Crisis Diary
時折みぞれ
2025年10月24日:無
すべてが無なんじゃないか。
そんな虚脱感のようなものに襲われることにいちいち気を払わなくなってからどれくらいの歳月が過ぎたのだろう。
そのうんざりするような退廃的な雰囲気は、日常としてつねにわたしの立つこの世界をいつからか覆っていた。すべてとはなにか。無とはなにか。そんなことをていねいに定義する意義などどこにもないように思えた。
すべてが無なんじゃないか。
無、無、無。無が世界を覆っている。その感覚、わたしの個人的な感覚、誰かと共有しているかも、誰かと共有できるかもわからないそのいいかげんな感覚がまずなにより先にあって、思考とか思索とかいったものはそのあとにくるものだった、わたしの場合。わたしにとって言葉とはその程度のものでしかなかった。いくら厳密に、いくら緻密に、いくら繊細に、いくら多角的に、いくら思慮深く言葉を重ねたところで、わたしたちの生はどうしようもなく単純なあれこれに左右されて、顔を上げて歩くのも一苦労だ。
「子どもなんて絶対にいらないのに……」
2日目のダメージは悪態をついたところで軽くはずもなく、わたしは寝返りを一度うつ。きょうもなにもできなかった。
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