キミは風になる


あるひ ふうちゃんと待ち合わせ

いつものように いそいそと出かける 

そこにふうちゃんはいた  


でも


誰か連れがいる

近くに行くと それが男だとわかった


ふうちゃんと並ぶ男は 年は35くらいだろうか


髭を生やして 面長で温厚な顔をしていた


ふうちゃん


声に出すと ふうちゃんはなんだか いつもの

ふうちゃんと 違ってた


おどおどして キョロキョロして

びくびくしてる


なにかあるな


そう感じる


そこに 男が話しかけてきた 



凛子がお世話になり 有難うございます


え?

凛子?


ふうちゃんは凛子というのか



私は凛子の後見人のものです

大変 ぶしつけながら

凛子が この度多大なる 資産を受け取ることに

なりまして


まぁ いわば 資産家へと かわるわけでして

そんな凛子に いい縁談も舞い込むことでしょう


あなたは凛子のこと

しあわせになってもらいたいですよね



ボクは突然のおもってもみない

言葉の連続に 思考能力を失っていた


ふうちゃんと話させてください


ふうちゃん?

凛子のことかな


くすりと 含み笑いをして

ふうちゃんと ふたりにしてくれた



ふうちゃん 泣きそう

ふうちゃん つらそう


ボクにできることは


著しく 思考能力の低下した頭で考えた


そして ふうちゃんがなにか言いかけたとき


遮るように ボクは一世一代の嘘をついた


ふうちゃんと過ごして 救われた

だから今 ふうちゃんの足手纏いに

なりたくない


ボクは すぅと 大きく息を吸いこんで



ふうちゃん

ボクはキミが嫌いだ


しあわせになれ



なみだがながれる

止めどなく


ふうちゃんは またなにかを言いかけて

やめた


月光の下 口づけしたときに感じた


風のにおい


ふうちゃんは 風のように ボクの前を去るのだ


そしてキミが嫌いだ

精一杯の ボクのさいごの嘘


その言葉は 儚く木枯らしに吹かれ


ふうちゃんと ボクのひびは終わる



ボクのふうちゃんへのおもいは


風に 風に






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