本物偽物
そこからの営業は怖いほど順調だった。
クセの強い客はくるがホストクラブにはまあまあ来るので問題はない。
明らかにこちらを見下したおっさん客を除けば…
「てかさー、ホストって女に媚び売って金稼いでて男として恥ずかしくないわけ?笑」
「あはは…そうですね、姫に楽しくお酒を飲んでもらって喜んでもらうのが仕事なので恥ずかしくはないですね…」
「あー、なんか俺とはちょっとランクが違うみたいだねぇ…ほら、見なよコレ、ロ○ックスだよ?俺が若い頃はさぁ…」
「あはは、ソレハスゴイデスネー」
(クソ老害が…俺が若い頃はさー話はまぁいいよ…年上は大体言うしな、でもランクが違うって何??違うのは俺とおまえの顔面のランクだろうが!若いキャバ嬢ときたからってイキリやがって)
「てか、ホストって若ければ誰でもできるんでしょ笑
楽そうでいいわー」
「あはは…ソウデスネー」
(じゃあおまえがやってみろやクソが)
内心ではおっさん客にイラつきながらもなんとか返事を返すカオル。するとカオルの卓に黒瀬が座ってきた。
「黒瀬さん?」
「何?なんか来たんだけど笑、俺客だけどなんか文句あんの?笑」
「いえいえ!今ね見てたんですけどそのロ○ックス…めっちゃカッコいいなーって思いまして!」
「だろ?おまえは話わかるじゃん笑
なんか今いるやつすごい売れてるとかこの子達が言うから来たのに全然で笑
お兄さんのほうがよくね?笑」
カオルはこいつぶっ殺すと思いながらも笑顔を浮かべてなんとか客が帰るまで耐えようとする。
「いやーカッコいいなー!ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「まぁ笑本当の金持ちが買う時計見たいよな笑
傷つけたらおまえらが一生働いても返せない額だから気を付けろよ笑」
「ありがとうございます!…いやーやっぱ本物の金持ちとなるとも違いますね!」
「まぁな笑」
「本物の金持ちともなると偽物つけるんですね!」
「「「は?」」」
キャバ嬢とカオルの顔が何を言ってるかわからず放心。まるで宇宙猫である。
「は?!に、偽物じゃねーし!証拠もないのにデタラメ言ってんじゃねーよ!」
「いや…針の動きもおかしいし、文字盤も本物と全然違うし…ていうかロ○ックスの王冠のマークついてねーじゃん笑」
ここでキャバ嬢が参戦する。今まではあくまで金持ちの太客として接していたが細客と見るや否や攻撃し始める。
「…うわ、だっさ」
「なんかおかしいと思ったんだよねー、店でも鏡○しか頼まないしー」
「カオルくん、ごめんねぇ」
「うんうん!なんか変なの連れてきてごめーん」
「…大丈夫ですよ。まぁでもそろそろお帰りになっていただいた方がいいかもしれません。
僕らとはレベルの違うお客様にはうちの安酒は合わないですよね?」
「今日の時計はその…そう!すり替えられたんだよ!探しに行くから今日は帰る!」
その後キャバ嬢も20分ほどで帰って行った。
「黒瀬さん!ありがとうございました!」
「いいって、俺も聞こえてきてムカついたしさ」
「いや…マジで黒瀬さんいなかったら爆発してだかもしれないっす!マジかっこよかったです!」
「…カオルも本物と偽物軽く見分けるぐらいはできるようになっとけよ?」
「そうですね、ブランドが本物か偽物かわかれば接客も変わるだろうし…」
「いや、まぁそれもあるが人間の本物か偽物かだ」
「人間の?」
「あぁ今の客はロ○ックスみたいな大きめの時計つけづらそうにしてたし、時計焼けもしてなかったからおそらく普段腕時計してないんだろ…あとネクタイも雑でスーツも安物だったしな」
「…黒瀬さん」
黒瀬がドヤ顔で説明し始める。
「まぁな俺レベルになるとこのぐらいはわかるように…」
「凄すぎてちょっと引きます…」
「なんでだよ!?」
「嘘っす!でもマジすごいっすね」
「No.1は顔だけじゃないって事よ…じゃ卓戻るわ」
「あ、ありがとうございました!」
それだけ言い残して黒瀬は自分の卓に戻って行く。
黒瀬レンカオルのいるクラブでNo.1は伊達ではない。
「審美眼もNo.1には必要か…もうすぐNo.1だと思ったけど甘かったな」
まだまだ自分に足らないものがある事を再確認しながらカオルは接客に戻って行った——
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