果てしなき地獄への道
@4659
第1章 — 遅すぎた救急車
雨は、必要としている者にとってはいつも遅れてやって来る。
リョクは夜が道路に傷を開いていくのを見つめていた――ヘッドライトは刃のように向きを変え、彼が寄りかかる車のガラスは雷鳴のたびに震える。
彼は七歳だ。
母は絶対に離すまいとする強さで彼の手を握り、父は笑おうとして、そして失敗する。
外では、サイレンが霧を切り裂く――癒しを約束する音なのに、途切れ途切れでしか届かない。
救急車は遅い。
人々は目を合わせてもすぐに逸らし、運命の重さから逃げる。
匂いは熱された金属、雨に濡れたオイルの匂い。
病院は遠く、時間は石のように冷たく重い。
リョクは秒を数える。まるでエンジンの周回を数えるかのように――
一つ、二つ、三つ――
四つ目で母の身体が崩れ、
六つ目で父が古いエンジンを止めるように目を閉じた。
街は謝らない。
近所の誰かが「運」だの「タイミング」だのと言うが、その言葉は空っぽで、鉄の味だけを残す。
床には朝食の塩クラッカーが落ち、記憶のように崩れていく。
リョクの手には、ハンドルの形をした空白だけが残る――その瞬間、一つの固く鋭い誓いが生まれた。
彼は車を手に入れる。
ただ走るためではなく、医者が遅れるたびに世界を引き戻すために。
その誓いは炎となり、夜はそれを受け入れた。
救急車が家の前にようやく停まったとき、そのライトはどこかためらっているように見えた。
リョクはボンネットをのぞき込み、時間に近道を開けるかのように目を凝らす。
沈黙の中、誰かが空気に人間ではない音を刻む――あるいは、ただの風かもしれない。
リョクは想像上のハンドルのグリップを握りしめ、押し潰された声で誓う。
もう二度と無力にはならない、と。
扉が閉まるその瞬間、道路のどこかで何かが応えた。
遠くでエンジンが唸りを上げる。低く、遠く、まるで金属の笑い声のように。
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