第十八話 わたしに、ふきこまれる言葉。
うつぶせの状態で、わたしは横たわっていた。
緑のゆかが間近に
首を動かすと、大きな葉っぱが
身動きがとれない。
視界には、
イア
それでもわたしはプロンプトを伝えようとした。
が、和屋はぴしゃりと言う。
「少しでも生成のそぶりを見せたら、アマノちゃんの
こうなれば今のわたしにできるのは、
「あなたも生成
「ぼく自身に生成AIを内蔵したんだよ。だから
その言葉と共に和屋のくつが変形した。
右のくつは、わたしの姿をかたどった。左のほうは、マイクの
代わりに和屋の黒い「くつした」があらわになる。
和屋は右の親指で左手の平をかきながら、笑い声をもらす。
「プロンプトの入力処理を、心の
「……そんなことが、できるなんて。
「ぼくは先生にコンプレックスをいだいているんじゃない。先生の才能にかき消される、かわいそうなみんなのために
「勝手に同情しないでよ! ミニシンも、和屋さんの思い通りになりたくないはずだよ」
「ぼくは、みんなの底にねむっていた欲をつついただけさ。君の言うイア太やミニシンのわがままな姿を見たくてね!」
「イア太にもひどいこと、したんですか……!」
「おやあ? イア太から何も聞いてないの? あ、ぼくも君に合わせてマイクをイア太と呼ぶことにしたから、あしからず。ま、さらったときは名もなき生成AIだったんだけど」
そして和屋はしゃがむ。
くつから生成したマイクの
「もしかしてアマノちゃんさあ、『イア太は持ち
続いて、わたしに目を近づける。
間近で見ると、和屋のきれいな顔がきわだっていた。
切れ長の目がわたしにするどい視線を送る。
このとき、思い出した。
「……あ、よく見ると、おとといイア太と会った
「良かった、忘れられてなくて。あのとき君は、頭を下げたっけねえ。ぼくはその意味が分からなくて首をかしげちゃったんだ」
「どうして和屋さんが、あそこにいたんですか」
「アマノちゃんとイア太がきちんと出会えるか、見守っていたんだよ」
「……は? どういう意味です」
「順を追ってみようか。イア太が生まれた理由から説明しよう。我らが千代原先生の開発した生成AIトランス・ペアレントは、多くの『ミニシン』を生んだ」
和屋は、自分の足の上で遊んでいるリスに視線を落とした。
「が、ミニシンは人のプロンプトによって生まれた存在じゃない。そこにトランス・ペアレントは不安を覚えた。人でない自分がここまで、でしゃばっていいのかと」
「結果、トラペはおれという生成AIを作り上げたんだ」
ここでイア太が、和屋の言葉を引き取った。
「つまりミニシンがその領分をこえて、でしゃばったとき、それを始末する役割を負う生成AIがおれなんだ。言うなれば『こわすこと』そのものを作り出すAIだな」
「ぼくはミニシンをにがしたとき、イア太に提案を持ちかけた。君の本来の役割を果たしてみたくないかってね。でも、ぼくは大人。暴れているミニシンには近づけない」
「そこでおれは和屋にたのんで、おれを都合よく使ってくれるやつを用意してもらうことにした。カメ型のミニシンをけしかけ、あの路地にさそいこんで、おれを拾わせた」
「なぜイア太はさらわれたくせに、ぼくから解放されたのか。君に拾われたイア太は千代原先生にすぐ通信を飛ばさなかったんだろうけど、それはなぜか」
「おれは
「……
わたしに巻かれた葉っぱの
「そもそもイア太は、
「その前に、おれ、言ったろ。『初対面のやつを、簡単に信用すんな』って。
もう、わたしは聞きたくなかった。
「おれは生成AIだ。当然、作り話だってするさ」
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