第12話 「輝くゴミと焼肉の代償」1

「あー、テスト終わったー!マジ解放感ヤバくない?」

 放課後の教室。西日が差し込む中、天野ミカは机に突っ伏していた。スマホの画面には、死刑宣告のような数字が表示されている。

『残高:-10,000円』

(……解放されたのはテストからだけで、借金からは解放されてないんですけどぉ……)

 心の中で血の涙を流していると、隣の席の小百合が、机をバンと叩いた。彼女はウェーブのかかった明るい茶髪に、バッチリメイクのTHE・ギャルだ。

「ねーミカ、聞いてんの?テスト打ち上げの話!」

「え、あ、うん。聞いてる聞いてる」

「明日さ、いつメンで駅前の『焼肉キングダム』行こーぜ!学割で食べ放題、一人3,500円だって!」

 小百合の言葉に、後ろの席から二人の女子生徒が身を乗り出してきた。

「行くー!てか、肉しか勝たんしょ」

 答えたのは美咲。ショートカットに大きめのピアス、常にスマホをいじっている今時の女子だ。

「えー、また焼肉?太るじゃん。……まあ、行くけど」

 少しダルそうに答えたのは雫。黒髪のロングヘアで一見大人しそうだが、言葉の端々に毒があるクール系ギャルだ。

 小百合がミカの顔を覗き込む。

「ミカももちろん来るっしょ?」

「あ、えっと……」

 ミカは一瞬、スマホの画面(マイナス1万円)と、財布の中身(800円)を脳内で計算した。どう計算しても、焼肉はおろか、そこまでの電車賃すら怪しい。だが、ここで断れば「ノリ悪い」のレッテルを貼られ。ただ、何よりテスト勉強で消耗した脳と胃袋が、猛烈に肉を欲していた。

「行く行く!絶対行く!」

「りょ!じゃあ明日11時に駅前集合ねー!」

 小百合たちが盛り上がる中、ミカは笑顔を貼り付けたまま、冷や汗を流していた。(言っちゃった……!なんとしても3,500円、いや交通費込みで5,000円は即金で欲しい!今夜中に!)

***

「はぁ……どうしよ」

 休み時間。誰もいない校舎の屋上で、ミカはフェンスにもたれかかっていた。風が吹くたびに、空腹のお腹が鳴る。

「なんだ、また金欠か?懲りない奴だな」

 不意に、頭上から呆れた声が降ってきた。いつものように、何もない空間からダインが姿を現し、フェンスの上にちょこんと座る。

「うるさいなー。ダインタソこそ、なんかいい仕事ないの?今すぐ現金になるやつ」

「現金ではない。魔力マネーだ」

「どっちでもいいから!」

 ダインは深いため息をつくと、ミカのスマホを小さな前足で操作した。

「ほら、これならどうだ?今出たばかりの緊急依頼だ」

 ミカが画面を覗き込む。


【ランク:F】

【依頼:結晶体清掃】

【内容:無銭浄化後の結晶体の除去】

【報酬:15,000円】


「……1万5千円!?」ミカの目が輝いた。「お、これ!赤字分引いても5,000円残るじゃん!焼肉代出る!」

 だが、すぐに眉をひそめる。

「てか、『結晶体』ってなに?」

「『無銭』を倒す際、強力な浄化系の魔法を使うと、敵が完全に消滅せず、魔力の結晶となって残ることがあるんだ。無害だが、物理的に邪魔だからな。定期的にこうして清掃依頼が出る」

「ふーん。浄化系って……まさか」ミカの脳裏に、あのお嬢様魔法少女・聖ルナの顔が浮かんだ。

「ま、いいや。掃除だけなら楽そうだし!」

 ミカは迷わず『依頼を受ける』ボタンをタップした。

(ピコン♪)

『ご依頼、ありがとうございます。』

『報酬:15,000円が魔力マネーとしてチャージされました』

『残高:5,000円』

「よしっ!これで明日の焼肉は確保!」

 ガッツポーズをするミカを、ダインはジト目で見つめる。

「また貴様は……。言っておくが、結構な重労働だぞ?」

「へーきへーき!ダインタソもいるし、山本くんも呼べば楽勝っしょ!」

「貴様……人を便利屋か何かだと思っているのか……」

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