付録:アレクス冒険者訓練所 育成方針書

序文:アレクスより


冒険者とは、栄光のために武器を取る者ではない。

仲間を守り、街を守り、そして――

自分の命を持ち帰る者 のことだ。


この方針書は、

過去の失敗と経験、敗北と勝利、

千を超える戦場で学んできた教訓をもとにまとめたものである。


未来を担う者たちが、

迷わず歩くための“道標”となることを願っている。


――アレクス


第一章 理念 / 冒険者を育てるとは


冒険者訓練所の理念。


「生きて帰る冒険者を育てる」


強さは目的ではなく、手段である。

華々しい武勲よりも、

冷静な撤退判断と仲間への責任を重視する。


冒険者の本質は、

「果てに至る力」ではなく、

「帰還する力」 にある。


第二章 訓練体系 / 三段階構造の学び


訓練所の学びは、以下の三段階で構成される。


■ 第1段階:基礎科(必修)


知識・体術・思考力。

すべての冒険者の“土台”をつくる。


■ 第2段階:専門科(選択)


個々の適性を伸ばし、

“役割”を磨き上げる段階。


■ 第3段階:統合実践科(上級)


パーティを組み、実地を想定した高度訓練を行う。

卒業後、即戦力となるための最終工程。


第三章 基礎科 / 冒険者の土台づくり

● 生存術


生存術は、冒険者の骨格そのもの。


・可食植物と毒草の識別

・森・山・洞窟での水確保

・天候変化から危険を読む

・夜営と火起こしの技術

・負傷時の応急処置


これらは、どれか一つ欠けても命取りとなる。


● 危険予測


アレクスが最も重視した分野。


・魔獣の接近兆候

・足跡・痕跡から種別を推定

・危険度の段階評価

・撤退判断の基準

・“生き残るための嘘”の使い方


判断力こそ、生存率を左右する最大の武器。


● 戦闘基礎


戦いは“型”から始まる。


・立ち方、重心移動

・回避の角度と最適距離

・武器の基本操作

・複数戦の立ち位置

・護衛対象の守り方


「勇気だけで斬りかかる者は最初に死ぬ」

――アレクスの言葉より。


● 世界理解(地理・歴史・伝承)


知識は最大の防壁である。


・世界地図(主要街道/遺跡/魔の領域)

・街・村ごとの文化と危険

・古い伝承に残る警告

・地形から魔物の生息域を読む方法


● ギルド実務


冒険者としての礼節と責任を教える。


・依頼の受注と報告

・パーティ内の役割と責任

・現場での意思疎通

・危機時の指揮系統


第四章 専門科 / 適性を伸ばす学び

● 戦士科


力だけが戦士ではない。

“制御された力”があってこそ戦士となる。


・武器別の構えと特性

・踏み込みの速度と間合い

・多対一戦術、護衛戦術

・重装・軽装の使い分け



● 魔法科


魔法は暴力でも武器でもない。

“環境を変える技術”である。


・魔力操作

・詠唱の省略と安定化

・属性相性の深層理解

・魔力暴発の防止

・パーティ戦術への落とし込み



● 僧侶科


命をつなぐ者としての誇りと冷静さを養う。


・回復魔法の効率化

・補助魔法の優先順位

・戦闘中の集中法

・負傷兵の移送判断

・“救えない場面”での行動原則



● 探索(レンジャー)科


“見えないもの”を扱う者。


・痕跡の読み取り

・隠密行動の基礎

・罠の仕掛けと解除

・移動ルートの最適化

・戦わずに勝つ方法


第五章 統合実践科 / 実戦への最後の橋渡し

● パーティ編成


相性、役割、行動速度。

すべてを加味したうえでパーティを組む。


・ロール(前衛/後衛/支援)の理解

・適性診断

・戦術会議の進め方

・隊長の判断基準


● 模擬依頼(実地訓練)


訓練所の核心となる工程。


・森/山/廃遺跡での実地演習

・護衛・救助・運搬任務

・複合依頼の達成

・高危険度モンスターの模擬対処


成功より、失敗経験を重視する。


● 卒業試験「帰還任務」


訓練所の象徴ともいえる試験。


“全員で生きて帰ること。”


これが唯一にして絶対の合格条件。


戦闘力だけでなく、

・判断

・連携

・撤退

・応急処置

・責任の取り方

すべてが評価対象となる。


第六章 進級基準 / 道を歩むための段階


・基礎科 → 専門科

理解力・実技・安全行動の達成。


・専門科 → 統合実践科

高度技能の習得、模擬依頼経験、安全管理。


・統合実践科 → 卒業

卒業試験の成功と、所長の承認。


第七章 訓練所の精神 / 未来への道標


訓練所の入口には、

アレクスの信念が刻まれている。


「強さとは、生きて帰るための知恵と仲間への責任である」


この言葉こそが、

冒険者の“原点”であり“誇り”である。


訓練所を巣立つすべての者たちへ。

あなたたちが歩む道に、幸多からんことを。

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