第15話 翼竜を駆る者

レースは峠へと入っていく。

柊真達が以前、城へと向かう途中

街の風景を見下ろした関所へと

登って行く最中だ。


しかし、ここで柊真達に問題が

発生していた…………このだ。

この世界の道は当然の様に

セメント等で舗装されていない。

道には馬車向けの大きな轍だけが

深く刻まれている。


城下町の石畳は勿論、比較的

整備されていた平坦な道では

問題無かった。ただ……

整備されてない山道、それも

登りとなると……話は別だ。


デコボコした道がひたすら続く。

ソウリスはまともに速度を

出せず、柊真は苦戦していた。


「くそ……タイヤが取られて……!

 車体が跳ねてしまう!」


その間に、先程柊真に抜かれた

ハイランと異国の二人組が

先へ抜けていく。



「く……このままじゃ……!」


焦る柊真。

心配そうに見ていたサノンが

思い出したように……

ふと、呟いた。


「……ねえ、柊真君。あの時は

 気づかなかったけど……

 ソウリスのサンドフォームの

 タイヤって──」


柊真は、ハッとした。


「そうだ……!サンドフォームは

 確かオフロード仕様のタイヤ……

 だったはずだ!」


サノンは柊真と目を合わせ、頷く。

すかさずソウリスへ手を置いた。


砂の魔力がソウリスへ流れ込み、

青白い光を纏いつつ、一瞬で形状を

変えていく。


「変形……!サンドフォーム!

 よし、思った通り……!

 このタイヤなら、行けるぞ!」


柊真は立ち上がり、タイヤが土を

掴むのに合わせ、ダンシングで

車体を振るわせる。


ソウリスは土を掴み、

峠を勢い良く駆け上がる。


ほどなく、先程柊真を抜き去った

ハイランに再び追いつく。

坂を一生懸命に走っているが、

流石にしんどそうだ。


「鎧のおっさん!さっきは助かった!

 だが、今は先に行くぜ!」


ハイランが息を切らしながらも、

豪快に笑った。


「……ハハハ!よかろう!

 行くがよい!奇妙な鉄馬の

 走者よ!」


続いて異国の滑走魔術師

二人組へと近づく。


「おい、相棒!またさっきの

 奴が追い付いてきたぜ!」


「そうだな相棒!この先の

 曲がりで引き離してやるか!」


峠の難所、大きなカーブに

差し掛かった。


ソウリスは勢いのまま進入し、

二人組と並ぶ。並走する2機。


ソウリスは速度を保ったまま

難なく曲がって見せた。

滑走魔術師の二人はカーブでこそ

粘るが、2台が直線に入った

瞬間──


ソウリスが一気に引き離した。


「はっ!?速い……!、俺達は摩擦を

 消す魔法で滑ってるんだぜ⁉

 この路面で一体どうやって……

 そんな速く走ってるんだよ⁉」


驚く二人。柊真は一瞬振り向き、

直ぐに前だけを見る。


ここから直線。最後の登りだ。

関所はもう目の前にある。


サンドフォームを駆る柊真は

悪路をものともせずギアを上げ、

更に速く駆け抜けていった──。






──リオスト城、観覧席──


場面は一度、観覧席へ移る。

魔法で飛ばした鳥の眼から

魔石を通して、レース映像が映し出されていた。


王と王妃、そして臣下達は

今も熾烈に行われている

一位争いを見つめていた。


既に2台は関所を超えて、

モルナ村まではほぼ直線の

平坦な道に差し掛かっていた。


前を走るのは翼竜を駆る

近衛騎士──、

ルミナ・グランディア。


すぐ後ろには武具店の夫婦。

お手製の盾を重ねた魔法瓶の

出力で走る、奇妙なマシンが

直ぐ近くに迫っていた。


「かあちゃん、ここだ!

 加速用魔法瓶、全部!」


「了解だ、アンタ!任せな!」


夫婦は大量の魔法瓶を

装置へと注ぎ込む。


装置が唸り、轟音を立てて

火花が散っていく。



「行くぞ……!ブーストだぁ!」


夫婦の乗り物が爆発的加速。

ジェット噴射の様な推進力で

翼竜に乗るルミナとその補助士を

一気に抜き去っていく。


さらに、婦人が後ろを向きながら

巨大な……筒を構えた。

婦人は煙草を咥えながら、

サングラスを光らせていた。


「騎士団には私らのお得意様も

 いるが……これは、勝負だ!

 遠慮なく撃たせて貰うよ!」


轟音。

炎の弾丸が空を裂き、後方の

翼竜目掛けて向かっていく。


翼竜左側に座る、補助士に直撃──

その寸前。


「ルミナっ!?何を⁉」


レースを見守っていた

ロードが思わず観覧席から

声を荒げる。それもその筈。


操縦士ルミナ・グランディアが

操縦席からその身を投げ出し、

補助士を庇っていたのだ。


「……くっ……!」


防御魔法が間に合い、衝撃は

かなり弱まっていた。


しかしルミナの背中には煙と

……、焦げ跡が写っていた。



「はっ……!ルミナっ!?……

 あなた、なんてことを!」


補助士が叫び、深く被った

フードと自らの仮面を

乱暴に剥ぎ取った。


現れた顔にリオスト王と王妃が

青ざめ、どよめきが起こる。


「まさか……お前は……!」


「なんて事なの……!」



それは────

王と王妃の


花嫁修業と称して放浪中の

身で在った、リオスト王女──

アリア・リオストだった。


「私のルミナに怪我をさせる

 なんて……許さない!」


怒りに震えた彼女は翼竜の手綱を

手に取る。その目には炎が

宿っていた。


そのアリアの後ろから──、

見えた。


レースは佳境へと向かう──。

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