12日目 部活見学
「来週中に部活を決めて出すように」
「先生、部活は必ず入らないとダメなんですか?」
「あぁ白浜は仕事をしてるんだったな。とは言え、部活は必ずどこかに所属する事となっている。授業でする時以外は活動して無いような文化部もあるから、そこらにでも入っておけばいい
「はい、わかりました」
「それでは、解散」
「豊夫は何処に入るんだよ」
「俺は、柔道部と言いたいとこだけど、龍二がヨット部に入らないかって言っててさ」
「ヨット部って何するの?」
山水は興味ありそうに聞いた
「さあ?なんか週末パーティとかしてるらしい?まぁ龍二が選ぶ部活だからな」
「龍二って、1組の鶴見くん?」
「そうそう」
「ああー」✖3
一緒に昼ご飯を食べていた。山水、袴田、滝沢が声をそろえて納得していた。
「で、山水は何部に入るんだよ」
豊夫は自分の番は終わったと次に順番を回した
「えっ、私は水泳部!でも、夏だけの同好会しかないらしくて、今は悩み中」
「じゃ、陸上部おいでよ」
「(袴田)一花(いちか)陸上部に決めたの?」
「うん」
「じゃ、私も陸上部にしようかな」
「うんうん、(滝沢)弥生(やよい)は?」
「私はテニス部。家のお付き合いでテニスがあるから、もう少し上手になっておきたいなって」
「わあ、流石男爵令嬢様」
「もう、止めてよ。同じ男爵でも岡崎君みたいな男の人とは違うよ」
「そうなの?」
山水は大輔に聞いた
「どやろ?ワイはまだ全然考えて無いしなぁ。それよりも今や今を楽しまなあかんでぇ~」
跡継ぎには跡継ぎになりにプレッシャーとかがあるのだろうか、エセ関西弁風の口調が一瞬無くなっていた
「ワイはまだ決めてへんけど、テニスも水泳もええなぁ~」
「ええー、岡崎くん来るなら私、お茶かお華にしようかなぁ」
滝沢は即座に逃げの体制に
「なんでや、ワイの華麗なプレイ見たら、キャー大輔さまぁ~ってなってまうでぇ」
箸をラケットのごとく振り、決め顔をする大輔
「ならないならない」
「無いな」
呆れる男二人
「あとは、三木くん!三木くんは?」
一緒に食べてるメンバーを見回し、山水が残りの一人が優だと気がつき言った
「俺は・・・。帰宅部は無いらしいし、茶道や華道は・・・うーん、何か楽そうなのを探して入るよ」
「なんや優!!おま、高校生男子たるもの、もっと体を動かしてだな。手取足取り」
「うわぁ、最低」✖3
「はっ、ヨダレでとった」
「汚ねぇなぁ。運動は良いよ魔法禁止だし」
「ああー」✖5
「それはそれとしてやな優、高校生と言えば青春やで、可愛い女の子と遊んで彼女の一人くらい欲しいと思わへんかい!」
真剣な顔で言う大輔、ひきつる顔の他の面々
「彼女、あっ・・・。うん、そだね」
「今一瞬何か考えてたよねぇ」
山水
「もしかして、五稜さんとお付き合いしてるのかなぁ?」
滝沢
「そっか、だから飛行船の中で、どうなの三木くん」
袴田
「ないない。五稜さんに迷惑だから、そんな事言ったらダメだよ」
必死に否定する優
「逆に怪しいよね」
「ねー」
「なんや優おま、ワイより先に、許せん許さへんで!」
「で、本当の所はどうなんだ?」
優の両肩を持って前後に揺する大輔、冷静に聞く豊夫
「だから、付き合って無いって」
「だよなぁ、俺も一瞬焦ったぞ。この野郎」
豊夫は軽く優にパンチを入れた
「まっ、あれや優、昼からはワイに付き合え」
「ええぇ」
「ヨッシャー、アチコチ見て回るでぇー」
「どうせテニス部に行くんだろ?」
「当たり前や無いか!」
早くも期待に満ちたスケベ顔な大輔
「こんにちはー、見学ええですかー」
スケベ顔のまま堂々と入って行く大輔
「えっ、なに?」
