタジオ解説:技術の壁】

​(スタジオに戻る。モニターには、折れてしまったドリルの歯の画像が映っている。)


​朝倉 啓(MC):

「VTRでご覧いただいた通り、掘削は思わぬ壁に阻まれてしまいました。この岩盤、一体どれくらい硬いんですか?」


​解説(タレント):田守准教授

「これは、日本の金鉱脈の宿命と言っていいかもしれません。地質学的には、あの硬い岩盤は金鉱床の『帽子』のようなもので、その下に金脈がある可能性は高い。しかし、物理的にドリルで突破するのが難しいんです。」


​男性芸人:

「じゃあ、もう掘れないじゃないですか! 金塊は夢で終わっちゃうのか!?」


​朝倉 啓(MC):

「いいえ。そこで再び、朝倉はロマンに賭けました。ダウジングです。あの古代のツールは、硬い岩盤を避け、金脈へ続く『裏道』を見つけることができるのか?」



​【 ロケ VTR 終盤:ロッドが示す道】

​(ロケ VTRに戻る。朝倉は汗だくになりながら、集中してダウジングを続けている。)


​数分後、朝倉のロッドが激しく反応した。ドリル穴から数メートル離れた、一見なんの変哲もない地点だった。


​朝倉 啓:

「来た! ここだ、あかりちゃん! この下に、岩盤の割れ目がある!」 


​橘 あかり:

「わあ! 本当に? 掘りましょう、掘りましょう! すぐそこに金脈があるんですね!」

「次、行ってみよう。」

「あれ、私、長さんみたい?(笑い)」


​朝倉 啓:

「そうだ。技術者に確認してもらおう。このルートで、もう一度掘削をトライする!」


​(技術者が地質探査機で反応地点を調べ、わずかながら岩盤の構造に「緩み」があることを発見する。技術者はうなずく。)


​朝倉 啓:

「科学のデータが、ダウジングの示す道を肯定しました。来週、掘削再開です。岩盤の壁を乗り越えたその先に、1グラム2万円の金脈は眠っているのか!?」


​(画面が暗転し、タイトルロゴが表示される。)


​「この続きはまた来週!」

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