Part2

 着きましたわ。港。

 長く苦しい旅路でしたわね。


「お嬢様は馬車の中で寝るだけでしたけれどね」


 贅をつくした高級馬車ってマジ最高ですわ。ぜんぜん揺れないしちょー早いし、音楽もかけられるし車内でビールも冷やせるんですのよ!!


「カットしておきますね」


 なんで!?


「なんか腹立ちました。それでは……魔動ビデオ再開」


 ドラクロワ・D・サミュエリッター公爵令嬢ですわ~ッ!!!!!

 で、港町ですけどどうしますの?

 曇ってますわね~。

 なんか愚民どもの表情も暗いし魚くせぇですわ。くっせぇ。マジくっせぇ。


「港町ですので、匂いは我慢してください。

 表情が暗いのは……」

「お貴族さまぁ!」


 誰ですの!?


「あっしはこの港の網元でごぜぇます!」


 あみもと?


「……漁師のまとめ役です。えらい人ですね」


 わたくしよりも!?


「流石にお嬢様の方が偉いですね」


 勝ちましたわね。風呂入ってきますわ。


「おねげぇです! 騎士団を! 騎士団を動かしてくだせぇ! クラーケンが暴れてるせいで、街はもう……おねげぇです! あっしの命を差し出したってかまわねぇ! ですから、うちには女房と小さい子供が……」


 じゃあ騎士団動かすかぁ


「お嬢様。騎士団の運営費は既に計上済みです。税金対策になりません」


 ほなダメかぁ。


「そこでメンチョスコーラです」


 なにッ!?




「まずメンチョスを2トン。

 そしてコーラを5トン。

 これを船で運び、クラーケンにぶち込みます。

 するとあら不思議。動画が盛り上がり、クラーケンが死にます」



 お菓子とジュースの単位じゃねぇですわね。


「お嬢様……と、トンが分かるのですか……!?」


 馬鹿にしないでくださいまし!

 トンは重さの単位ですわ!


「どのくらいの重さ?」


 とん。


「……うん! 流石ですお嬢様!」


 でしょう。そうでしょう。もっとほめたたえても構いませんわよ。

 で、その……何トンかのコーラとメンチョスはどこですの?

 というかどうやって船に積むんですの?


「買います。人手も、船も、コーラもメンチョスも」


 だれが?


「お嬢様が」


 ……?








 お小遣いぜんぶ無くなりましたわ!!!!!!


「これが税金対策です。お嬢様」


 税金対策ってお金が無から生まれるんじゃありませんの!?

 テレビでそう言ってましたわよ!!!


「今回は経費として使う、という名目ですので……一旦使わないとお金は減らないんですよ、お嬢様」


 ぐぎがごごぎご。


「さ、見てくださいお嬢様。

 愚民どもがコーラとメンチョスを船に積み込んでいます。

 明日の朝には出航できるでしょう」


 ……まぁ、クラーケン倒せるなら別に良いですわね。

 それじゃあわたくしはおうちに帰ってマッサージしてもらってゲームしてポテチ食べてお風呂入って寝ますわ。

 メイド!

 馬車を出しなさい!


「お嬢様」


 なんですの?





「お嬢様が船を持っていくんですよ? クラーケンの所まで」




 ????? 

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