河口さんと田中くん

水嶋

第1話 名前を呼んではならないこの人

本日は決戦日!


姫カットツインテウィッグ着装!

デカ襟フリル爆盛り上下セットアップブラックコーデ装着!

首にチョーカー装備!

黒のニーハイ、厚底装着!

仕上げに黒マスクファイルダーオン!


誰もが恐れ慄き、決して近寄らない、思わず目を逸らす一見目立ちすぎだが、実はじっくり見られないステルス装備でいざ出陣じゃー!


と鼻息荒く向かう先は3駅先の大きな書店。

本日は咲穂ペロリ先生の新刊発売日!

今回はどんな素敵ボーイズのあれやこれや…と期待が膨らむ。まあ、所謂BL本だ。


ペンネームはとことんふざけてるがとにかく内容が素晴らしい。絵も素晴らしい。

両立してる作家さんはもはや日本の宝だ。

早急に人間国宝に指名すべき案件だと思う。


先生の作品は全てにハズレがない。

今ではいつでも見られる電子書籍と(電子書籍もオマケページが有ったりするのでそれも目的だが)保存用紙本とセット買いしている。

そして初版ゲットは無論だが、書店オマケ美麗ポストカードも信者に嬉しい!


まあ予約しろよって話なんですが、別書店で特装版は予約してますよ。ははは

書店毎にポストカード 違うんだよ。

JKには少々痛い出費だが、背に腹は変えられない。全種コンプは金銭的に難しいので、泣く泣く2種で…


先生の作品は界隈ではビッグネームなので、B Lコーナーで平積みされてて見つけやすいのも有り難い。


まあこんなふざけた格好で変装までして最寄りから遠い駅まで来て知り合いなんかには絶対遭遇したくないんで、早急にミッションを終了して撤退しよう。


脇目も振らず!対象に!手を伸ば…


あっ!


誰かと手が被った!


「すっすみま…」

「あっすみません」


「あれっ?もしかして河口さん?」


「ひいっ」


誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ…呼んではならないその名を呼ぶやつはっ!


恐る恐る見上げる…




たっ田中!?





何故?お前がここに居る?この本を手に取ろうとしている?ここは何処?私は誰?


この後の記憶があまりにパニックになって曖昧になったが、とりあえずお宝をレジ精算して現在書店の裏通りに来ている。




現状を整理しよう。


・本日私は敬愛する咲穂ペロリ先生の新刊を買いに来た。

・咲穂先生の作品はBLである(結構激しいシーンも毎回ある)

・先程遭遇した(多分幻覚でなければ)田中は同クラの男子生徒

・田中は私の名前を呼んだ(幻覚説崩壊)


結論:変装は意味がなくただ小っ恥ずかしい姿を晒し、尚且つほぼ話したこともないクラスのフツメン男子にBL好きヲタが露呈した二重地獄絵図


今すぐ切腹したい所ではあるが、一つ疑問は何故田中が咲穂先生の本を手に取ろうとしていたかだ。




これは切腹前に確かめなければならない案件ではないか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る