どんびきな女子テニス部の方々
「えっと、テニスの経験は?」
嫌々だけど仕事だから聞いてる部員
「ワイは、せやな、プロ級言うたら大袈裟やけど、けっこううまいで」
相当自信があるのか、どや顔で大輔は言っていたが、鼻の下は伸びたままだった
「僕はした事無いです」
ラケットすら持ったことが無い優
「それじゃ、私がお相手いたしましょう」
留学生の綺麗な金髪令嬢と言った人が、ラリーの練習をしていたのを中断し大輔に声をかけた
「えっ、カレン様が」
なんでこんな奴の為にと言った感じの声が部員たちの間からあがった
「ウッヒョーー、えらい別嬪さんや無いかいな!でも、ワイは別嬪さんやからって手抜きへんでぇ」
胸の大きな金髪美人を目の前に、やる気満々な大輔
「では、そちらの男性のサーブからで」
「ワイからで、ええんでっか?」
「大丈夫よ」
「ほな、遠慮なく」
「15(Fifteen)0(Love)」※Lveの綴りは別かも💦
「えっ」
「まだまだ、肩慣らしでっせ」
「30(Thirty) 0(Love)」
「もういいわ」
「えっ、まだ準備運動やで?」
「本格的なテニスをなさりたいのでしたら、街の男性の方々がいらっしゃる。テニスクラブに入られた方いいわ。あなたのお相手が出来る人は、ここにはいませんので」
と、あっさり入部拒否をされる大輔。ここは、試合で勝つ為の部活では無く、女の子が遊びでラリーを楽しめれば十分といった部活だったのだ
「えっ・・・」
「こうもってね。そうそうでね」
「はい」
「こうやって」
「はい」
その頃優は言えば、手取足取り女子部員に素振りを教えられていた
「優!帰るで!!次や、次」
「えっ」
「ヨッシャー、やった事が無いもん選べばええねんな」
優の姿を見て学んだ大輔が次に選んだのは
「弓道部や!ワイ飛び道具は卑怯な気ーして、使こーたこと無いからな」
「オッシャー、ど真ん中3連発やで!!」
と、とりあえず射って見てと言われたのに、何故か上手に的に当てれてしまってテンションが上がる大輔
「あっ、おしい」
「そこは、もう少しこう」
そしてここでも、的に当てれなかった優を手取足取り教える姿が
「あっ、しもた。次や次!!」
「ここは・・・。よしっ、次行くでぇ」
馬術部の前に来たが、何故か見学をせずに帰ろうとする大輔
「あっ、香さん。こんにちは」
「三木君たちは、見学しに来たの?」
「いや、たまたま。たまたま、通りかかっただけで、失礼しま」
逃げるように走り去る大輔。
「あかん、あそこはあかんで」
「なんで?」
「おま、寮の先輩なんておってみーや、たぶんあれやで、馬の世話や掃除全部押し付けられてまうで」
「そんな事は無いと思うけど」
「いや、ワイの感は当たるんや、間違いない」
と、大輔は言っていたが、馬は近くの馬房から業者が連れて来るし、乗馬する場所の後始末もその人達がしてくれるので、本当に乗るだけのクラブだった。そもそも、ここは、お嬢様学校なのでスポーツは基本遊びなのであった。
「こうなったら、あそこや柔道や!!」
と、やって来た建物には、剣道、柔道、合気道が入っていた。
「ん、なんや一番手前は剣道かいな。まぁ、こっからでもええか」
と、入って蛾素振りだけですぐに飽き
「ヨッシャー、東海地方で名をはせたワイの・・・」
と、ここも筋トレや受け身だけだった
「せや、あないなゴリラの巣は、ワイが目指すとこやない」
組み手で寝技に持ち込もうとか企んでいたのだろうが、相手もそれを予想してたようだ。ゴリラと捨て台詞を言っていたが実際に・・・おっと
「最後はここやな。こんにちはーっと」
最後、合気道部に
「では、最初に小手返しと言う技を見ていただきたいと思います」
