手繋ぎ鬼
白雪 愛琉
第1話
登場人物設定(鬼含め8人)
1. 日向(ひなた) 14歳 ― 主人公
• 中学2年生。転校してきたばかり。
• 共感力が強く、誰かの痛みに敏感。
• 町に漂う不穏さや「手を繋ぐ影」に最初に気づく。
• 過去に“自分も親と離れて暮らしていた時期”があるため、
鬼の孤独に直感的に共感してしまう。
• 真相を追ううちに鬼に狙われる存在となる。
2. 佐伯 透(さえき とおる) 15歳 ― 主人公の同級生
• 明るく快活だが、過去に妹を事故で失っている。
• 「人は急にいなくなる」という恐怖を抱え、
失うことを極端に嫌う。
• だからこそ日向を支え、危険でも共に動く。
• 失った妹と“鬼の子供”を重ねてしまい、
途中から鬼に心を動かされる。
3. 白石 結子(しらいし ゆいこ) 14歳 ― 友人
• 学校で噂話に詳しく、情報収集が得意。
• 小さな怪異や“昔の遊び”について調べる役。
• コミカルな一面で重いストーリーの緩衝材。
• 終盤、鬼に一時的に捕まり「列の一番後ろ」に立たされる。
4. 霧島 航(きりしま こう) 17歳 ― 不良っぽい先輩
• 地元の子で、手繋ぎ鬼の噂を昔から知っている。
• 兄が行方不明になった過去があり、
その兄が「最初の鬼の子」と関わっている。
• 荒っぽく見えるが弱い子を守るタイプ。
• 過去編へ繋がる重要人物。
5. 三輪 美鈴(みわ みすず) 35歳 ― 鬼の子の母
• 過去編の中心人物。
• 貧困・DVから子供を守るため、
一度だけ手を離さざるを得なかった。
• その後すぐ迎えに行くつもりだったが、子供は行方不明に。
• 真実を誰にも言えなかったまま、今も後悔を抱えている。
6. 三輪 凛(みわ りん) 7歳
• 謎に包まれた存在。
• 最期に母の手を離されたと思い込み、現世に残る。
• 本当は甘えん坊で、母が大好きだった。
7. 白石 晴臣(しらいし はるおみ) 42歳 ― 結子の父で新聞記者
• 過去の行方不明事件を調べていた人物。
• 当時の取材ノートを保管しており、
日向たちが真相に辿り着く大きな鍵となる。
• 町が隠したかった“消された記事”の存在を知る。
8. 神野(じんの) 校長 58歳
• 当時の事件を知っていながら沈黙してきた人物。
• 母親・美鈴を責める世間から守るため、
事件の一部を封印した。
• 罪悪感と守りたい思いの間に揺れている。
• 最終章で真相を告白する。
【序章】
——手を離したのは、誰だったのか。**
夕暮れ。校庭。
風に揺れるブランコが、きぃ…きぃ…と音を立てている。
日向(ひなた)は転校初日の帰り道、校舎裏で“それ”を見た。
──誰もいないのに、手を繋いだ子供たちの影が地面に伸びていた。
六つの影。
ゆっくり歩きながら、何かを探すように校庭を横切っていく。
影の先頭だけが、ぽたり、と涙を落としたように揺れた。
日向は息を飲む。
影たちはふと立ち止まり、
“誰もいないはずの空間” で、まるでこちらへ手を伸ばすように見えた。
その瞬間──風が止む。
「……離さないから。」
どこからか、幼い子の声がした。
日向は駆け出した。
逃げながら、胸の奥に冷たい感覚が広がる。
“この町は何かがおかしい。”
本能がそう告げていた。
第1章 『手繋ぎ鬼の噂』
新しいクラスで、
佐伯 透(さえき とおる)が日向に声をかけてきた。
「お前、昨日…校庭にいたろ? 見たんだろ」
ドキッとして誤魔化す日向に、結子がスマホを見せる。
そこには夜の空き地で撮られた写真。
誰もいないのに――子供の手形が土に点々と続いている。
結子が小声でつぶやく。
「最近、流行ってる遊びがあるの。
夜だけ現れる“手繋ぎ鬼”。
捕まったら…そのまま鬼の列に加わるって」
日向は昨日の影を思い出し、震えが走る。
第2章 『最初の失踪』
週明け。
近くの児童が“少しの間”行方不明になったニュースが流れる。
帰ってきた時、
彼の手首には“子供の小さな指跡”が、赤くくっきり残っていた。
「離してくれなかったんだ…」
怯えたその子はそう言い、そのまま泣き崩れた。
日向は決意する。
この遊びはただの噂じゃない。
調べなきゃ、誰かが本当に消える。
その頃、霧島 航(不良先輩)が日向を呼び止める。
「この町のことに首突っ込むな。
……兄貴の時みたいに後戻りできなくなるぞ」
その瞳は怯えていた。
第3章 『影の列に触れた夜』
夜。
日向たちは空き地で“影の列”を目撃する。
子供の影が六体。
列の最後だけ、小さな体が震えている。
透が囁く。
「……泣いてる?」
次の瞬間、その影が“こちらに向かって”走り出した。
影は日向の腕を掴もうと伸びる。
ぞわりと冷たい手の感触。
その時、風が巻き起こり影がほどけた。
まるで何かに怯えて逃げるように、暗闇に溶けていく。
日向の腕には痣のように小さな指跡が残っていた。
第4章 『三輪という名前』
結子の父・晴臣(新聞記者)の古い取材ノートから、
ある名前が浮かび上がる。
三輪 凛(みわ りん) 7歳。
——15年前に行方不明になった少女。
この子の消失から全部が始まった。
凛の母・美鈴は当時、
警察も、町の人間も、みんなが「語ろうとしなかった」存在。
透がぽつりと言う。
「幽霊とかじゃなくて、
あれ…“誰かを探してる子供”なんじゃねぇのか?」
霧島航は沈黙し、
「兄貴も…三輪って名前を言ってた」と呟く。
日向の胸が痛む。
“親と子のすれ違い”の匂いが強くなる。
最終章 『鬼に選ばれた日』
影の列がついに日向を狙い始める。
夜の校庭。
手を繋いだ“見えない列”がゆっくり近づいてくる。
その手は寒いのに、どこか震えていて――必死だった。
「どうして…手を離したの…?」
日向は気づく。
この子は怒っているんじゃない。
“置いていかれた”と思い込んで泣いているだけだ。
でも、真相はまだわからない。
影の列が日向の手首を掴む。
ぞくりと冷たさが走る。
その瞬間、聞こえた。
「ママ……どうして来てくれなかったの?」
日向は息を呑む。
──過去に何があったのか。
──凛はなぜ鬼になったのか。
真相を知るには、「過去」に行くしかない。
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