第23話 大討伐のお弁当作りと当日の朝

 とうとう明日はデイカー達が大討伐へ向かう日だ。

 

 今日の定休日には、明日の料理の仕込みやシフォンケーキを焼くことにする。


 シフォンケーキは人気があって、よく売れるので普段から型をフル回転で使っている。そのため、シフォンケーキは五つまで増やして作っていた。


 今使っている五つの型があれば、コロンの大討伐の主食として、四日分のシフォンケーキを作っても一つ余る。


 一つ余るのと、コロンだけでなく他の三人も食べたいだろうと思って、シフォンケーキを五つ焼くことにした。


 ただ、電動泡立て器がないので、かなり大変だ。


 今はそれまで頑張って手動でシフォンケーキのためのメレンゲを作る。


 電動泡立て器のことも大討伐が終わったらデイカーに相談しようと思っている。


 そういえば、蔵のことも相談しようと思っていた。


「エルティアお嬢様、お掃除と洗濯が終わったので、私に何か手伝えることはありますか?」


 シサが気を利かせて聞いてきてくれた。


 今日はこれから、店で使う食材の納品の馬車が来るのでそちらの対応をお願いする。


「わかりました。納品の方が見えたら、ちゃんと頼んだものが届いているか確認して、いつもの場所に片付けておきますね。任せてください!」


「お願いね」


 シサに納品のリストを渡して、私は引き続きシフォンケーキ作りをしていった。


 シフォンケーキを作りながらメニューを考える。


 大討伐の弁当といっても、保存のための魔道具があるので、普通の料理を作って魔道具に入れて持っていってもらう。


 だから、大討伐に持っていってもらうものは、シフォンケーキに始まり、甘酒、カレー、ライス、味噌スープ、煮込みハンバーグなどのリクエストと合わせて、揚げ物や煮込み料理など全部で十五品目にした。


