第3話感想
今回はくらげからミメイへの”大きな矢印”が描写された回だった。
有無を言わさずミメイをカラオケ店に引きずり込む導入の時点で、それは十分に伝わってくる。
年頃の女子高生でありながら、カラオケに一度も行ったことがない──
くらげという人間の”新たな一面”を早々に知ることができて嬉しい。
本人に聞くと前回の具合に話をはぐらかしてくるだろうからな。
”彼女に対する興味”を満たすには”連載を追い続ける”しかないわけだ。
そして、「初カラオケ」で披露されたのは、友達にも聴かせたことのない”微妙な歌声”。
たとえ”自分の美しくない一面”であろうと、ミメイの前には赤裸々にさらけ出す。
くらげがミメイに対して”確かな信頼感”を抱いていることが窺い知れる。
そんなくらげの気持ちに応えるかのごとく、ミメイもまた手を差し伸べた。
「大喜利のためにカラオケを知りたい」という”ライバル”の願いを受け入れるその姿は、
まさしく「黄金の精神」そのもの──、
ミメイも「王道ジャンプ主人公」の血を引いているのだと”安心”できる。
ラブコメにおいて、”作品の顔”となるのはヒロインであるが、
読者からの愛情を一身に受けるそのキャラクターを”幸せ”にできるのは、
同じ次元を生き、隣を歩いている男主人公だ。
ゆえに、その好感度にも気を配らなくてはならない。この漫画には今のところそれができている。
「親しき中にも礼儀あり」というように、
彼女たちがお互いのことを”大喜利投稿者”として尊重し合っている光景は、
読者の心に”爽やかさ”を残し、
”二人の行く末”を見守りたい──そう思わせるに十分な力を持っていると感じた。
そして、カラオケを堪能し終えたくらげに訪れた”ハプニング”。
彼女の小さな体が人混みに呑まれ、視界から消えていく。
「クラゲ」は遊泳能力の弱い”プランクトン”に分類される生物。
「くらげ」もまた行き交う人波に流されることしかできなかったということか。
「よふかしで背伸びなかった」──
彼女の”ラジオ愛”が、こんな場面にまで生きている。なんとも”丁寧な描写”だ。
そんな彼女を見かねたミメイの”何気ない提案”。
その言葉に従い、一人の少女が制服の背をぎゅっと掴んで歩き出した瞬間、
彼は自分の口にしたことの”重大さ”に気づく。
くらげの意識は、ただひとり頼れる存在──ミメイへと注がれている。
いまや彼女の脳内は、彼だけで埋め尽くされているではないか。
そして、とまどっていたのはミメイだけではない。
彼と別れたあと、耳まで赤くしたくらげの表情がその事実を”饒舌に”語っている。
サブタイトルにもなっている「歩くの疲れた」という台詞。
それは、そんな状況でも”普段通りの振る舞い”を保とうとする彼女の精々の「強がり」なのだろう。
おそらくこの後、自宅でミメイが「打倒うなぎポテト」を掲げてネタをひねりだしている間も、
くらげの脳裏には、彼の大きな背中が離れずにいるに違いない。
そんな想像を重ねるだけで、俺も心が踊るものだ。
だが、その”余韻”は次の瞬間、盛大に打ち砕かれる。
今までのくだりすべてが「盛大なフリ」となっていたのだ。
──この落とし方にこそ、この漫画の「コメディ」としての”矜持”が宿っている。
その鮮やかさに俺も思わず膝を打つしかなった。
それにしても、可愛い女の子と二人きりとは羨ましいにもほどがあるな。
だが、俺はといえば、もっぱら「ヒトカラ派」だ。
友達がいないというのがもちろん”最大の理由”だが、
”第二の理由”として、カラオケに行っても、
まずは俺の十八番である篠原涼子の『いとしさとせつなさと心強さ』と、
定番曲である高橋洋子の『残酷な天使のテーゼ』を歌ったが最後、
その後の残り9割の時間を”歌わずに過ごす”という習性があるもんでな。
俺は基本、”演奏”を聴きに行っているんだ。
「チープ」とされる”MIDI音源”だが、俺はその音から立ちのぼる”音楽”を愛している。
そこから感じ取られるのは、
かつて世界を自分の好きなものだけで埋め尽くそうと床に散らかした玩具。
あるいは、甘いお菓子を買ってもらえると手を引かれたスーパーマーケット。
音色は、そんな記憶を呼び起こし、”穢れを知らぬ幼い心”に近づけてくれる。
ただただ金を積むことだけが「良い作品」への道ではない。
それが──「芸術」というものの”難しさ”であり、同時に”面白さ”でもあるということだ。
俺はこの楽しみ方をミメイやくらげにも教えてやりたいぜ。
そもそも「カラオケ」とは「空のオーケストラ」の略。
好きな曲の”伴奏”を浴びながら、「自分のためだけの公演」を楽しむ
──それもまた”一興”だとな。
とはいえ、これは”お財布に優しくない行為”だ。だが、心配はいらない。
近年では、DAMやJOYSOUNDの公式YouTubeチャンネルが
”練習用動画”をアップロードしてくれている。
無職の俺に、なんたる”慈悲”──ありがたいことだ・・・
さらに、MIDI音源は単に「安っぽい」と評されるだけの存在ではなく、
工夫次第で”まったく異なる表情”を見せることもある。
たとえば通信カラオケの音源制作に用いられていたモジュールのひとつに、
ローランドの「SC-88Pro」がある。
この機材を愛用し楽曲制作に活用していたのが、ミュージシャンのレイ・ハラカミだ。
その手によって紡ぎ出されるサウンドは、
一般的なカラオケ音源のイメージとは似ても似つかず、
独特の浮遊感と温かみを帯びて広がっていく。
一度はぜひ耳を傾けてほしい、そんなアーティストである。
つまりは、このMIDI音源という存在と同じく、
『さむわんへるつ』にも”可能性”として”様々な顔”を与えることができるはずだ。
これまでのジャンプではあまり見られなかった作風や、
ラジオの大喜利というニッチな題材ゆえに、
「長期連載は難しいのでは」といった”懸念の声”も耳にする。
だが俺は、この漫画がそうした声を払拭し、
「人気作としての顔」を堂々と示してくれることを願っている。
その未来にたどり着くためにも、アンケートはもちろん1位に入れたぜ!!!
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