異世界で宇宙開発を始めることになりました。理由は“死刑”です。

@SCBN

エピローグ

EP1 転生

月には、莫大な魔力があるらしい」


大漆の家のちゃぶ台でそんな話題が飛び出す。

俺は箸を止め、思わず視線を上げた。

月、魔力、宇宙――。

どれも俺にとっては他人事じゃない。

なぜなら、あの日のことを思い出すからだ。


――潮の匂い。森を抜けるそよ風。職員たちの叫び声。

あれは内之浦宇宙観測所での最後の仕事だった。

イプシロンロケットの二段目が発射直後に炎を上げ、発射管制室内に赤い光が流れ込む。

「逃げろ‼」

間に合わなかった。俺は意識を失った。


次に目を覚ましたとき、そこは旅客機の中だった。

窓の外には、昭和のアメリカの街並み。

だが空港の表示には“UKA”と書かれている。

アメリカ王国……? いや、そんなのありえない。


 

警察が前後から乱入し、俺だけが連行される。


そして尋問をされる。JAXAの職員だと言い放った瞬間に、職員の目が丸くなる。そしてまたどこかに連行される。



通された玉座の前で、目の前の男は淡々と言い放った。

「宇宙開発をしなければ処刑する。するなら免除だ――死か、そらか、好きにするといい。」


言葉が、頭を真っ白にした。

でも、思い出す。内之浦で学んだこと、成功させたロケットの数々。

今度はこの異世界で、同じことをやるしかない。


 俺の第二の宇宙開発生活は、こうして始まることとなった。

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