第18話
「エレノア夫人は現在29歳。レオナルドの後妻になってから娘のサリアを一人産んでるがレオナルドは先妻との間に嫡男のベルモンドがいる。ベルモンドは既に25歳だがまだ独身か」
事前調査で分かったことをルカは頭に叩き込む。
「まあ、レオナルドはもう50代だからな。先妻との嫡男がそれぐらいの年齢でもおかしくはないか。だが嫡男がいながら若い後妻を迎えるということはエレノア夫人がやはりレーシア妾妃のいとこに当たる女性だからという理由が強いな」
普通であれば嫡男がいるならば跡継ぎの為に先妻の死後、新たに妻を迎える必要はない。
しかもレオナルドとエレノア夫人は年齢がかなり離れているから恋愛結婚と考えるのも難しい。
だがエレノア夫人がレーシア妾妃のいとこであるならエレノア夫人を妻にすることでレオナルドは王族の縁戚になれる。
将来、レーシア妾妃の息子のアルベルト王子が国王になれば皇太后の縁戚になれるのだ。
この国では妾妃の子供であっても国王になれる。
レーシア妾妃はハスターシャ国の公爵家の出身だ。
他国の出身で妾妃という立場であってもそれだけ母国で高い身分の女性ならその子供のアルベルト王子が国王になった時にレーシア妾妃は問題なく皇太后の位に就けるだろう。
レオナルドはおそらくそこまで計算してエレノア夫人と結婚した可能性が高い。
まずは王族の縁戚になり果ては国王の縁戚及び後ろ盾になり権力を握りたいという計画だろう。
「まずは国王主催の王宮の庭園で開かれる昼間のパーティーがあるからそれに参加してハイマム侯爵夫妻の様子を伺うか」
パーティーの参加者名簿にはハイマム侯爵夫妻とその嫡男ベルモンドの名前がある。
ルカはそのパーティーに参加する手配を整えた。
数日後、国王主催のパーティーが開かれた。
このパーティーは広大な王宮の庭園に咲く花を愛でるために開かれたものだ。
出席者は伯爵以上の貴族が基本でルカ自身は男爵位しか持ってないがそこは実家のシルヴァラン伯爵家の名前を借りることにした。
事前に父親のシルヴァラン伯爵の許可を取り今日は父親の伯爵の代理として出席する。
王太子のイザークは視察という理由で今回のパーティーには参加していない。
ルカがイザークとは無関係でパーティーに参加したことにするためだ。
国王の挨拶の言葉がありその後は貴族たちは飲み物や軽食を楽しみながら庭園の中を散策する。
庭園は広大でいろんな種類の花々が咲き誇り参加者たちの目を楽しませていた。
ルカはハイマム侯爵夫妻を探す。
すると他の貴族の男性と話すレオナルドを見つけた。しかしレオナルドの隣りにいるべきエレノア夫人の姿がない。
(エレノア夫人と別行動をしているのか?)
必ずしもパーティーに参加している間に夫婦が一緒にいなければならない訳ではない。
男性には男性同士の付き合いがあるし女性は女性同士の付き合いがあるからだ。
とりあえずルカはエレノア夫人を探すことにした。
女性が集まっているグループを中心に探すがエレノア夫人は見つからない。
(もしかして迷宮庭園の方か?)
庭園の一部は花が咲いている植物で作った垣根を利用して迷宮のようになっている部分がある。
そこは通称「迷宮庭園」と呼ばれていた。
垣根の外側から内側が見られないのでそこは貴族がよく逢引きに使う場所でもある。
エレノア夫人がそこにいる可能性は低いかもしれないが一応ルカは「迷宮庭園」まで足を延ばす。
迷宮庭園の入り口から中に入り人がいるか確認して歩く。
ルカは王太子の親衛隊の警備の関係でこの迷宮庭園の中の通路を覚えていた。
「ねえ、ベルモンドさん。私からのお願いの返事が欲しいですけど」
女の声が聞こえてルカは動きを止めた。
(ベルモンド? ハイマム侯爵家の嫡男のベルモンドか?)
そっと声のした垣根の陰から覗いて見るとそこには迷宮庭園に設置された休憩用の長椅子に座った男女がいる。
男の方はハイマム侯爵家の嫡男のベルモンドで女の方はルカが捜していたエレノア侯爵夫人だった。
(なぜ、この二人がこのような場所にいるんだ?)
ルカは二人の会話に耳を傾けて様子を伺うことにした。
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