 なるべく食べ応えのあるメニューを選んだつもりだけど、一日三回で四日分のメニューを考えるのはなかなか大変だった。


 どんな料理なのかわかるように料理名もメモして、デイカーが取りに来た時に一緒に渡すつもりだ。


 揚げ物は明日の朝に揚げられるように、今日中に衣付けなどの下準備をして、煮込み料理は明日の朝に火を入れるだけにしておこう。


 その他の料理もできるところは今日中にやっておく。そうそう、甘酒も今日のうちに作っておこう。


 他のことを考えながらでも、作り慣れているシフォンケーキはあっという間に焼くだけになり、オーブンに入れて焼き始めていた。


 オーブンで焼いている間にやりながら考えていた工程をどんどん進めていく。


 最初は甘酒を魔道具で作り、煮込み料理と味噌スープの野菜を切っていく。


 その後、揚げ物の仕込みをして、今日できることは全て終わらせていった。


 そうこうしているうちにシフォンケーキが焼けていた。


「エルティアお嬢様、シフォンケーキが焼けたみたいなので、オーブンから出して逆さまにしておきますね」


 納品が終わったシサができることを手伝ってくれるのでありがたい。


「ありがとう」


 私達は途中で食事をとったり、休憩も挟みながらも仕込みを進めていき、明日の朝にはあまり時間かからずに全ての料理が出来上がるところまでいった。






 そして、大討伐当日の朝になった。


 ここ最近少し曇っていることが多かったが、デイカー達の大討伐を応援してくれているかのように、今日はとても天気が良い。


 私は普段より早起きをして昨日仕込んだ料理を仕上げ、今日の仕込みもしていた。


 シサも私と同じように早く起きて、家のことをやってくれていた。


 今は外へ花の水やりに行ってくれている。


「オーナー! デイカーが弁当を取りに来ましたよ〜」


 外へ花の水やりに行っていたシサが私に知らせに戻ってきた。


「おはよう、弁当を取りに来た」


 シサに連れられて、デイカーは店の入り口まできていた。


 デイカーは背中にリュックを背負っていた。


「おはよう。料理はできているわ。リュックの中に魔道具があるのかしら?」


「ああ、そうだ」


「じゃあ、下ろして出してもらえる? そこに作った料理を詰めるわね」


「ああ。この魔道具は起動させなくてはいけないので、詰めるところに立ちあってもいいだろうか?」


「ええ、お願いするわ」


 店の入り口からデイカーに中に入ってもらい、料理の置いてあるテーブルまで案内した。


「すごい量を作ってくれたのだな。こんなにあればみんな喜ぶだろう。ありがとう」


 一つのテーブルでは載せきれず、テーブルを三つ使うほどの料理を作っていた。


「いえいえ、体力も気力も使うだろうから食べ応えのあるもので、楽しみにしてもらえるようなものを作ってみたわ。もちろん、リクエストの料理も忘れずに作ってあるわ」


「気遣ってくれてありがとう。じゃあ魔道具に詰めていこう。容器が何個あれば足りるのか?」


「十五個ね」


「……多いと思っていたが、十五種類も作ってくれていたのか……。大変だっただろう。本当にありがとう」


 デイカーは感激しているようだった。


「私、料理でデイカー達の大討伐を応援したかったから。頑張ってきてね」


 私の気持ちが伝わって嬉しかった。

 

 デイカーはリュックを下ろし、空いているテーブルに置いた。


 リュックを開けて、中から透明な容器をどんどん取り出していた。


 最終的にデイカーは料理を入れるのに必要な数の容器を持っていた。


「すごいわね、そのリュックにそんな沢山容器が入るのね」


「どれくらい必要か分からなかったから、沢山持ってきた」


「このリュックも魔道具なんじゃないですか? 私、弟が持っているのをみたことがありますよ」


「シサの言うとおり、このリュックも魔道具なんだ。リュックに魔力がある間は無限に入る」


「そうなのね。じゃあ、この容器も魔道具なの?」


「ああ、これが保存の魔道具だ。まず、これに作ってくれた料理を詰めてくれないか?」


「はい」


 私はシサと十五個全ての容器に料理を詰めていった。


 ちょっと一品一品の量が多いかと思ったが、入れていく途中で一杯になってくると大きさが変わって全て入れることができた。


「デイカー、詰め終わったわ」


「ありがとう。じゃあ魔道具のスイッチを入れよう」


 デイカーがリュックの中からリモコンのようなものを取り出した。


「それはなに?」


「これを操作してスイッチを入れる。赤いスイッチが保温、青いスイッチが保冷だが、全部保温のスイッチを入れればいいか?」


「ええ、それでいいと思うけど、甘酒は冷やしても美味しく飲めるわよ」


「いや、あれは温かい方が飲みやすいだろう。保温にしておく」


 私は冷たいのも美味しいと思うけど、好みもあるわね。


 デイカーがリモコンを操作して赤いスイッチを押すと透明だった容器が赤くなった。


 私が作ってもらった魔道具といい、大きさが変化したり、色も変わってわかりやすいのは便利だし、使いやすくてありがたい。


 デイカーが考えて、そういう魔道具にしているのだろうか?


「魔道具って便利ね」


「ああ、便利にするためのものだからな」


「あと、これは料理名を書いた紙よ。どれがどの料理か説明するわね」


 私は一つ一つ料理の説明をしていった。


「ありがとう。知らない料理もあって、食べるのが楽しみだ」


 日替わりランチでも出したことがない料理も作っていた。


 その後、デイカーは再びリュックの中に料理の入った容器を入れた。


「エル、ありがとう。代金はいくらだろうか?」


「5万トピー頂いてもいいかしら?」


「……ああ。材料代もあるだろうが、それでいいのか?」


「ええ。いいわ」


 以前作ってもらった魔道具のこともあるし、常連価格だ。


「ありがとう。じゃあ、これからみんなと合流して大討伐へ行ってくる」


 デイカーが代金を支払った。


「どこで合流するの?」


「ナイト街だ。そこの港からラデュレラ王国行きの船に乗っていく」


「そうなのね。遠いのかしら?」


 私はラデュレラ王国には行ったことがないので、どれくらいかかるのかわからない。


 そして地理があまり得意ではない。


「いや、そんなに遠くないから、こうやって取りにこれる。また帰ったら、ここにくるよ」


「はい。行ってらっしゃい、無事に帰ってくるのをここで待ってるわね」


「いってらっしゃい。気をつけて」


 私とシサに見送られ、デイカーは店を後にした。


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