そう言って先輩が実演をし
「おお」✖数人
と、良く見る相手を軽々と倒す様子に見学者は声を上げた
「それでは、この技を経験していただきます。それぞれ先輩とペアになって下さい」
「はいな、はいな」
満面の笑みで女子部員の前に立つ大輔
「本日は先生が居ませんので、1つ1つゆっくりとした動作で、やって頂きます。痴漢への対処方などは、後日先生がいらっしゃる時にしていただく予定です」
と、聞いて少しテンションの下がる大輔
「では、最初に小手返しを経験していただきましょう。先に言っておきますが、絶対に抵抗しないで下さい。痛い時は無理に逆らわないように動いて下さいね」
との部長?の話の後に、個々に手の掴み方や姿勢等々を習った。
「では、実際に皆さん、先輩方に技をかけて見て下さい。お互いに怪我の無いように、注意してください」
「えっ」✖数人
見学に来ていた1年生は、あまりに簡単に倒せたので驚いていた。と、同時に何名かはサービスで大袈裟にしてくれただけと思った
「では、今度は反対に皆さんが投げられて見て下さい。痛くても絶対に無理に抵抗はしないで下さい」
との声で、今度は投げられる側になり。思ってる以上にアッサリと倒されるので、これまた見学者達は驚いていた
「なんやこれ!!」
柔道など力の勝負をして来ていた大輔は、女生徒にいとも簡単に倒され驚いていた
「先輩さん、ワイここに入りますわぁ」
不思議な体験をしたからか、女生徒と触れ合えたからなのか大輔は入部を決意した
「じゃ、俺は他を見に行って来る」
「おう、ワイはここに決めたわ」
「さてと、何処行こ?」
グランドでは陸上部が走り、体育館ではバスケ部やバレー部などがそれぞれ活動をしていたが、運動部が嫌で帰宅部に入りたい優がそのような場所に行くはずも無く。さっさと運動着を脱ぎ制服へと着替えた。
「とりあえず」
と、向かった先は文化部の部室棟だった。
「英語、仏語、キリスト教研究、独語・・・勉強は授業だけで十分だよな。文芸部、おっこことか緩そう」
ブツブツ言いながら廊下を歩く優
「失礼します」
「なんだ見学者か?」
「はい」
「君は文章は書けるのかい?」
「いえ、全く」
「まさか、本を読むだけの楽な部活だと思って来たのかね!!」
「えっ」
「うちは夏と冬に文集を出し、同人イベントにも参加をしている真面目な部なんだよ!!君のような者が来る場所じゃない。帰った帰った」
「はぁ」
何かの大会では無く同人イベントなところがあれだが、ガチ系の部活のようで帰宅部に入りたい優は追い出されて、ある意味助かったと安堵した
「あとは、これと言ったの無いなぁ。別の場所は、音楽室と講堂で吹奏楽部と合唱部が?興味無いなぁ、ピアノも興味無いし・・・あっ、ここいいかも」
「こんにちはー、まだ、やっ」
「やあやあ、入部希望の人かな、さあさあ、こちらへこちらへ」
「さあさあ、これをどうぞ」
優が戸を開けると同時に、二人の女子生徒が駆け寄って来て、席へと案内しクッキーと紅茶が出され。さらに、席の両側に女生徒が座り、逃がさないぞと言った感じでロックオンされてしまっていた
「頂きます」
獲物の狙う目が左右に迫る中で、クッキーを食べる優
「あっ、美味しい」
クッキーはお店で売られていても、おかしく無いほどの味だった
「そうでしょうそうでしょう」
「うんうん」
女生徒達は勝ち誇ったように言っていた
「じゃ、さっそくこれにクラスと名前を」
片方の生徒がいきなり入部届とボールペンを差し出して来た
「えっ、あのここって」
「話は後からで、まずはここに」
「サインしないと返してあげないからねぇえええ」
