空白のアデア
月夜ダイヤ
0章●●
0.●●になった日 (本編に繋がります この話から読むことを推奨します)
刃を振り下ろした瞬間、世界が静かになったように感じた。最後の声も途絶えた。空気が重くなり、それをソラは時間が止まったように感じた。
ソラはその場に立ち尽くし、自分の手のひらがじんわりと熱を帯びているのを感じていた。
息を吸うと、冷たい匂いが胸に満ちる。その感覚が、なぜか落ち着きを与えてくる。
緊張で震えていた手は、今は不思議と安定していた。それがどこか奇妙な感覚だった。胸の奥で、誰かがくすりと笑った気がした。それがソラであったのか、自分の中に住む別の誰かなのかは分からなかった。
しかし一つだけ言えることがある。
「……邪魔者は消してしまえばいいんだ」
周囲は静まり返り、足元には赤黒い液体が池のように溜まっていた。それを見つめるソラの瞳は、どこか遠くを見ていた。恐怖ではない。
むしろ心のどこかが満たされていくような、名前のつけづらい感情だった。きっとこの感情を一言で表すことはできない。
ソラは自分が芸術家になったような気分でいた。
今、ソラは部屋の中央でキャンバスに絵を描いている。色々な絵の具をそこに塗っていくのだ。それはかつて人であったものかもしれない。
「もっと、もっと描かなきゃ」
思わず、声が漏れる。刃を握り直す手が小さく震えた。期待に似た感情が混じっていた。
「ソラ! もうやめて!」
背後からロロが抱きついてきた。ソラは反射的に動き、ロロの腕を振り払う。その拍子に、彼の腕が宙を舞った。ロロは体勢を崩して倒れ込む。赤い鮮血がその場に滴った。
静まり返った空気の中で、ロロのうめく声が聞こえた。
ソラは微かに笑った。小さく、静かに、どこか危うい色を帯びて。
そのとき、耳の奥で誰かの名前が響く。
「あであ……」
音が途切れた。もう何も聞こえない。
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