有能な新人冒険者を追放しても追放しても加入してくる件~異世界で初心者育成系追放パーティーのリーダーやってます~
葛城葵
追放
―――ピアノの音色が遠くから聞こえてくる。
決して上手くはなく拙く、今にも消えてしまいそうな音色が空へと消えていく。
僕はそんな音色に吸い込まれるように歩いていく。
ピアノの音源へと到着した僕は美しい銀髪の美少女に名前を尋ねる。
「君の名前は……?」
「私? 私は――――――――」
「アレク! 朝だぞ! 今日は流砂のダンジョンへ行く日だろ!」
パーティーメンバーであるラルコスのドアを叩く音で目が覚める。
またこの夢だ。
儚く拙いピアノの音に銀髪の美少女。
名前を聞こうとするといつも邪魔が入る。
「一体誰なんだ?」
「おいアレク! 聞いてんのか!」
「あーもわかったって」
「なんだよ。起きてるんなら返事ぐらいしろよ」
もう少し考えごとをしたかったが、うるさいラルコスのために俺は自分の部屋の扉を開き、階段を駆け降りて1階へと向かった。
――――――――――――――――――――――――
「はぁ!」
ラルコスの鋭い剣捌きでオークが一撃で葬り去られる。
「ちょっとラルコス、私にも出番残しておきなさいよ!」
「ラルコスさんあんまり心配になる立ち回りをしないでください!」
残りのパーティーメンバーであるリルとアカネがラルコスの立ち回りに文句を言っている。
俺達のパーティー「
剣士のラルコス、剣士のリル、僧侶のアカネ、そして
「アレク! 行ったぞ!」
「おう!」
ダンジョンの中でぼーっとしている暇はない。
俺はラルコスの言葉に呼応するようにスキルを使用する。
「スラッシュ!」
俺の方へと走ってきたオークを一刀両断……できるわけもなく、俺はラルコスの名前を叫ぶ。
「ラルコス! あとは頼んだ!」
「ま、か、せ、ろ!」
そんな掛け声とともにラルコスはオークを再び一刀両断した。
――――――――――――――――――――――――
「「「「かんぱーい!」」」」
流砂のダンジョンを無事に攻略できた俺達「
ダンジョン攻略の後の飲み会は冒険者にとって必要なコミュニケーションの一つだ。
「にしてもアレクお前もうちょっとどうにかならねえのか?」
「どうにかってなんだよ」
「いやその
「仕方ないだろ。器用貧乏なんだこれは」
「にしたってさー」
「あーもーいいじゃない! アレクはアレクで頑張ってるんだし。パーティーはアレクありきで回ってる。それでいいじゃない?」
「そうですよ!」
「まあそうだけどなぁ」
いつもの定例的なやり取りを俺達は行う。
俺のスキルのせいで迷惑をかけているのは事実なので別にそこに文句は何もないのだが。
「そういえばアレク。後で俺の部屋に来てくれ。話がある」
「あぁ。珍しいな」
「ちょっとな」
俺はこの時のラルコスの発言にもっと気をつけておくべきだった。
今になって後悔をしてももう遅いが。
―――――――――――――――――――――――
コンコン。
飲み会の終わった俺はラスコスの部屋の扉をノックする。
「空いているからいつでも入ってくれ」
「あぁ」
扉越しに放たれるラルコスの少し重たい空気を俺は違和感を覚えながらも扉を開く。
「……かけてくれ」
「ラルコスどうしたんだ?」
「すまない。アレク、お前を
「……は?」
一刻、俺の時が止まる。
ラルコスはなんて言った?
追放……?
「じょ、冗談だよな?」
「いいや、これはパーティーメンバーの相違だ。全員が納得している」
「なんでだ! 今日だってみんなは!」
「みんなはなんだ? みんなお前のゴミスキルのために我慢して動きを制限されていた。お前は自分のことしか見えていないのか?」
「……っ」
ラルコスの意見はもっともだ。
俺がパーティーの動きを鈍くしていた。
そんなのはとっくの昔にわかっていたはずだ。
「でも……それでも受け入れてくれたと思ったから俺は」
「そう思ってたのはお前だけだよ。アレク」
リルだってアカネだってそんなことは一度も言ってくれなかった。
「追放だ。パーティーで買ったものはくれてやる。明日からは俺達の前に顔を出すなよ」
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は泣き崩れる。
もうこいつらと冒険はできない。
そんな悲しさで。
——————
五億年ぶりのaoiです。(改名して葛城葵になってます)
お仕事を始めてから小説を書く余裕がなかったのですが、少し余裕が出てきたのでリハビリします。
書いてない間にも過去作を読んでくださってる方もいたのでなんとか完結させたいですね…。
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