29日目 帰省1
「なっつやっすみぃ~~~~~~~~~」
終業式も終わりテンションアゲアゲな由香
「優、荷造り手伝ってね」
「はい」
椿に雑用を押し付けられる優
「私のもよろしくね」
「あっ、はい」
百合も便乗していた
「わっ、わたしはいいわよ。そんなに荷物も無いし」
香は自分で持てる程度の荷物しか無いので、手伝えとは言えなかったようだ
「大輔はどうやって帰るんだ?」
優は船は懲り懲りで、飛行船は嫌だったので汽車で日本海ルートか太平洋ルートかを悩んでいた
「ワイは普通に飛行船や」
「普通に飛行船って」
豊夫はやっぱり貴族は違うなと思った
「龍二じぶんも飛行船やろ?」
「当たり前だろ?横浜まで汽車で何時間かかると思ってるんだ」
「これだから金持達は、俺は佐賀まで汽車だからな。尻も居たくなりそうだし途中で宮島でも寄って帰る予定だ」
「で、優おまえはどないするんや?」
「来る時は観光全然出来なかったし、京都とかで観光でもしながら汽車でのんびり帰る予定だけどな」
優以外の男3人は昼食後には寮を後にした。
「じゃ、優。これ全部いらないから、あげるわ」
「えっ」
「勿論、それもあげるわよ」
「えっ」
椿は毎月の様にクローゼットの中身が入れ替わるほど服を買う為に、これまでも何度か優に着なくなった服を押し付けていた。勿論下着も・・・
「優こっちもお願い」
「あっはいはい」
椿ほどでは無かったが、百合も服などは大量に買っていたので、椿を真似て捨てる手間を省いていた。
「よしっ、それじゃ優、行くわよ。早く荷物を用意して来なさい」
「あの行くってどちらに?」
「駅に決まってるでしょ?」
香のその言葉に、優は言葉を失った。
「わぁー、凄い」
椿の家の車で岡山駅に着いた優だったが、椿が利用するのは貴族などが利用する為の特別な部屋に驚いていた
「あの、それでこの後は?」
「何を言ってるの?神戸の香の家に遊びに行くのよ?」
「えっ?」
「その後は私のお家に行くのよ?」
「えっ?」
「最後は私のお家ね」
「あのえっと、あっはい」
神戸、金沢は日本海ルートの通り道だから良かったが、そこから江戸と聞いて優は嫌な予感がしていた
時間となりホームに移動した優はさらなる驚きの声が出ていた
「前にも乗せてもらったけど、やっぱり凄いわね」
男爵家で金持ちなはずの香がそう言うだけの事はあり、優などは言葉も出なかった。
「いいのよ。遊ばしてばかりなんだし、こんな時くらい使わないと」
椿は軽々しく言っていたが、親が所有してる客車を特急へと連結させて、自分が乗るスペースを確保していたのだった。
「凄いですね。お城の中みたい」
「そお?」
1両丸々を使っているので、車両の半分を使った大きなリビングスペース、さらには小さなキッチン、ベッドルーム、荷室、トイレとシャワー室などもあった。簡単な料理とお茶を入れる為のスタッフが1名常駐もしていた
道中はベッドもあったが、何事も無く。無事に?平穏に?神戸へと汽車は到着した
「ごめんね。家の車狭くて」
「あら?丁度良いわよ、ねぇ」
「ええ、これくらいが丁度いいですわ」
普通なら大人4人がゆったり乗るサイズの車だったが、後部座席の真ん中に優が座り3人が密着して腰掛ける状態になっていた。※香は助手席
「あら、思ったよりも早く着きましたわね」
「この距離なら散歩ついでに歩いても良かったかも知れませんね」
「そお?でも、歩くと坂道だし意外と大変よ?」
「ここが私の家。小さくて驚いたでしょ?」
「いえ、そんな事は」
と、優は言っていたが、ド田舎農家の優の家の方が広さだけなら広かった。
「こっちは家族で寝る為の家だから、もう1個酒蔵の近くにも家はあるんだけど、そっちは私の部屋は無いから、皆を呼ぶならこっちかなって」
「ようこそ、皆さんが香のご学友なのね。香の母です」
「香さんと同じ3年の渋谷椿と申します~」
「私も寮では香先輩には大変お世話になっております。2年生の加賀百合と申します。本日はお世話になります。あのこれつまらない物なのですが~」
「えっと、私も学校や寮で香さんにお世話になっている1年の三木優です。えっとお世話になります。あっ、これうちの実家の林檎と林檎ジュースなのですが、えっと」
「あっ、お母様。優さんは、今日初めて貴族の家に来たから緊張してて」
「あらそうだったのね。初々しくて可愛いわね。あらこの林檎、瑞々しくて美味しそうね」
