裸を見られた人数分だけ強くなれる陰キャJK、エロ配信で成り上がりダンジョンにて最強になる

リチャード諏訪部

第1話 覚醒の時

 ――約17年前。わたしが生まれる少し前のことだった。


 突如この世界には「歪み」が生じ、別の世界のように変貌していったらしい。


 この世界の至るところに「ダンジョン」というものが現れた。そこにはモンスターと呼ばれる魔物が出現し、彼らが落とす魔石は資源エネルギーとして大きくわたしたちの生活を潤して、大きく変化させていく。

 また、彼らの落とすアイテムは非常に高額で取引されることもあった。


 そして、ダンジョンに潜るもの――探索者は、一躍人気の職業となっていくのだった。


 というのは、本好きな文芸部員で図書委員のわたしが書物から得た知識。実際わたしにはまったく関係ない職業だろうしなろうとなんて夢にも思ったことはない。


 こうやって、図書室で本に囲まれてる時が一番幸せだ。


 ダンジョン探索者には15歳――厳密には中学を卒業すればだけど――になればなれる。

 日本ダンジョン協会が運営するギルドに登録すれば、誰でもダンジョンに潜ることが出来る。


 わたしのクラスにも、実際に探索活動を始めている同級生は何人かいたりする。

 

 ダンジョンに潜ってレベルを上げれば「ステータス」と呼ばれるものが上がり、身体能力が上がったり魔法が使えるようになるみたいだ。


 それはもちろんダンジョンの外では発揮できず、普通の人間に戻ってしまうんだけど。ダンジョン内だけでもスーパーマンになれるような快感に取り憑かれる人は多いらしい。


 わたしのクラスの子たちもそういう話をしているのをよく聞く。あくまで聞くだけ、だけどね。わたしは友達がいないから。


 やれどこどこのダンジョンに行っただとか、レベルが上がった、だとか。ファイアボールが撃てるようになったー、だとか、そういうお話。


 どうしようもないコミュ障でネクラな陰キャのわたしには遠い世界のお話だ。ダンジョンに潜れる人はカッコいいと思うししちょっと憧れるけど、そういうのは出来る人に任せたい。


 度の強いメガネをかけ直す。今日もそろそろ帰る時間かな。


 ちょっとだけ本を借りていこうか。ダンジョンに関連する本にしよう。


 *


 夜寝る前。適当に宿題を済ませたわたしは借りてきた本を読むことにする。


 なになに。


 『探索者は突然スキルを得ることもある。通常はダンジョンに入った時に天の声を聞き目覚めるのだが、そうでない時に目覚める人も稀にだが存在する』


 へー、そんなこともあるんだ。


 『そして、そのスキルは得てして希少なものであることが多く、これによりトップ探索者シーカーに登りつめた者もいる』


 ほうほう、ロマンあるねそういうの。

 だんだん興味湧いてきちゃった。わたしも行くだけ行ってみようかなぁ。


 度の強い眼鏡を外して、わたしはちょっと妄想をしながら眠りについた。


 *


 次の日曜日。

 どうせヒマだし読書くらいしかすることのないわたしは、散歩がてら近所のダンジョンへと赴いた。


 ダンジョンの前にはこの市のギルドがあり、そこでいろいろと教えられることになった。


 「はーい、次の方ー」


 25歳くらいの職員のお姉さんに呼ばれてわたしは椅子に腰掛ける。


 「本日はいかがされましたか?」

 「あ、あの……探索者登録、をしようと思って……」


 人と話すと本当に緊張してうまく喋れない。なんでこうなってしまうんだろう。


 「そうですねー。ではこちらの書類に必要事項のご記入をお願いします!」


 優しそうな人でよかった。わたしは必要事項を記入してお姉さんに渡す。


 「はい、ありがとうございます。少々お待ち下さいね」


 数分後、お姉さんからまた呼ばれる。


 「時越ときこし翔子しょうこさん、ですね? これよりあなたは探索者となります。まずは一番下のFランクからスタートですね」


 そうして、長々と……ってほどでもないけど説明を受ける。

 探索者カードを渡されると、わたしはダンジョンに案内された。


 「それでは、少しだけ潜ってみましょうか」


 30歳くらいの強そうなお兄さんが一緒についててくれるみたいだ。


 「始めまして。ダンジョンインストラクターの岩堀です。今日はよろしくね?」


 「は、はひ……」


 ちょっと噛んじゃったけどスルーしてくれた。岩堀さんと一緒にダンジョンへと潜っていく。


 わあ、ここがダンジョンか。わたしには縁のないところだと思ってたけど、なかなか魅力的かも。


 「それじゃ時越さん、ステータスオープン、と唱えてみて。はっきりとね」


 ステータスオープン、かぁ。昔読んだラノベとかによくあるやつだ。結構はずかしいんだよね。でもやらなきゃ。


 「ステータス、オープン!」


 ……すると、わたしの目に数字が映るようになった。



 時越 翔子

 ランク F 

 レベル 1

 HP 4/4

 MP 1/1

 STR 1

 VIT 1

 AGI 1

 INT 1 

 RES 1

 LUK 5

  

 スキル なし


 ……うわー、なにこれ。めっちゃ低っ!