強引にサインを迫る女生徒
「コラッ、先輩達。見学の人怖がってるじゃないですか!!」
そこへ別室から出て来た女生徒がやって来た。
「こんにちは、まだ、見学間に合いますか?」
そこへもう1人見学者の女子生徒がやって来た
「はい、大丈夫ですよ」
2年の部員が先輩2人の頭を鷲掴みにしながら言った
「あのやっぱり、わたしは・・・」
「あっ、とりあえずクッキーだけでも食べて行きませんか?私が作った物なので、美味しく無かったらごめんなさい」
2年の部員がそう言うと、いつの間にか3年の2人が見学者の女子生徒を確保し、優の隣へと座らせていた
「あなたも見学に?」
「う、うん。クッキーは美味しいんだけど」
「ほんとだ。おいしい」
「だろ、だろー。なんと今、入ればクッキー食べ放題!さらになんと部活動は毎週1回授業である時だけだ!!これほど楽な部活他には無いぞぉ」
3年の眼鏡をかけてる方の子がドヤッ顔で言った
「まっ、うちらはほぼ毎日勝手に放課後お菓子作って食べてるんだけどな」
「先輩たちぃ、作ってるのは私だけですけどね。先輩たちは何時も食べてるだけじゃないですか」
「いや、それは、(河内(かわうち))恵美(めぐみ)のクッキーが美味しいからで、ワシらが作るとなぁ(松川)春子(はるこ)」
もう一人の3年の松川に助けを求める
「そう、うちらが作ると全て真っ黒い炭の塊になってしまうからな。(苗場)登美枝(とみえ)」
「材料を無駄にするのは良く無いから、練習するのは我慢してだな」
「うちらは味見係をしてる訳だ」
開き直ってる二人
「えっと、こんな感じの緩い部活だし、先輩も言ってたように放課後は強制じゃないから」
「あの私お菓子作った事無いんですが、作り方教えて貰えますか?」
見学者の女性は少し切実そうに言った
「私で良ければ喜んで」
「じゃ、私入ります。家政科1年8組の玉野 幸(さち)です」
「おい、聞いたか?8組とか言ってるぞ」
「ああ、確かに聞いた。チクショーうちらは万年10組、それも仲良く29番30番」
「あぁ、気にしないで下さい。先輩達留年してないのが不思議な成績の人達なんで」
「あっ、私そんなに頭は良く無いですよ?今年から魔法科が出来て家政科8組までしかありませんし、流石に29番や30番じゃないけど」
ギリギリ合格組なようだ。それでも相当頭は良いはずだが
「なんだと、春子隊員今のを聞いたか」
「登美枝隊長、聞いたであります」
「なにかが可笑しいとワシは思ってたんだよ」
「うちも何か違和感が」
「あっ、男性の人だ。魔法科の人ですよね。わー初めて見たぁ」
先輩達の子芝居をスルーし河内は優に話かけていた
「そう言えば私も初めてです」
玉野も続いた。入学式、春キャンプ、今日なので、実質2日目。しかも、校舎が別で男子生徒は6人だけなので、ツチノコとは言わないがレアキャラだったかも知れない。
「どうりで見た事が無い服だと思った。それってここの制服?」
「はい」
「へぇ、男の子はこんなのなんだぁ」
ジロジロと服を見られて恥ずかしくなる優
「そだ。君はどうする?」
「えっと、帰宅部でも良いのなら」
「うんうん、これで5人だぁ。やったー正式な部になるぞ」
「登美枝、これで今年も部費が貰えるぞ」
泣いて喜ぶ二人
「ごめんね。前の3年生が卒業で抜けてたから、同好会になりそうだったの。同好会だと他の部に所属もしないとダメだから」
河内は申し訳なさそうに説明をした
「じゃ、ちょうど良かったですね」
玉野は何となく最後の1人になれたのが嬉しかったようだ
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