「お母様、優さんのおうちの林檎は本当に美味しいのよ。特にその林檎ジュース、それは美味しくて寮の皆の好物になってるくらいよ」
「あらそうなのね。ますます楽しみになって来たわ」
そんなこんなで、雑談タイムからの父親も帰って来ての夕食をへて
「ここが私の部屋よ。広くは無いけど、窓からの神戸の景色が私は好きでお気に入りのお部屋」
「本当に綺麗な夜景が見えるわ」
「それにしても、香のご両親、優が男の子と知ったらどんな顔をなさるかしらね」
「ちょっと、絶対に教えたらダメだからねっ!私怒られるだけじゃすまなくなるわ。学校転校させられるか、いやそれどころか学校退学させられて結婚するまで家から一歩も出して貰えなくなるわよ」
「まぁ怖い。それじゃ今夜は大人しく別々のお部屋で寝るの?」
「椿あなたねぇ」
「ふふ、優何時ものお願いね」
「はあ」
言われた通りに防音等の魔法を使う優は、両親が同じ建物に居る中でこの人達はやる気なの?と呆れていた。
狭いとはいえそこは男爵家、香はここで別れて新学期までお預けになる事もあり積極的になっていた。翌日は酒蔵の見学をした後、神戸の街を少し観光しさらに1泊熱い夜を過ごした。
「それじゃ、お母様。百合さんの所に行ってまいります」
「はい、気を付けてね」
と、当初予定はされていなかったが、香は金沢までついて来ていた。一人だけ仲間外れなようになるのが嫌だったのか、もっと楽しみたいと思ってしまったのか・・・
百合の実家は大きな温泉旅館などを経営しており、4人は露天風呂のついた部屋を用意して貰い。露天風呂でも部屋でも楽しい時間をすごしたのだった。
「それじゃ、私達はここまでで、また新学期いっしょに楽しみましょうね」
「はい」
「優、しっかり休んでおくのよ」
香と百合とは、ここでお別れとなった。江戸の椿の家まで押しかけて来るのでは?と優は思ったが、2人にそのような気は全く無かったようだ。
「えっと、椿さん。やっぱりこれに乗るのですよね」
「当たり前じゃない。他にどうやってこんな場所から帰るって言うのよ?」
「そうですよね」
「そう言えば優は、飛行船苦手なんだっけ?いつも女の子の膝枕で寝て過ごしてるとか、男の子達が羨ましそうに言っていたわね」
「はい。どうにも怖くて」
「今日はどうする?私の膝で寝る?」
「そ、そんな事は」
「じゃ、私の隣でお話相手になってね」
「はい。頑張ります」
と、乗る前は言っていた優だったが、恐怖で青褪めてしまい。流石の椿も可哀想だと思ったのか周囲の目を気にしたのか、優に膝を貸し寝かしつけたのだった。
「優、約束破ったから、私が良いって言うまで付き合って貰うからね」
「はい」
「まずは、夏休みの間に着るお洋服と、優に見せる下着買いに行かないとね」
そんなこんなで、椿は実家にはすぐに向かわず。銀座に行きまた派手に買い物をして楽しみ。浅草で牛鍋を食べ日が暮れ夜になりやっと自宅へと向かった
「江戸はもっとビルや家が並んでるのかと思ってました」
「それは銀座や浅草のほうだけよ。江戸も少し離れるとこんなものよ」
と言っていたが、今車が走ってる場所がただ単にお屋敷街で森のような庭が連なっているだけだった。
「ほんと、ここはつまらないところよ」
そう椿がつぶやいた時、車は森の中へと入って行った
「おかえりませ、椿様」✖10
車を降り家へと入ると個人の屋敷なのに、温泉旅館のように使用人が並び椿と優を迎い入れていた
「お友達とゆっくりしたいから、皆に10日ほどお暇を出しなさい。あなたもその間はこちらに顔を出さなくても良いわ」
「畏まりました」
椿はそう伝えると、優と共に静かな屋敷の中を自室へと向かって歩き出した
「あの静かですね。他のご家族とかはどちらに?」
優は大きな屋敷だったので、気になって聞いていたが
「ここは私しか住んで無いわよ?両親は別の家で暮らしてるわ」
「そうでしたか、何も知ら・・・」
「そんな事どうでもいいじゃない。ねぇ優」
見たくない現実を忘れる為に椿は優を求め、優はそれに応じ二人は10日ほどの時を過ごした。優も実家に帰省しないといけなかったし、色々な事情があるにせよ椿もまた貴族の娘としての最低限の義務と言う物があったのだった。
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