 天の声を聞くこともなく、スキルにも目覚めなかった。

 

 「どうだったかい?」

 「えーと……HPが4、LUKが5で……あとは1でした」


 岩堀さんはそれを聞いて、複雑そうな顔をしながら答えた。


 「そっかー。さすがにそれは向いてないかもな。このままじゃゴブリンやコボルトにも倒されると思うし……というかここまで弱い子もなかなか……」


 あー、やっぱりわたし、才能ないんだ……。

 

 「……すみません。わたしもう帰ります!」

 「あっ、ちょっと!」


 薄々わかってはいたんだけど、やっぱりちょっとショックだったなあ。脇目もふらずに、わたしは涙目でダンジョンから戻り家への道を走っていった。


 *


 その日の夜のことだった。


 いつもより早く寝たわたしは、夢の中で違和感を覚える、


 「あれ、ここは、どこ……?」


 夢なのに妙に意識がはっきりとしている。これって明晰夢ってやつだっけ。


 そんなことを思っていると……女神のような女性が現れた。


 「はじめまして、時越翔子さん。私は女神セリーヌです!」

 「へ!? ほんとに女神様!?」


 女神……セリーヌ様は続ける。


 「あなた、探索者としての才能がなくてショックなんでしょう?」

 「わ、わかるんですか!? どうせ関係ない世界のことだとは思ってたんですけど、あそこまで酷いとやっぱりショックでした……」

 「そうですね、実はあなたはとんでもない力が眠ってるんですよ。それを女神たる私が教えてあげようと思いましてね」


 えっ、何それすごっ。


 「ほ、本当なんですか! お願いします、女神様!」

 「あなたの真のスキルはですね……裸を見られれば見られるほど強くなる、っていうものです! これはステータスには表示されないのでわからないのも無理はないですよね?」


 え、ええーっ!?

 すっごく恥ずかしいスキルなんだけど。


 「ほら、翔子さん? あなたの頭の上を見てご覧なさい。数字がありますよね?」

 

 わたしが頭上を見ると、0、とだけ数字が書いてある。


 「ほ、ほんとだ……いつの間に」

 「この数字が増えれば増えるほど、あなたのステータスは上昇していきます。何万人何億人単位に裸を見られたら、世界最強も夢ではありませんよ?」


 確かにこれなら、世界最強をそのうち狙える可能性はある。

 でもどうやって裸を見せるの? そもそもわたしの裸にそこまでの価値はあるの?


 「め、女神様っ!? わたしはどうすれば」

 「あら、そろそろ時間ね。その先は自分で考えることね! また会いましょう!」

 「ああーっ! 待って!」


 女神様は消えて、わたしは目が覚めたのだった。


 *


 さて、これからどうしよう。

 大量の書物から得た知識を脳内でフル動員する。


 裸を見られればいいとはいっても、片っ端から露出していけばただの痴女、犯罪者になるだけだ。


 となれば……やっぱりアレかな。

 わたしの裸を動画に撮って、配信する方法だ。これなら多くの人に見てもらえるはず。


 陰キャな眼鏡女子のわたしだけど、胸の大きさと肌のきれいさにはかなり自信はある。顔さえ隠せば結構需要はあるはず。問題は、顔を隠した状態でもスキルの効果はあるのかってことだけど。


 ああ、でも怖いなぁ。裸を見られるのも恥ずかしいし、学校とかにバレたら退学になるのは免れないよね。


 でも背に腹は代えられない。これだけのチャンスを得ることができたんだ。

 わたしは次の土曜日を作戦決行日に決めるのだった。


 *


 「こ、これでいい、かな?」


 今、家にはお父さんもお母さんもいない。

 わたしは部屋ですっぽんぽんになる。


 「あー、緊張するぅ」


 わたしは顔を隠しながら体にスマホカメラを向けて、動画を撮っていく。


 ムダ毛もちゃんと処理したし、大丈夫。


 一通り撮り終わると、わたしは19歳と偽って動画サイト「MB6動画」に投稿した。


 「あー疲れた。ちょっと休もう」


 ……………………。


 少しの昼寝から覚めたわたしは、頭上の数字を見る。


 「う、うそ……?」


 わたしは驚きを隠せない。その数字は300を越えて、まだまだ上昇し続けるのであった。

 

 


 

 

 

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