第4章 真相ヘノ考察

第18話 村史ノ考察①

公民館にお伺いしてから1か月後の土曜日、私は旭ヶ丘駅近くのカフェに行きました。秦野さんとお会いして、私の話を聞いていただくためです。


秦野さんには具体的な内容を告げず、メールでただ「神隠しのことで、お話を聞いてほしい」とだけ伝えていました。


約束の店に先に着いたのは、私でした。

店員に案内された席は、1番奥の角にあるボックス席でした。私は入り口が見えるよう奥側の席に座り、約束の時間まで、持って来たアサノ村史を読んで待っていることにしました。


しばらく経った後、どこからか視線を感じました。ふと顔を上げると、入口近くに私を探す秦野さんがいました。


私が立ち上がって手を振り合図を送ると、秦野さんがそれに気づいてこちらに来ました。席に着くと挨拶もそこそこに、秦野さんは私に、メールで言っていた考えとは何かと問いかけました。


「朝光さんから伺った話を受けて、自分なりに色々調べたり、じっくり考えたりしました。奥様がいなくなった理由はわからなくても、神隠しとか他の失踪事件のことで何か分かれば、奥様の失踪の手掛かりが掴めるのではないかって。」


「それは、神隠しの伝承ですか?」

秦野さんの問いに、私は静かに頷きました。


「お話などを整理していくうちに、1つの仮説に辿り着いたんです。もしかしたら、全然見当違いかもしれないです。それでも、秦野さんには話さないといけない気がしたんです。聞いてくださいますか?」


今度は秦野さんが、小さく頷きました。


「まずは、昔にあった神隠しからです。昔、芦野村には無病息災を祈願する祭礼が、夏に執り行われていた。だけど、ある年の秋の終わり頃、村人が1人、神隠しにあった。それから、お供物をしなかった家の人が神隠しに遭うことが何度もあった。…ここまでは覚えてらっしゃいますか?」


「はい。村史にも書いてありましたし、朝日さんもおっしゃってました。」


「そう思いますよね。でも、少し違うんですよ。秦野さん、村史の神隠しのところをお見せしますので、現代風に訳しながら読んでみてください。」


私は、持っていた村史のページを開いて秦野さんに見せました。秦野さんは少し困った表情を浮かべながらも応じてくれました。


「えーっと…。ある年、参列のお供物を怠った家から、人が忽然と消えた。その後も、お供物を怠った家からは、度々人が消えることがあった。やがて、神隠しのように、その身は帰らなくなった…。ですかね。〇〇さん、これのどこが違うんですか?」


「私が気になったのは、最後の部分です。『やがてその身は帰らなくなった』ということは、初めのうちは、その身…つまり、体は帰ってきていたんではないですか?」


「言われてみれば…」


「私は、初めのうち…少なくとも数件は、消えた後に帰ってきていた…つまり、ご遺体が発見されていたんじゃないかと思うんです。場所はおそらく…神社の境内。お社の近くだと思います。」



「ちょっと待ってください。ということは…〇〇さんは、神隠しは伝説とかの類ではなく、本当にあった話だと言うのですか?」


「はい。私は、神隠しの伝承は、のだと考えました。」

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