序章(永久の始まり)- 第4話 覚悟と代償
ズキズキと痛む手の指を押さえ、血を流す私とは反対に、宙に浮かぶ本──リベラリーは、笑いながら満足そうに契約の内容を一方的に話し始めた。
「オレとオマエは契約した。いいか。一回しか説明しないからよく聞け」
「オレには、とある魔法使いの物語が記されている。オマエにはこの魔法使いの物語を追体験してもらう」
「物語を追体験することで、あのバケモノへの対抗手段である魔法が使えるようになる」
「ただし、追体験を一つ終わらせるごとに、オマエは一つ代償を負う。それと引き換えに、追体験で得た魔法がオマエの身に刻まれる」
……は?今なんて?代償?
「あぁ、代償だ。オマエは代償を支払うことで、魔法が使えるようになるのさ」
リベラリーは平然と答える。
「だ、代償ってどんなの……?」
私が恐る恐る尋ねると、リベラリーは少し嬉しそうに答えた。
「オマエの体の一部が使い物にならなくなるのさ!目が見えなくなるかも知れないし、内臓の機能が無くなるかも知れないな」
楽しそうに告げるリベラリーに恐怖を抱いた私は、か細い声で拒否した。
「や……やだ。聞いてない……魔法が……アイツを倒せるって……代償なんて聞いてない!」
「おっと。クーリングオフは受け付けてねぇぜ。あ、そうだ。オレと契約した時の代償がまだだったな」
リベラリーが思い出したかのように、私に契約の代償を迫って来た。
「なんで……契約の代償ってなんでッ!お願いしますッ!自由なんて望まない……からッ。許してくださいッ。いい子にするから……許して……」
私は泣き叫びながら懇願する。
そんな私を見て、リベラリーはニヤけた面で、
「契約の代償は……オマエのその泣き顔だ」
そう言うと、リベラリーは楽しそうにゲラゲラ笑った。
「は?」
私はコイツの悪ふざけに顔を引き攣らせる。リベラリーはひとしきり笑った後、
「お代はオマエの……プフッ……その泣き顔でいい……ブハッ!ぜ。泣き虫らしいイイ泣き声だったぜ」
リベラリーは思い出し笑いをしながら私をバカにする。
……なんだコイツは?私をバカに?まるで自分が一番偉いかの様に?コイツもアイツみたいに、私が絶望するところを楽しんでいるのか?私は自由になりたいだけなのに?コイツまで踏み躙ろうとしているのか……?
……何かが込み上げてくる。沸々とした、まるで泥水のような感情。楽しいと絶望しか知らなかった私に、初めて**「怒り」**という感情が押し寄せてくる。
次の瞬間、私は薄ら笑いを浮かべるソイツに飛びかかっていた。
私はリベラリーに飛びつき、本を裏側にして広げるように抑え付ける。
「お、おい!オレに触れるんじゃねぇ!指紋が付くだろ放しやがれ!」
リベラリーは驚きと怒りの声で解放しろと罵声を浴びせる。
「黙れッ!お前もアイツと同じだ!私を玩具にして遊ぶクズだ!みんなお前らに弄ばれて死んだ。自由になりたかった……だけなのに……それなのにお前らは……!私達を……なぜ自由にしてくれないのッ!」
私は怒りと涙の混じった声で罵声を浴びせる。
リベラリーは少し大人しくなった後、
「だったらつべこべ言わねーでサッサと追体験に行け……そうすれば自由が手に入る……」
少し不貞腐れた様な声でリツに告げた。
「言われなくてもそうするよ……みんなの分まで強くなって、お前たちに復讐してやる!」
私は涙で濡れた顔を服の袖で拭い、覚悟を決めたように告げる。
「絶対に自由になってやる」
落ち着いた私とリベラリーは互いに向き直り、追体験の説明の続きを聞く。
「……いいか。これから早速追体験に行ってもらう」
「追体験する魔法使いの名は「リズ」……周りからはそう呼ばれている。オマエにはこの「リズ」として追体験に向かってもらう」
「そして追体験で魔法を得ることが、オマエを自由にする唯一の方法だ」
「さっきも言ったが、魔法を得るにはオマエの体の一部を代償に払わないといけない。代償は追体験から帰ってくるまで、何処を取られるかはわからない」
「持ち帰った魔法はコッチ(現実)ではまだ使えない。最後まで追体験する(全ての物語を読み終える)ことで初めてコッチでも使える様になる。だが追体験中は魔法は使い放題だ」
「……これで説明は終わりだ。追体験へ行く覚悟は出来たか?」
代償に恐怖し、また泣きそうになったが、私は涙を堪え、覚悟を決めたように、「……追体験に連れてって」とリベラリーに告げた。
「良し。じゃあ早速最初の追体験だ」
そう言うと、リベラリーから栞とインクが吹き出し、私の意識が遠のく。
意識が遠のく中、リベラリーが最後に言った。
「契約した時に一つ魔法を刻んでおいた。最初はその魔法を使って乗り切りやがれ」
……こうして私は、最初の追体験へと向かう。
序章:完
第1章へ続く……
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